通りすがりの探偵さん   作:silverArk.

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この世界線は、バンドリと仮面ライダーWのクロスオーバーです。Wは本編終了後、バンドリは一期終了ぐらいとお考えください。また、破壊者さんはたまたま通りすがっただけです


通りすがりの

扉をくぐり、疲れた様子の少年が部屋へと入る。年の頃は十六、七。が、その何かを潜り抜けたかの様な雰囲気はより実年齢よりも上の印象を与える。ざっくりと短く切り揃えられた、白髪混じりの黒髪。しかし、何故か左眼を覆い隠す様に左の前髪だけは長かったが。

そんな雰囲気を持つ少年は部屋に入るなり、驚きの声を上げた。それは―

 

「翔太郎君!そっちに行ったよ!」

 

「ちょ、こっちかよ!ちょこまかとしやがって!おい、フィリップ!手伝ってくれよ!」

 

「ちょっと待ってくれ翔太郎。僕は今調べものをしている」

 

「…何をやってんすか」

ドタバタと黒光りするヤツと戦う大人たち。その過程で滅茶苦茶になった家具や物。とても酷い光景がそこには広がっていた。

結局、ヤツはフィリップさんに向かって羽ばたいた所をファングに潰されて決着となった。

 

 

 

 

片付けやらで 一段落して、漸くソファーに腰かける。仕事で戦闘をこなしてきた後には少々辛いものがある。

所長は一連の騒ぎの後、照井さんとデートとか言って出掛けてしまった。

ぐったりとソファーに身を預ける俺に翔太郎さんが声をかけた。

 

「お疲れさん、(あらた)。で、どうだった?」

 

「ええ、予想通りコックローチでした。まぁ、あの程度のスピードなら問題有りませんでしたが」

 

「まぁ、そうだろうね。今の新ならあの程度は相手にもならない。僕も師匠として鼻が高いよ」

 

「…主に戦闘訓練したのは俺だってのに。まぁ、いいか。それより新。次の依頼――いや、やる事に協力してくれるか?」

 

軽口を言い合っていた俺達だったが、急に翔太郎さんが真面目な口調へと変化した。その様子からただならぬ何かを感じた俺は姿勢を正し、二人へと向き直る。

 

「実はな、ミュージアムに資金提供をしていた奴の正体が割れたんだ」

 

「ッ!本当ですか!」

「ああ。今まで得た証拠からフィリップが検索を掛けた結果、一人の人物が浮かび上がったのさ」

 

ミュージアム。それはこの風都にガイアメモリと言う物をばらまき、多くの被害を出した秘密結社だ。翔太郎さんにフィリップさん、所長や照井さんと共に戦ってきた敵である。

そして、そのミュージアムに資金提供をしてガイアメモリを量産。それを広く流通させた人物が居た。その人物の為に多くの被害があった事は言うまでもない。

その人物の正体が割れたのだ。奮い立たない訳が無かった。今度こそ、ガイアメモリによる犯罪を撃滅する為に。

 

「そいつの名は、神藤臨也(しんどういざや)。過去に新から聞かされた転生者だ」

 

「保有する能力は…王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)とギルガメッガュの容姿。それにニコポにナデポ?さらに他諸々。僕にはよく分からないね」

 

グッ、と手に力が籠る。忌々しい名を聞かされたからだ。しかし、その怒りは感情をコントロールする術を学んでいた為に直ぐに押さえられる。

フィリップさんは、神藤の転生特典に対して興味をそそられたのかしきりに本の頁を捲っていた。

 

「んで、そいつを取っ捕まえる為に明日、その邸宅に乗り込む。音沢市を覚えている…よな」

 

「…ええ、一度仕事で行っていますし、それに……」

 

「すまん、失言だった。そいつの家はそこにある。ま、市街から離れた場所だから人目には付かないだろうさ。んで、本題はここからだ。その神藤を捕まえるのに協力―」

 

「やります」

 

「早いな!良いのか?」

 

「ええ。恐らく、これは俺が決着を着けなければならない事で、そしてガイアメモリによる犯罪を絶つために絶対にしなければならない事です。ですから、協力する条件として一つ良いですか?」

 

どうやら翔太郎さんは俺の過去を気にしていてくれているらしい。しかし、これはある意味俺の問題でもあり、そして使命でもある。過去にケリを付けて、前に進むために。そして、人々の安寧を取り戻す為に。だからこそ、俺はこう条件を出した。

 

「恐らく、神藤の屋敷にはミュージアムの残党が居る筈です。翔太郎さん達にはそいつらの相手をして貰いたいのです」

 

