読者の皆さん、約4ヶ月も投稿が遅れてしまい、誠に申し訳ありませんでした。
雨宮連との決闘及び共闘を終えてから翌日、バンは一人修行を休んで、ジュースを飲んでいた。
「はぁ…」
昨日のはやての言葉が深く突き刺さる。
『君は思い込みが激しすぎるし人の気持ちがわかってないところがある!』
『君は連くんの気持ち考えたことあるん!?
いきなり仲間のことをそんな風に言われたあの子のことを!』
「ちっ…!」
バンは舌打ちし、思わず乱暴にジュース缶をゴミ箱に投げつけた。
「…俺は、どうしたら良いんだ!」
確かに自分のやったことは間違っていたと思う。
ジンガのことは調べていたから、どれだけ危険なのかよく知ってる。
しかし、それはただの先入観に過ぎない。
頭で分かっていても、やっぱり雨宮連のところにジンガがいることも、ましてや仲間としていることに不信感しかわかなかった。
けど、逆のことを考えると、それはスバルたちもそうだ。
そもそもキュウレンジャーのメンバーのほとんどは、生い立ちも経歴もツッコミどころがありすぎるようなものだ。
もし、雨宮連たちリュウソウジャーがスバルたちをそのことで責め、危害を加えたら?
恐らく、スバルたちを守るために必死で闘うだろうが、それは雨宮連たちも同じこと。
つまりはその逆のことをバンはしたのだ。
そう考えただけでも最悪な気分になって、心が折れそうだった。
そんなときだった。
機動六課の方向から、何か大きな音が聞こえた。
「っ、あそこは…!
無事でいてくれ!」
バンは焦りながら機動六課の隊舎へと走っていった。
「っ!?
こ、こいつは…!」
隊舎の前で、小さなクレーターの中心に誰かがいて、それはかつて倒したはずのものだった。
「お前は仮面ライダーエボル!?
まさかエボルトか!?」
「…ほぉ、まだいたのか」
「何でお前がっ、あの時倒したはずじゃ!」
「さぁ、何でだろうな?」
「惚けやがって…!」
『シシキュータマ!
セイザチェンジ!』
「スターチェンジ!」
バンはシシレッドに変身して、セイザブラスターで牽制しながら接近し、キューソードを構える。
それに対してエボルはスチームブレードを構えて、弾を弾きながら迎え撃つ。
「お前は何のためにここに来た!
なんでもお前が復活してやがる!」
「それを聞いてお前はどうする気だ?」
「内容次第じゃ、お前を倒す!」
「お前たちパトレンジャーだけじゃ倒すことができなかったのにか?
そもそも倒せたのは雨宮連がいたからだろ?」
「…っ、うるせえ!」
バンは怒号と共に後ろに飛び、クレシューズを構える。
「神器、解放!!」
凄まじい速度でクレシューズを振り回すバン。
しかしエボルはそれよりも早い動きで避けては弾いて攻撃を凌ぐ。
「どうした?
動きが止まって見えるぞ?」
「っ、だったら!」
『ペガサスキュータマ!
セイザアタック!』
バンはペガサスシシレッドに変身し、クレシューズと併用して連続攻撃を繰り出す。
「おらぁ!!」
「ふっ」
『おい落ち着きやバン!
何やお前今日落ち着きないし余裕もないみたいやで!?』
「今は戦いだ集中しろぉ!!」
ぺガさんの制止を振り切り、バンは攻撃を続けるが、ダメージを与えれていない。
「くそっ、何で…!」
「この程度か?」
「なっ!?」
エボルが瞬間移動してバンの目の前に出てきた。
「ふん!!」
「ごはぁっ!!」
エボルのエネルギーの籠った拳をまともに何発も連続でくらい、バンは吹き飛ばされてしまい、その衝撃で乱暴に地面に叩き付けられ変身解除してしまう。
「ごふっ!」
「もう終わってしまったのか…」
バンに近づいたエボルはバンの首を持ち上げて、もう片方の手でブラックホールを発生させようとする。
その時だった。
「バン隊長!」
「隊長…!?
あれは、エボル!?
