という訳で新作です。楽しまれれば幸いです。
AGEの方も更新はしますのでお待ちください。それではどうぞ。
終わりの始まり
それは、唐突な出来事だった。何時もの通りに起きて、何時ものように支度をして、何時ものように姉さんと学校に登校をして。
何も変わらない、強いて言えば既視感のある転校生がやって来たと言うイベントがあった位の日だった。
―― でも、その日から全てが変わってしまった。
艶のある金髪に血のような、でも何処か蛇を思わせる眼。そして、張り付けたような贋作くさい笑顔。
その転校生の回りには常に大勢の女子が蠢いていた。始めは、姉さん達も転校生を胡散臭く見て、遠ざかっていた。
だが、気が付いた時には姉さんも姉さんの友達も、皆皆。転校生の回りに居た。
最初は、俺が転校生に劣っていたからだと思った。だから、俺は努力して転校生と同等のレベルに足りないまでも次席に着く位にはなった。でも、姉さん達は俺に見向きもしなかった。今まで、一緒に居たことが嘘のように。両親も、転校生が家に来るようになってからは俺と言う存在が無かった者として扱う様になり初めていた。さらに周囲の人間もどんどんと俺を蔑み、嘲笑っていた。
そして、ある日の事だった。その日の天気ははじめじめとした雨だった。
唐突に家から叩き出された俺は受け身を取る間も無く、ベシャリと濡れたアスファルトへと叩きつけられた。
『どうして!?何でこんな事をするの!?』
『お前が要らないからだ』
唐突な暴力に、反駁した俺に親はそう冷たく返答した。簡潔にしかし、心に突き刺さる言葉に硬直した俺に構うこと無く、親は続ける。
『何をするにしても彼――神藤君の足を引っ張って、しかもその邪魔をしている。そんな人間は要らない』
『……嘘だよね』
『嘘なものか。お前の代わりに神藤君は家に住んで貰う。母さんも友希那も同意した』
『……そんな』
『本当よ。私には…いいえ、私達には貴方は必要ない。必要なのは神藤君だけ』
『分かったならとっとと去ね!出ていけ、出来損ない!お前の様な人間は必要ない!!』
気が付いた時には、俺は走っていた。滅茶苦茶に、何処を目的とするでもなく、眼から止めどなく落ちる涙を拭う事もせずに。今度こそ信頼出来ていた、家族に裏切られ棄てられ、もう心はボロボロだった。そして、そんな俺を目に映る全ての人間が嘲笑っている。そんな風に全てが見えていた。
そうして泣きながら走っていたが、何かに足を取られて転けてしまった。痛みに顔をしかめつつ、顔を上げた俺の目に飛び込んで来たのは、ニヤついた笑みを張り付けた神藤の姿だった。しかも、その傍らには姉さんとその幼馴染の姿があった。
『よぉ、良い様だな雑種。その表情、実に嘲笑えてくるよ』
『……神、藤』
『どうだい?今の気分は、我は晴れ晴れとして良い気分だよ。二人もそう思うよな』
『そうね、全くだわ』
『うんうん、ようやく目障りな人間が居なくなって精々するよ!』
二人の口から発せられる言葉に俺は、より深い絶望へと誘われる様な気分だった。
にこやかに、神藤へと返答する二人。そんな彼女らに何故か、俺は手を伸ばした。
『あー、もう!気持ち悪いなぁ!』
『ギィッ!!』
しかし、その手は届くことなく幼馴染によって踏み潰される。叩きつけられた手は嫌な音を立てた。
『全く…退きなさい。ソレを退かすには…こうすれば良いのよ!』
次いで、姉さんの声と共に俺の左眼付近に激痛が走った。どうやら大きな石か何かをぶつけられたらしかった。たまらず、のたうち回ってしまう。
左の視界が真っ赤に染まる。あまりの激痛に意識を失おうとしている俺に、神藤は何故か耳へと口を寄せ、囁いた。
『今までご苦労さん。踏み台転生者クン』
そして、俺は全てを失い――
『奇特なヤツも居たものだ、血塗れで寝るとは』
新たな運命と出会った。