「おい、それってまさか…!」

 

「神藤の相手は俺がします。しなけりゃならないんです。俺が前に進むために」

 

そう言って俺はソファーから立ち上がった。知らず知らずの内に感情が昂っていたらしかった。

 

「…分かった。なら神藤の相手は新に任せる」

 

「有難うございます。詳細な連絡は後程、照井さんと相談した後で下さい」

そう言って俺は鳴海探偵事務所を後にする。自らの過去と決別する日に備える為に。

 

 

 

 

新が出ていった後の鳴海探偵事務所には沈痛げな空気が漂っていた。それは当然とも言える。新がここに来るまでの事を知ってしまった彼らには、その気持ちが理解出来てしまっていたからであった。

 

「翔太郎、新は大丈夫だろうか。感情のコントロールが出来ていたからこそ、落ち着いている様に見えたけど」

 

「大丈夫さ、万が一暴走したら俺たちで止めればいいさ。それに……」

 

「それに、なんだい?」

 

「門矢新はそんなにやわな人間じゃない。なんたって俺の弟子だぜ?」

 

「それを言うなら僕達の、だろ?」

 

「そうだな。悪い、フィリップ」

 

そうして、決戦の刻は近付いていた。

 

 

 

 

 

音沢市郊外、豪勢な邸宅。と言うよりも、最早城と呼べる場所に俺達は居た。

翔太郎さん達の会議の結果、神藤の相手を俺が。居るであろう、ドーパント達は翔太郎さんとフィリップさん、それに照井さんが相手をする事に決まった。

が、現場には俺と翔太郎さんそれに照井さんが居るのみである。所長とフィリップさんは後方待機だ。万が一EXTREMEを使用する可能性を考慮しての事だった。

「そろそろ突入する。準備は良いな」

 

照井さんの言葉に無言で頷く俺と、翔太郎さん。戦闘の用意が出来ている為に、それぞれの手にはドライバーが握られている。

そして、重厚な門を開こうと照井さんが扉に手を掛けた。

その瞬間、扉が爆ぜた。内部から爆破したかのように吹き飛ぶ扉。しかし、ギリギリでの回避に成功。三人共に無傷だ。

煙が晴れ、門の向こうが視認出来る様になる。そして、その光景に俺は息を飲んだ。

広大な敷地。そこには整列するようにして多数のマスカレイド・ドーパントがひしめき合う。さらに、そのマスカレイド・ドーパントの内にはマグマやティーレックス。アイスエイジにマンモスなどのドーパントの姿が存在したからである。

あまりの戦力に硬直する俺。だが、両隣から聞こえてきた音にその硬直は解かれる。

 

《CYCLONE》

 

《JOKER》

 

《ACCEL》

 

「「変身!!」」

 

「変っ……身っ!」

 

ガイアメモリの音声、そして掛け声と共にメモリがドライバーのスロットへと差し込まれる。

そして、翔太郎さんはバックルをW型に展開。照井さんはドライバーに備えられたハンドルを捻った。

 

《CYCLONE・JOKER》

 

《ACCEL》

 

瞬間、その場には二人の仮面ライダーが誕生していた。

一人のライダーは体の中心から右側は鮮やかな緑、左側は紫混じりの黒。だがその目は左右で異なること無く赤く輝き、右肩から背後に伸びた純白のマフラーが風に舞う。そして額から伸びる触角は名を示すような銀色にきらめくWを象る。

そして、もう一人のライダーを形容するなら赤だった。機械的なアーマーに、排熱機関を模した胸部。Wが人間的印象を与えるのならば、このライダーは機械的な印象を持つ。目は複眼状の蒼いモノアイが輝き、名を示すようにその触角はメタリックにきらめくAを象っていた。

 

「何をしている門矢、道は俺達が開く。さっさと行け」

 

「任せたぜ!新!」「ここは僕達が抑える。君は存分に戦って来るといい」

 

「はい!」

 

二人の仮面ライダーからの激励。これに奮い立たない訳が無い。

俺は右手に握っていたドライバーを腰へと当てる。すると、ドライバーから伸びたベルトが自動的に腰へと巻き付いた。そして、左の側部にデッキケースが出現する。

その中から一枚カードを引き抜くと、義父に教わったように、居並ぶドーパントどもに見せつけるように翳す。そして、深呼吸を一つすると鋭く声を発した。

 

「変身ッ!」

 

《KAMEN RIDE―――DECADE》

 

