「…ヴィータ、そろそろ出てきたらどうや?」
「うるさい、今は一人にしてくれ…」
バンたちがエリスに今回のことを報告してる間、はやてはヴィータのいる個室の前にいた。
ルパンレッド及びリュウソウレッドの正体がはやての弟分の連だとわかって、ヴィータはショックのあまりに個室に引きこもってしまった。
それ故、はやての呼び掛けに返事はしても出てこない。
「はやて」
「…!
バンくん、もうええの?」
声がして振り返ると、バンがやってきた。
どこか複雑そうな顔をしていた。
「あぁ、今さっき終わった。
…ヴィータはこの中か?」
「うん、せやねん」
「そうか…。
…おいヴィータ、ちょっと良いか?」
「一人にしてくれって言ってるだろ、放っておいて…」
「雨宮連について話がある」
「…!」
「それでさっきはやてと会ってな。
出来たらお前とも話がしたいんだ。
せめて中に入れてくれないか?」
「…」
それから少し黙ったいたが、しばらくしてからドアが開いてヴィータが出てきた。
先ほどまで泣いていたのか、目元には涙の後があって、気分が落ち込んでる様子だった。
「…さっさと入れよ。
なのはたちにこんな顔、見られるわけには行かないからな」
「あぁ、そうさせてもらうぜ」
「うん…」
バンははやてと一緒にヴィータの個室に入り、バンはエリスと話したこと、それから死神様からの警告を話した。
「そうなんや…」
「…」
「だから、俺的には納得はいかないけど、必要があったらあいつらと共闘できるように努力するつもりだ」
「なぁバンくん」
「あ?」
「君は、私を責めへんの?
私が、その、連くんと仲が良いこととか…」
「何でそんなこと責めなきゃいけないんだよ?
俺はそんなことでお前を責めねぇよ。
そもそも、お前とあいつは、昔からの仲なんだろ?
だったら尚更、そんな気になりゃしねぇ」
「バンくん…」
「けど」
「…え?」
「お前にとってあいつは弟分だ。
だから、あいつの味方をしたくなるのもわかる。
けど、これからは俺個人の質問だ。
…お前、さっきからヴィータと反応が違うけど、以前から知ってたのか、あいつが怪盗だったことを」
「…うん」
「は?
おい、ちょっと待てよ!
どういうことなんだよはやて?」
「…知ったのは、前に地球に帰った時やった。
あの時にあの子は大きくなってて嬉しくて、そんな時にギャングラーに襲われて」
「…」
「そりゃ私もびっくりしたで?
あの子、私が知ってる限りやと争いとかと無縁やったのに、ルパンレンジャーに変身してたなんて…」
「…」
「最初は若干警戒してたけど、次に会ったのはIS学園と管理局が襲われた時や。
その時はもうダメかと思ったんやけど、助けてくれて、その時にわかったんや…」
「わかった…?」
「私な、小さい頃からあの子のこと見てきたけど、とっても家族思いな子で、優しい子やった。
だからわかるねん。
今のあの子は戦う力はあっても、何も変わってない、私の知ってる連くんやったんや!」
「…」
「やから、バンくんたちが来るまでに、私らのこと守ってくれたんや。
やから私は、あの子らを君らに突き出すなんて、ようでけへんかったんや…!」
はやては心情を絞り出すように顔を下に向けて、涙を流す。
「はやて…」
「…馬鹿野郎、だったらなんであたしに教えてくれなかったんだ!
あたしだけじゃない、シグナムたちにもだ!
そうしたら、他にも何かできたはずなのに!」
ヴィータは涙を流しながらはやての胸倉を掴む。
まるで、何で自分たちを信じてくれなかったのかと聞くように。
「そんなん言える訳ないやん。
何年一緒に居ると思ってるの?
こんなん言ったら、きっと実行してしまうから、言えるわけないやんか。
優しいヴィータやなのはたちに、そんなことを…」
「くそっ…!」
はやての言葉を聞いてヴィータは掴んだ手を突き放すように放して、その場に項垂れる。
「…なぁはやて、お前があいつらを俺たちに突き出さないのはわかった。
そもそも俺たちはさっき言ったように捕まえられないしな。
それで俺たちが未だに敵対してても、お前は俺たちと、あいつの味方でいるのか?」
バンははやての言葉を聞いて、納得はいかないところはありながらも、それでも雨宮連も含めて、自分たちの味方でいてくれるのかと聞いた。
バンたちも機動六課と協力関係を結んでからそれなりに付き合いがある。
だから、情報も含めて、はやての人となりを知ってるつもりだ。
「私は、少なくとも君たちの味方で居たい。
けど、同時に連くんの味方でありたい。
バンくんとヴィータは、どないしたいん?
こんな私の味方で居てくれるん?」
「…俺はこれからもなのはたちと一緒に戦うさ、もちろんはやても含めてな。
それに、必要だったらあいつらとも共闘できるように努力するさ。
けど、目の前にいる転生者がどんな理由があっても人を襲うなら、俺は戦う。
その中で、更正するか封印するか、それを見極めるさ」
「…あたしははやてたちと一緒に、これからも戦うよ。
でも、今度連に会ったら、あいつの真意を知りたい!」
「そう、なんや…。
二人とも、ありがとう…!」
「じゃ、俺は伝えるだけ伝えたから、失礼するぜ?
ヴィータも、いつまでも個室に籠ってないで、出て来いよ?」
「言われなくたってそうするっての!
…はやて、あたしは大丈夫だから、もう出ても良いぞ?
これから顔を洗うからさ」
「わかった。
それと、本当に、ありがとうな、ヴィータ…」
「…良いから、早く行けよ」
「じゃあ、また後でな」
はやては部屋を後にし、ヴィータも身支度を終えてから皆と合流した。
そしてはやては自分の真意をなのはたちに伝えて、再び指揮を執ることになった。
それで、エリスたちは、何かあったらすぐに協力するとのことで承諾し、バンたちを見送る。
こうしてバンやはやてを乗せたバトルオリオンシップは、ミッドチルダへと帰っていくのであった。