どうしてここに!」
かこたちがようやく駆けつけてきて、特に前に戦ったかことアストルフォがエボルの姿を見て警戒していた。
「ほぉ、そう言えばまだいたんだな」
「…ぐっ、この、放せ!」
「そうだ、ここで一つ、取引をしないか?」
「はぁ…!?」
首を掴まれた状態のバンに問いかけるエボルは人差し指を立てる。
「俺はこの通り強いわけだ、お前らじゃ到底かなわないほどにな。
どうだ、ここはひとつ俺と手を組まないか?」
「ぐっ、ほざけ!
誰がお前なんかと…!」
「もちろんただでとは言わないさ。
あそこにいる小娘たちと引き換えにだ」
そう言ってエボルはスバルとギンガに向けて指を指す。
「あの二人の小娘、確かサイボーグだろ?
何らかのハッキングで利用されて暴走する可能性がある。
あんなのよりも、俺を戦力に入れた方が合理的だし、あの雨宮連をも倒すのも造作もないことだが?」
「っ!?」
「ふざけんじゃねぇ!!!」
スバルとギンガが驚いてる一方で、バンは苦しみながら叫ぶ。
「あいつらは仲間なんだ!
お前なんかに渡さねぇ!!」
「ほぉ、暴走するかもしれないのにか?」
「あいつらは絶対にそんなことはしねぇ!
もしそうなったら、俺が、俺たちが止めて見せる!!」
「はぁ、そういうところだぞバン」
「はっ…、がっ!?」
急にエボルの声が変わったことに驚くが、手を離したことで地面に落ちる。
「お前は仲間を大切にしていて、今俺が言ったようなことをはね除けた。
けどお前は俺がしようとしたことを、雨宮連にしてるんだぞ?」
「っ、どういうことだ!」
「思い当たることあるだろ?
お前がジンガを捕まえようとしたことだ。
確かにあいつは危険な存在だが、雨宮連の仲間だ」
「だからなんだって言うんだ!
あいつを放っておけば、世界は…」
「だからそういうところだって言ってるんだ!!」
「!?」
エボル(?)の言葉に思わず黙り込むバン。
それを見てかエボル(?)は少しため息を漏らし、エボルドライバーに手を伸ばす。
「これ以上この姿でいると警戒が続きそうだな」
そう言ってエボル(?)はボトルを抜くと、そこにいたのは一人の男だった。
その男に、バンたちは思わず驚いてしまう。
「あれ、まさかこの人って!」
「そんな、けどどうして!」
「あんたは、ラッキーの親父のアスラン王…!」
「俺のことを知ってるのか?」
「けど、どうして!
あんたは確か、サザンクロスでブラックホールと共に…!」
「あぁ、そのことか」
そう言ってアスラン王はエボルドライバーとエボルトリガーに触れながら見つめる。
「俺も最初は死んだと思ったらあの中でこれらを手に持っててな。
それで変身してから、ブラックホールを通して様々なものを見てきた、もちろん雨宮連たちリュウソウジャーのこともな。
…まさか、ラッキーたち以外にもキュウレンジャーのやつがいたとはな」
「…」
驚きのまま何も言えないバンを改めて見据えるアスラン王だが、どこか厳しめな眼差しだった。
「お前はどうして、雨宮連の言うことを信じてやれない?」
「っ」
「あいつは、ジンガのことを仲間だって言っていた。
だがお前はそれを聞いてなお捕まえようとした」
「…」
「お前は、雨宮連を信じられないように、仲間のことを本当の意味で信じてやれてないんじゃないのか?」
「…っ、何を言って!」
「現にお前は、さっきのペガサスの声も聞かずに攻撃を続けてこの有り様だ」
「それは…」
何も言えないバンをよそに、アスラン王は背中を向けてその場から去ろうとする。
「まずは落ち着いて、なぜ信じてやれないのかを考えろ。
そうすれば、きっと道は見えてくる筈だ」
「…っ、待て!」
バンは手を伸ばすが、アスラン王はブラックホールの中に入って姿を消した。
「くそっ!」
寄りどころのない手を怒りと悔しさを込めて地面に叩き付ける。
「俺は、俺は本当にどうしたら良いんだ…!」
バンはかこたちが駆け寄ってくるまで、その場に座り込むことしかできなかった。