ドライバーから発せられた音声。それと共に幾つもの影が俺に重なる。そして、それが形を成した。

赤銅色のアーマーを纏い、顔には複数の細い板が刺さり、バーコードのような形となっている。そして、それに遮られながらも特徴的な緑ツインアイが輝いている。額にはツインアイと同じく、緑の光を放つ結晶がある。左胸には黒と白のラインが交差し、英語の「X」、または十字架を思わせる刻印があった。

その仮面ライダーの名はディケイド。世界を渡る者であり世界の破壊者である。

変身を完了した俺は即座にドーパント達のひしめくより奥、神藤が居るであろう場所へと駆ける。

それを阻止するべく、ドーパント達が雪崩れを打って接近する。が、それをWとアクセルが阻んだ。

 

《JOKER MAXIMUMDRIVE》

 

「「ジョーカーエクストリーム!!」」

《ACCEL MAXIMUMDRIVE》

 

「ハァッ!!」

 

響く音声。それと同時に、二人のライダーキックがドーパントに炸裂した。

Wは風の力で舞い上がると、身体を正中で分離。そのまま二段キックを放つ。そして、アクセルは熱によって加速。前方へと跳躍すると、その勢いを存分に生かし後ろ回し蹴りを放った。

紛う事なき必殺の一撃。Wのライダーキックはマグマ・ドーパントへと。アクセルのライダーキックはアイスエイジ・ドーパントへと吸い込まれるように命中した。

瞬間、爆発が起きる。そして、メモリブレイクされた二人の男が崩れ落ちた。同時に砕け散るガイアメモリ。

それを認め、隙が出来たドーパントどもを躱しながら走る。

が、ドーパントも素早い立ち直り俺へと接近してくる。それを視認した俺は、デッキケースからカードを引き抜き、ドライバーへと叩き付けた。

 

《ATTACK RIDE:BULLET》

 

ドライバーから流れる音声。それと共に、俺の右手に大きめのハンドガンが出現する。俺はそのハンドガンを素早く握ると、引き金を引いた。

狙いを正確に付けなくとも、牽制になればそれで良い。その考えとともに放ったビームは意図せずして命中した場合には、ドーパントに手痛い傷を負わせるか、メモリブレイクし。命中しなくともその足を止めさせた。

走りながらの連射。一発一発のインターバルが長けれど、その威力を目の当たりにしたドーパントどもは怯む。

が、それはマスカレイド・ドーパント達の場合。比較的力の強いドーパントは多少の被弾を物ともせず、接近を掛けてくる。

その内の一つ。ボム・ドーパントが仕掛けた爆発に、俺は勝機を見いだした。

神藤が居るであろう城内部までの距離は決して遠くはない。しかしながら、ドーパント達の攻撃を回避しながらの疾走、射撃。正直、ジリ貧の様相が見えかけていた。

が、そのタイミングでのボム・ドーパントの攻撃は幸運である。

俺の足元近くで起きた爆発。それにタイミングを合わせて俺は跳躍する。そして起こるのは飛翔と言う事象だ。

爆風によるブーストを経て文字通り飛んだ俺は、その勢いのまま扉を蹴破り、城内部への到達に成功したのであった。

 

 

 

 

 

 

着地姿勢から、立ち上がり辺りを見渡す。どうやらエントランスホールに着地したらしかった。

豪奢なシャンデリアに高級そうな絨毯や家具。精巧な彫刻に美しい絵画。中央にはこれまた豪華な装飾が施された階段が備わっている。

一流ホテル…いや、それ以上のもので埋め尽くされた場所である。

そんな場所に、現れた俺はなんと不釣り合いな事か。フッ、と自嘲の笑みが漏れてしまう。

が、次の瞬間に俺は警戒の態勢をとった。手にしたハンドガンの重さに、自分の居る場所が何処なのか思い出した為である。

コツリコツリとエントランスを進む。城の内部は人が居ないかの如く静まり返り、戦闘を行っている外とは真逆であり、不気味な印象を与える。

警戒しながら進む俺は 、一つの疑問を持った。エントランスからドーパント達が居る位置はさほど遠くは無い。しかし、ドーパント達は此処に来る気配が全く無いのだ。

その不気味さが俺に一層の警戒をさせる。

そして、その警戒は俺の命を救った。

ヒュン、と風を切る音が俺の耳朶を打つ。頭に響く警戒音。俺は本能のままに素早く後方にバク転をした。

瞬間、寸前まで俺が居た場所を黄金の剣が貫いた。

そして、耳障りな声が響いた。

 

