「はぁはぁ…!」
「ふむ、思っていたよりも伸び代があるみたいだな。
よし、みんなしばらく休憩しておけ。
しかし、各自先の組み手で何が足りないのかを確認するように」
「はい…」
ドギー・クルーガーとの修行を取り付けて翌日、ドギー・クルーガーは宣言通り機動六課の隊舎にやってきて、当分の間バンたちキュウレンジャーの修行相手になった。
ちなみにはやてや右京たちには事前に連絡してある。
それでバンたちは先ほどまでドギー・クルーガーは組み手で戦っていたが、多数で戦ったにも関わらずドギー・クルーガーを相手に苦戦したのだった。
動きを読まれることはそうだが、明らかに個人個人にとって不利なところを突いてくる、しかも分かりやすく指摘するように。
そうしてバンたちはしばらくの間休憩を取ることになった。
なのはやフェイト、それからヴィータたちヴォルケンリッターや右京たちパトレンジャー本部がスポーツドリンクやタオルを差し出して介抱している。
そんな中、バンは一人ベンチに座って先ほどの組み手から何が足りなかったのか考えていた。
すると、頭上からぽふっと、柔らかいタオルを掛けられるのであった。
「お疲れさまやな、バンくん」
「はやてか」
「隣、えぇかな?」
はやてはバンの隣に腰掛けて座り、手に持っていたスポーツドリンクを手渡した。
「…昨日聞いたで?
ミッドチルダに来てた連くんを捕まえようとしてたらしいな。
何か、連くんところのブラックが危険だからって」
「あぁ…、そうだな」
「その、リュウソウジャーのブラックを何でバンくんらは嫌なん?」
「それはだな…」
バンはリュウソウブラックことジンガのことを説明した。
「…かつて魔戒騎士やったのが、人間に子供を殺されたから悪に堕ちた、ね」
「あぁ、それでホラーっていう怪物になって多くの人間を殺してきた。
それも自分の欲望のままにな」
「でも、連くんの仲間なんやから、私は大丈夫かなって思うけど…。
それに、その理屈やと、私もヴィータたちもフェイトも、元々は犯罪者やったんやで?」
「闇の書事件とプレシア・テスタロッサ事件か…。
でも、お前らの場合はほとんど自分の意思じゃなかったんだろ?」
「確かにそうやけど…。
それやったら、何でエルトリアに着いた時、イリスのこと毛嫌いせぇへんかったん?
あの子、ウイルス入れられてたからやけど、自分の意思で地球攻めてきたやん」
「けど、あいつはもう罰くらって償いもした。
他にもチンクたちもそうだ。
だけどジンガは、あいつは初めて会った時に何のためらいもなくホラーだったときの力を使ってた」
そう言って一呼吸置いて、タオルで汗を拭いスポーツドリンクをイッキ飲みする。
「それに、俺はあいつに言われたが、ジンガの過去しか知らないからあいつが今現在何してるのかなんて知らない。
けど、あいつが仲間だって言っても、俺は到底信じられない。
あいつが仲間って言ってるだけで、その立場を利用してるかもしれねぇし」
「バンくん…」
はやては少し寂しそうにバンを見つめる。
「…悪いな、こればっかりはどうしようもねぇんだよ。
けど、次会った時には雨宮連から聞くなり本人に直接聞くなりするさ」
そう言ってバンはベンチから立ち上がって修行に戻った。
「おらぁ!!」
「むん!」
今度は個人での組手だった。
それ故、今はバンとドギー・クルーガーが二人で戦っていた。
「どうした、まだまだ攻めが甘いぞ!」
「くっ、うらぁ!!」
バンはキューソードでドギー・クルーガーを切り裂こうとするが当たらない。
仮に当たったとしても、彼のディーソードベガの刃で受け止められて、そこからバンの力を利用してカウンターを仕掛けてくる。
このままでは攻撃を当てられたないと思ったバンは一つの緑色のキュータマを取り出してセットする。
このキュータマはバンたちが前に集めた4つのキュータマの一つだった。
『フタゴキュータマ!
セイザアタック!』
バンはフタゴキュータマで二人に分裂して左右から攻撃を仕掛ける。
片方はキューソードを、片方はクレシューズを構えて。
「おらぁ!!」
「いっけぇ!!」
「むっ、はっ!」
ドギー・クルーガーは二人のバンを前にディーソードベガを構えて突っ込んだ。
バンのクレシューズによる攻撃を次々と避けていき、その避けた先で待ち構えていたように、もう一人のバンがキューソードに力を込めて勢いよく振り下ろした。
しかしドギー・クルーガーはそれ以上の力でディーソードベガを振るい、バンを吹っ飛ばして地面に叩き付けた。
「うおっ!?
がっ!」
「どうした、まだ手の内を出してないだろ?」
「舐めてんじゃねぇ!!」
『カニキュータマ!
セイザアタック!!』
バンはもう一つ持っていたキュータマ、カニキュータマを発動し、セイザブラスターから巨大なカニのハサミを出現させて突撃する。
「そう来たか。
だが、甘いっ!!」
「っ!」
ドギー・クルーガーはディーソードベガを片手で構え、突っ込んできた。
そしてそのままディーソードベガをハサミに突っ込んで弾き、空いてる手でバンを殴り飛ばした。
「がはっ!」
「生憎、俺は刀を封じられたところで負ける気はしないがな」
「くっ…」
ドギー・クルーガーは倒れたバンを起き上がらせ、地面に突き刺さったディーソードベガを抜いて調子を見る。
「ふむ、さっきも言った通り伸び代はあるが、やはりまだアイテムに頼りきりなところがあるな」
「悪かったな」
「そう言えば先ほど、俺も遠くで聞かせてもらったが、雨宮連のところの仲間に、お前は不満を感じてるみたいだな」
「…正確には、俺も含むパトレンジャー組だけどな。
特にジンガは、かなり危険なんだよ。
これははやてにも言ったことだ」
「ふむ、雨宮連ならば、ジンガを仲間にしたところで、問題はないかもしれんが、お前はどうしても信じられないのか?」
「当たり前だろ。
確かに俺はあいつの過去しか知らない。
けど、だからこそあいつを信じるなんて無理だ。
証拠もないのに信じろと言われても無理なようにな」
「それならば、お前が先ほど言っていたように、次会った時に聞いてみれば良いんじゃないか?」
「それも一つの考えだが、雨宮連が素直に俺の話を聞くと思うか?
それに、俺はあいつから次に過去のことで何か言ってきたら容赦しないって言われてるし、あいつが素直に応じるための交渉材料もなければ、あいつらの懐に潜り込むための潜入捜査の当てがない」
「そこはお前の判断に任せるしかないな。
仮に俺が聞きに行ったところで結果は同じだろうしな」
「…」
そこでバンは何をどうすればいいのかを考えようとする。
「バン、お前の気持ちもわからないわけではないが、まずは目の前のことをこなしたらどうだ?」
「わぁーてるよ。
あんたも、次はかことの組手があるんだろ?」
「あぁ、そうだな。
お前も、さっきのことを思い出しながら、お前の手持ちで何ができるかを考えろ。
さてかこ、次はお前だ!!」
「は、はい!」
ドギー・クルーガーはディーソードベガをライフルにしてかこを呼び出して組手を始めた。
巻き添えに会わないように隅によりながら先ほどの組手のことや、雨宮連のことを考えていた。
「…雨宮連、お前は一体、何を考えてるんだ?」
自分の中に残る、ジンガに対する疑問も抱いて。