「小賢しい雑種だね。(オレ)の、気配を察知するなんてさ」

バッ、と見上げて見れば 中央の階段。その天辺に一人の男が立っていた。

ギラギラと光る趣味の悪い金のスーツ。逆立てられた金の髪。狡猾そうに光る血の赤を思わせる眼。神藤がそこには居た。

瞬間、俺を激情が支配する。今すぐ、目の前の男を叩きのめしたい。そんな憎悪。だが、その怒りを押さえつけ、俺は声を発した。

 

「神藤臨也、お前をミュージアムへの違法な資金提供の罪で拘束する」

 

「…ハッ、笑わせね。この我を拘束する?冗談も大概にして欲しいな雑種。下劣な身分で我の城を荒らしただけでなく、拘束とはね。万死に値するぞ!雑種の分際でさぁ!!」

 

俺の宣告に、神藤は沸点を爆発させた。

自身の背後を波打たせ、十の宝具を出現させた。そして、神藤がゆっくりと掲げた手を振り下ろすと同時、それらは射出された。

直感で、ハンドガンでは対処出来ないと感じた俺は即座に、それを投げ捨てる。投げ捨てられたハンドガンはモザイク状にぼやけて消失する。さらに、右手にハンドガンを投げ捨てさせつつ、左手でデッキケースからカードを引き抜き、ドライバーへと叩き付ける。

 

《ATTACK RIDE:SWORD》

 

音声と共に、俺の手には無駄な装飾の一切ない直刀が現れた。

それをしかと握り、宝具の軌道を予測。回避し切れない宝具を迎撃する。

 

「―グゥッ!」

 

口から苦悶の声が漏れる。迎撃した宝具は僅かに二本。しかし、それはとんでもなく重いものだった。劣化とは言え相手はギルガメッシュの宝具。一本一本が必殺である。

俺が漏らした声に気がついたのだろう。神藤は喜色を浮かべて、王の財宝を掃射し始めた。

 

「あれあれあれれれ!?大口叩いといてその様かィ!笑わせないでよォ!」

 

「チィッ!」

掃射される宝具。その殆どは検討違いの場所を穿つ。しかし、俺へと確かに狙って放たれる物はある。それへの対処に俺は体力を削られていた。

適当に放たれる宝具は一撃でも貰えば倒れる事は必死。その為に迎撃をすれば神藤には近く事は出来ない。

まさにジリ貧の様相であった。ジリジリと身の内を焦がす焦燥感と憎悪。それらが俺の判断を強引なものとした。

強引にこの状況を打破すべく、俺はドライバーのバックルを開き、デッキケースからカードを引き抜く。そこに標されているのは赤き角を持った戦士の姿。そして、そのカードをドライバーに叩き付けるべく一瞬。俺は宝具から目を離した。離してしまった。結果、俺に訪れるのは流れ宝具の命中である。

 

「がァッ!」

 

ギリギリでその宝具に気付けた為、直刀を盾にする事が出来たが、その威力に吹き飛ばされボロボロの絨毯を転がってしまう。おまけに、変身まで強制解除されてしまった。

 

「…ぎッ。がハッ……」

 

「ふん。ゴミクズの癖に手間を取らせるとはね……。ん?なんだい雑種、その傷」

 

吹き飛ばされ、絨毯を転がった俺は仰向けに倒れていた。その為、普段は隠している左眼付近の容貌が現れていた。その髪の下にあったもの、それは左眼の上にある傷だった。しかも、ただの傷ではない。ぐしゃぐしゃに引き攣って醜く残った傷痕。眼こそ軽く濁った位で無事だが、その直ぐ上はボロボロであった。

 

「んー。何かお前見覚えが……。あっ、そうか!雑種、あの踏み台か!」

 

神藤の言葉に俺の中に燻る何かに火がついた。憎悪と言う燃料に足されたその火は轟々と燃え盛る。

俺は咄嗟に立ち上がろうと足を踏ん張る。だが、ダメージが身体を地に伏せさせた。

 

「……貴ッ様ァ!!!」

 

「なんだ、図星かよぉ。ちんけな力を手にして挑んできて負けるとか…やっぱり踏み台じゃあねぇか。笑えるねぇ!!」

 

「その口を今すぐ閉じろ!」

 

「閉じないよォ。あ、そう言えば雑種。此処に来たとき何か言ってたよね。ミュージアムへの資金がなんたらってさぁ」

 

這いつくばる俺に、神藤はねっとりとした口調で語り始めた。

 

「確か、ガイアメモリの研究だっけか。あれ、面白いよねぇ。人間がいとも簡単に別のナニカになっちまう。んで、そんな研究に資金提供した訳だけどさ―ただの暇潰しだよォ」

 

「………は?」

 

燻っていた火が一瞬で抑えられた。それと同時に俺の頭を支配したのは疑問だった。一体、コいツハナにヲいッてイルンだ。アンなニオおくノにヒトビとガシんデ、オおクのヒがイガデて。カなシみヲツクッて、にクしミヲウんダコとニ、きョウリょクシたのハヒまツぶシダと?

 

「結構、面白かったよ?あのもがく姿。いやー面白いかったァ」

 

「……お前は」

 

「んん?」

 

「お前はッ!何も感じなかったのかッ!ガイアメモリで死んでいった人々!大切な人を奪われ、苦悶の内で死んだ人達に何も思わないのかァ!!!」

 

俺の心境を吐露した言葉。脳裏に過る、昨日まで笑っていた人が苦しんで死んだ姿。今まで抱いて居た思いを吐き出した俺に、神藤は平坦な口調で返答した。

 

「……別に?他人がどうなろうと知った事じゃない。我はこの世界の王だよ?なら好き勝手にする事の何がいけないのさ?誰がどうなろうと知った事か。我がルールであり正義なんだよ。あ、でも我が気に入った奴は別な。あー、でも最近友希那とか冷たいんだよなぁ」

 

その他人を何とも思っていない言葉に、俺は振り切れた。怒りのままに、ドライバーを装着しディケイドのカードを取り出す。そして、目の前の敵を俺の為に殺すべく、変身しようとした瞬間―脳裏に義父の姿が過った。

 

『良いか。かつてこんな男が居た。そいつは運命に抗い、戦い続けた男だ。そいつが言うには「俺の体を動かすのは義務とか使命なんかじゃない。そこに居る人を守りたいと言う思い。そうだ、人を愛しているから俺は戦っているんだ。」そして「例えカードが1枚も無くても!お前を封印できるはずだ!俺に、ライダーの資格があるなら!戦えない、全ての人の為に!俺が戦う!!」とも言っていた。何故か分かるか』

俺はその言葉に首を振った。言っている事は理解出来る。しかし、それは所詮綺麗事。それを掲げる事に一体なんの意味があるのか分からなかったからである。

そんな俺に義父はニヒルに笑うとこう、答えた。

 

『俺達、仮面ライダーは希望なのさ。全ての無力な人間を守る為に戦う。その道中で守れない時もある。裏切られる事もある。しかし、たとえ孤独でも命ある限り俺達は戦うのさ。何かを得る為じゃあない。人々の形ある希望として俺達はある。それが…仮面ライダーだ』

 

それは一瞬の、刹那に脳裏に過ったものだった。しかし、その義父の姿は俺を冷静に戻すに足るものだった。

俺はゆっくりと身体を起こし、血反吐を吐きながら立ち上がった。

全身からは際限なく痛みが送られ、危険信号が点滅する。

―それがどうした。

戦力差は絶望的だと理性が叫ぶ。

―だから何だ。

諦めろと、心の弱い部分が懇願する。

―だからって……諦めて良い筈が無い!!

立ち上がった俺に、神藤は心底不思議な顔をする。俺はそんな奴に口を開いた。

 

「人は弱い」

 

「んー?」

 

「弱くて不完全だ。それでも、俺は人を信じる。どんな絶望があっても、どんなに裏切られようとも、俺は逃げない砕けない。誰かに認められなくても俺は戦う。この世界の仮面ライダーとして!」

 

「何を言ってる?遂に狂ったのかい?雑種」

 

「だからこそ――お前が世界の王で正義と言うなら、俺は悪になる。お前を倒して、人々の平和を守る!!」

 

それは宣言。この、新しく生まれ直した世界で。裏切られた世界で、仮面ライダーとして人々を守ると言う宣言だった。

神藤はその俺の言葉に苛立った様に口を開いた。

 

「…何なんだ、お前は」

 

その言葉に口元だけに笑みを浮かべると、デッキケースに手を置く。そして、デッキケースが一瞬発光したかと思うやいなや、カードを引き抜き神藤にそれを見せつけながら言葉を発した。

 

「通りすがりの仮面ライダーだ。別に覚えなくて良い。―変身ッ!」

 

《KAMEN RIDE―――DECADE》

 

ドライバーの音声と共に再び俺はディケイドと成る。だが、その姿は先程のモノとは少し違った。

異なる部分はツインアイと額の結晶。丸みを帯びていたツインアイは鋭角的になり、額の結晶は紅い光を放っていた。

その形体に名を付けるとすれば、ディケイド“激情態“。真のディケイドと呼べる姿であった。

その状態で、俺はデッキケースからカードを引き抜きドライバーへと叩き付ける。

 

《ATTACK RIDE:SWORD》

 

再び現れる直刀。しかし、その直刀は先程のものよりも鋭利に輝いている。

そして、俺は直刀を真っ直ぐに神藤へと突き付けると言葉を発した。

 

「…行くぞ」

「ッ!ほざけェ、雑種ゥッ!!」

 

王と破壊者。その戦いが真に始まった。

 

 

 

 

 

飛来する宝具。一つ一つが必殺の火力を内包した絶殺の一撃。

次々と降りそそぐその宝具。その軌道を見切り、斬り抜ける!

身体はボロボロ。されど、肉体を凌駕した精神は今まで以上の戦いを可能とし、進化したディケイドはそれを存分にサポートした。

命中の軌道にあった金色の槍。それを全霊の膂力を以て弾く。

上半身を狙った放たれた金色の剣は、上体を反らし潜り抜ける。

そうして、俺は疾走した。神藤も王の財宝に慣れてきたのか、放たれる宝具の精度が上がっている。しかし、今の俺を止めるには足りない。

三十メートルは有った距離。それは、既に縮められ、階段まで達する。

が、焦った様な表情を浮かべていた神藤は、ニヤリと嗤った。

 

「掛かったな、雑種め!《天の鎖》よ!」

瞬間、俺の足元が揺らぎ輝く鎖が射出された。咄嗟に身を翻し、回避を選択する。しかし、鎖は直刀を絡めとり動きを封じた。

それを確認した神藤は、王の財宝から二本の槍を出現、射出した。

赤と黄の二槍。一目で名のある宝具と分かる。何らかの能力を内包している事は明らかであった。

 

「これで死んじまえ!雑種ゥ!」

咆哮する神藤。だが、俺はこんな所で死ぬわけにはいかない。折角、戦う覚悟を決めたのにも関わらず、倒れて無駄にする事は出来ない。

刹那、俺は直刀を放棄。デッキケースからカードを引き抜くと、ドライバーへと叩き付ける。

 

「死んで堪るかよ!」

 

《 ATTACK RIDE:GIGANT》

 

現れるのは多目的巡航四連ミサイルランチャー。それを惜しみ無く全弾発射。飛来する宝具を迎撃する。

爆発、轟音。

発生した爆風に数メートル後退するが、ミサイルは宝具を迎撃する事に成功していた。

晴れる煙。再び視認した神藤は、顔を伏せ肩を震わせていた。

かと、思えばゆっくりとその面を上げる。その表情は憎々しげに染まっていた。

 

「……雑種の分際で、ゴミクズの分際で。我を虚仮にしやがって。……もういい、消えてよ」

 

神藤は、虚空に手を突っ込み、一つの武器を取り出した。王の財宝から取り出されたそれは、剣と言うには明らかに歪なその形だった。「剣」とは言ったが、その形状は独特と言う他ない。赤い光を放つ文様を備え、三つの円筒が連なるランスのようなものだった。

 

「目覚めろ、エア」

 

神藤の呟きと共に、エアと呼ばれた剣は赤い紋様を発光させた。

その光景に、本能的な危機を得た俺は即座にデッキケースから新しいカードを引き抜き、使用する。

 

《ATTACK RIDE:ILLUSION》

 

そして現れるのは、俺の分身である。その数、九つ。本体である俺を入れて総数は十となる。

同時に、神藤はゆっくりとエアを掲げながら文言を口にする。

 

「―“裁きの時だ。世界を裂くは我が乖離剣“」

 

文言と共にエアはその刀身を回転させ始める。

それと平行して、俺を中心として一列に並んだ分身。右端から四番目のディケイドがカードを引き抜き、ドライバーへと差し込む。

 

《ATTACK RIDE:――》

 

掲げられたエアが音を立てて回転する。既に臨界を迎えようとしているらしい。

勝利を確信したのか、神藤は三日月の如く口を裂いた笑いを作る。

 

「“受け――““」

 

《CLOCK UP》

 

そして、世界は静止した。いや、正確に述べるのならば俺が超加速した結果、全てが静止したかの如く感じているだけである。

静止した世界で、俺達だけは自由に動ける。故にこそ、行動を開始した。

動いたのは九つの分身。彼らは、同調しているが如く、揃って別々のクレストが描かれた金色のカードをドライバーへと差し込んだ。

 

《FINAL ATTACK RIDE:KU KU KU KUUGA》

 

《FINAL ATTACK RIDE:A A A AGITO》

 

《FINAL ATTACK RIDE:RY RY RY RYUKI》

 

《FINAL ATTACK RIDE:FA FA FA FAIZ》

 

《FINAL ATTACK RIDE:B B B BLADE》

 

《FINAL ATTACK RIDE:HI HI HI HIBIKI》

 

《FINAL ATTACK RIDE:KA KA KA KABUTO》

 

《FINAL ATTACK RIDE:DE DE DE DEN-O》

 

《FINAL ATTACK RIDE:KI KI KI KIVA》

 

一番右端の分身は、両腕を開いて腰を落とした構えを取り、足の裏からは炎が上がる。その姿はあたかも古代の赤き戦士が如し。

一番左端の分身は特徴的なポーズを取る。それと同時に足元にアギトの紋章が出現し、それが右足に収束された。その姿は古代の金の戦士を姿を彷彿とさせる。

右端から二番目の分身は特徴ある構えを取る。すると虚空から龍が出現。分身の背後で構える。その姿は、龍の戦士が如し。

左端から二番目の分身は、脱力。右足に重心を乗せ、待機状態に移行した。その姿は夢を守る赤の戦士を彷彿とする。

右端から三番目の分身は、腰を落としあたかも剣を下に構えているかの様にポーズを取る。その姿は運命に抗った切り札の戦士が如し。

左端から三番目の分身は、半身となりどっしりと構える。そして、その右足を紫炎が覆った。その姿は魔化魍と戦う鬼の戦士を彷彿とする。

右端から四番目の分身は、一本筋の通ったかの如く立ち尽くす。しかし、ドライバーから発生した稲妻が全身を駆け巡り、右腕へと収束する。その姿は天の道を行く戦士が如し。

左端から四番目の分身は、勢いを付けるかの如く身体を捻り、その全身はバチバチと放電する。それは時の運航を守る戦士を彷彿とする。

右端から五番の分身は、右脚を高く振り上げエネルギーを収束させる。その姿は運命を解き放つ吸血鬼の戦士が如し。

そして、最後。本体である、俺はゆっくりとデッキケースから金色のカードを引き抜く。そして、ドライバーへと差し込んだ。

 

《FINAL ATTACK RIDE:DE DE DE DECADE》

 

瞬間、十枚のホログラム状の金色のカードが俺の目の前に出現する。それを確認した瞬間、俺達は一瞬のタイムラグを生じさせつつ、飛び上がった。タイムラグを生じさせたのは、同士討ちを避ける為だ。

そうして、俺達は必殺技を放った。

 

《CLOCK OVER》

 

「“よ“――」

 

そしてライダーキックが炸裂する寸前、時の流れが元に戻り、中断されていた台詞の最後が紡がれる。しかし、最早エアを振り下ろす事は叶わない。真名の解放よりも先にFINAL ATTACK RIDEが神藤を穿つ!

― 炎を纏った飛び蹴り。

―莫大なエネルギーを内包した飛び蹴り。

― 龍の放つ炎と共に炸裂する飛び蹴り。

―円錐状の赤い光でポイントして放つ飛び蹴り。

―雷光を纏って鋭く放たれる飛び蹴り。

―紫炎を浸透させる飛び蹴り。

―限界まで研ぎ澄まされた飛び蹴り。

―回し蹴りを二度行い、放たれる飛び蹴り。

―とんぼ返りで体勢を整えて放たれる飛び蹴り。

分身が最後に放った飛び蹴りは神藤を吹き飛ばし、壁へと強かに叩き付ける。その衝撃で、神藤はエアを取り落とし、壁にはディケイドのクレストが浮かび上がった。

 

「―がアッ!」

叩き付けられた神藤からは苦悶の声が漏れる。

ライダーキックを放った分身は、その内包したエネルギーを使いきり消滅する。射線は空いていた。

斜め上に飛びあがった俺、連動する様にカードも神藤に向けて一直線に並ぶ。そして、人差し指だけを立てて額の前でクロスさせ、飛び蹴りの体勢へと移行。そのまま、カードに導かれるように標的にめがけ一直線に降下した。

 

「――セイ……ハァー!!」

 

一枚、一枚のカードの中を通り過ぎる為にエネルギーが俺へと流れ込むのが分かる。俺は十枚目のカードを潜り抜け神藤へと蹴りを叩き込んだ。 そして、飛び蹴りが命中した刹那。後ろに向かって全力で跳びすさり―

 

「―ガ、ガアァァァァァァ!!!??」

 

神藤へと叩き込まれた全てのエネルギーが爆発した。轟々と燃え盛る炎。

俺は神藤を拘束すべく、爆心地へと歩き始めた。恐らく死んではいない。転生者特有の救命措置が特典として盛り込まれているであろうからである。

果たして、神藤は死んではいなかった。なんと、血だるまになりながらも立ち上がって居たのである。

 

「…て、お前ぇ、踏み台のクセしやがって!我を、このオリ主様を!何だと思ってやがる!!」

 

その言葉と同時、神藤の背後の空間が波打ち、無数の宝具が出現した。最早なりふり構わず、被害も厭わずに俺を殺す心算だ。

だが、俺は殺される積もりなどこれっぽっちもない。生きて、戦う。その為に、デッキケースへと手をかけ…硬直した。

神藤の周囲を揺らめく炎。その中に明かな人影が存在していた。しかもその人影には見覚えがある。金色の鎧、金の髪に紅の瞳。

その人影が手を掲げるや否や、現れていた神藤の宝具は消え失せ、かわりに人影の背後にそれは現れた。

 

「我の財宝に手を付けた雑種め!その命を以てして贖うが良い!!」

 

「あ゛?てめェ、我に向かってどんな口を―ピギュ」

 

それは断末魔としてはあまりにも悲惨なものだった。悪態を付きながら振り向いた神藤は、ギルガメッシュの黄金の財宝により、あっさりとその姿を挽肉へと変えてしまった。

宝具の射線上に居た俺は、横へと回避行動を取りながら、削られて行く神藤の姿を目にした。

ズサリ、と着地した俺にギルガメッシュはその鋭い双眸をつと向けた。

 

「……フン」

 

仮面の下から見つめ返す俺に、ニヤリと笑うと鼻を鳴らし金色の粒子となって消えるギルガメッシュ。

彼が去ってから、数瞬。呆けていた俺は神藤だったものに一瞥をくれると身を翻した。そして、変身を解除すると痛む身体を引き摺って歩く。

そして、城の外に出るとそこにはドーパント達を倒し、疲れた様子の翔太郎さん達が居た。

翔太郎さん達も俺を視認したのであろう。俺にに向かって駆け寄ってくる。

俺も必死に脚を動かし、しかし疲労によってふらついてしまう。

そして、地に伏せる刹那。翔太郎さんが俺を支えてくれた。

 

「……翔太郎さん、すみません。神藤…捕まえられませんでした」

 

「大丈夫だ、フィリップの奴がバットショットで見てた。俺も確認した!良くやったぜ、新!」

 

「そうだよ新。アレは僕も驚いただった。しかし、ディケイドの力…ゾクゾクするね」

 

「何はともあれ、お疲れだ。門」

 

「皆さん…ありがとうございますッ…」

 

「さぁて、これで一件落着。帰ろうぜ、風都に」

 

 

こうして、俺の過去の因縁にはケリが着いた。……しかし、俺は知らなかった。これが始まりであり、これから俺を待ち受ける苦難を。

 

 

 




プロフィール

門矢 新

身長 179センチ 体重 63キロ
平々凡々な顔立ちをした少年。前世ではイジメが原因で自殺し、気が付けば転生していた。神にエンカウントした事はない。今世では、五歳で両親と死別。その後、両親の親友の家族に引き取られた。が、神藤の転生特典が影響して棄てられ、偶々通りすがった門矢士に拾われる。その後、左翔太郎達に弟子入りした(させられた)。
彼が継承したディケイドは、世界の破壊者ではなく。数々の世界を渡ったが故に、人々の希望である仮面ライダーとして認識された概念。その為、世界から排斥されることはない。まだ、原典のディケイドとは違い、コンプリートフォームは無く、FINAL ATTACK RIDEをKAMEN RIDE無しで使用できるなど、少々の違いがある。

神藤 臨也
神とエンカウントした転生者。取り敢えず使える特典をありったけ貰い、転生した。その中のギルガメッシュの特典が彼に多大なる影響を与え、精神を歪ませた。結果、自身を王と考え好き放題やりたい放題した。ニコポ・ナデポが制限時間付きと言う事実を知らなかった。そして、自身の力がコピーされた事を知った英雄王に断罪された。因みに、彼を転生させた神も英雄王に断罪されている。
英雄王
賊とイシュタル似の神を断罪出来てニッコリ。次いでに良い庭師に成りそうな少年を見つけられてニッコリ。
神藤を転生させた神の上司が世界の管理を引き継いで、特典で歪まされた人々を、正気に戻した後に客観的にどういう行動をしていたのかを見せている様子を見てニッコリ。楽しげに座へと還って行った。
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