通りすがりの探偵さん   作:silverArk.

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投稿は出来る内にする。それが私の主義だ。
前話の前書きで書き忘れましたが、音沢市と言うのはバンドリの舞台となっている街です。名が無かったのでこちらで勝手に着けました。


第一章
Aの憂鬱/新天地でのスタート


 

神藤の一件から数日。俺は風都での依頼を忙しなくこなしている…訳ではなく。再び音沢市へと脚を運んでいた。

何でも、神藤一派が壊滅した事を知った他のミュージアム残党が音沢市へと流れているらしい。その為、早期警戒と早い対処を可能とすべく、俺が派遣されたと言う訳であった。

既にアパートの部屋は引き払われ、音沢市の雑居ビルのフロアを貸し切って住居兼、第二鳴海探偵事務所となっている。

そして、現在の俺は音沢市の地形を確認する為にバイクを走らせていた。翔太郎さんの、風都は俺の庭。と、までは行かなくとも道に迷うなどあってはならない。

因みに、俺が音沢市に派遣されるに当たって翔太郎さんは反対をしていた。それは、俺の過去の出来事を気にしての事である。しかし、照井さんの俺が音沢市に居る事の必要性。フィリップさんの可愛い子には旅をさせよの言葉。所長の見守ろうと言う提案。そして、俺の過去は割りきったと言う言葉に説得されて折れたのであった。

平日の昼間に歩き回る人間は多くはない。そんな人間は会社員や、休みを取った人間ぐらいなものだ。と、言っても俺も明日からは自由では無くなる。その答えは一つ。俺も学校へと通わされるのだ。

既にフィリップさんの教育もあって、俺は高校卒業程度の知識を保有している。が、極端に交遊範囲が狭い事を悩んでくれていたらしい所長が独断で俺を音沢市の高校へと編入させていた。その際に、照井さんが校長、ひいては教育委員長に働きかけ、俺がドーパント絡みの事で出席しなくなる事も対処済みだった。なんと言う連携プレイ。流石は夫婦である。

ともあれ流れていく、目に映る懐かしい光景と、数年前には無かった建物や景色を事務的に、確認して行く。

途中、大型のショッピングモールに立ち寄り食事を済ませる。そうして、音沢市を一周する頃には日も落ちかける時刻になっていた。

そろそろ帰宅するか、とバイクを走らせていると大勢の人間が集まっている場所が目に留まる。

その施設の看板にはライブハウスCiRCLEの文字が記されていた。どうやらこの施設の営業は夕方からが本格的に動き始めるらしい。

興味をそそられた俺は、バイクを停車して駐車。CiRCLEへと立ち寄る事を決めた。

バイクから降りた俺は、ヘルメットを外しソフト帽を被る。室内に入ればどうせ脱ぐのだが、行動するに当たってこれだけは外すことは出来ない。

CiRCLEへと入店し、チケットを買う。そして、開始までブラブラと歩き回っていると、奥の従業員専用通路から女性の苛立った声が聞こえた。

咄嗟に、壁に張り付き盗み聞きをしてしまう。仕方ないと言えば、仕方ない。ほぼ条件反射の様なものである。

女性は携帯で会話をしている様だった。そっと、その様子を伺う。その女性は肩口まで伸ばした黒髪に整った顔立ちをしていた。

 

「……それじゃ今日は、Roseliaは出れないのね。……ええ、分かったわ。湊さんと今井さんにお大事にって伝えて……ええ、それじゃ」

 

そう言って通話を終える女性。どうやら今日出る筈だったグループが急遽出れなくなったようである。ドタキャンと言うヤツだ。

事情があるのは分かる。しかし、これはかなりの迷惑をかけるのは間違いない。友人間のドタキャンならまだ下、こういった、催し物。特に金銭に関わってくるものは信用関係に響く。

それを理解しているからこそ、あの女性も苛立っているのだろう。

触らぬ神に祟りなし。俺はソッと、その場を離れた。

 

 

 

 

ライブ終了後、俺はかなり満足してCiRCLEを後にしていた。前回、護衛の依頼を受けた際には依頼人のグループが演奏し、歌っているのを見た。アイドルのグループらしいものであるが、その裏では血の滲むような努力をしており、随分と感動したものではあるが、今回見たグループもそれと同等であった。

Afterglowと言うグループは王道のロック調のものだった。歌詞も身近に感じられるものをテーマとしているらしく、高校生らしいものだった。

Poppin'Partyと言うグループは元気に満ち溢れ、いかにも女子高生らしいものだった。曲もポップな感じであり、乗りやすい。事実、観客はかなり盛り上がっていた。

音楽の種類は違えど、良いものを聞いたと感じる。そうして、一つの事を思い立った。

それは、方向性こそ違えど彼女らは仮面ライダーと似ていると言う事である。

仮面ライダーは希望を、人々の笑顔を守る。彼女らは人々を笑顔にする。それはきっと素晴らしい事だ。

俺は上機嫌でバイクを飛ばし、スピード違反で捕まった。

 

 

 

 

次の日。何時も通り六時半に起床した俺は、日課のランニングをこなす。そして、シャワーを浴びると、制服へと着替えた。

本日から、ピカピカの高校二年生である。

正直かなり気乗りはしなかった。が、既に転入手続きは終わっている。逃げる事は出来ない。ならば、行くしかない。戦わなければ生き残れないのだ!

そして――

 

「門矢新です。これからよろしくお願いします」

 

花咲川高校の教室で挨拶をさせられていた。

花咲川高校は近年に共学化したらしく。その生徒数は元が女子高であった事も一因となり、女子生徒が多くを占めていた。

因みにこの挨拶の瞬間が俺はかなり嫌いである。不躾に品定めをする視線。後何ヵ月からすれば年が変わるといる微妙な時期に転校した俺へと向けられる奇異の視線。彼ら彼女らの頭の中では俺を仲間内に入れるか入れないかの議論が飛び交っているのだろう。

担任が促すままに、指定された席へと座る。そして、SHRが終了し担任が教室から出た瞬間。周囲の生徒が殺到した。

放たれるのは、出身などを問う質問。矢継ぎ早に放たれるそれを、当たり障りの無い答えで捌いて行く。正直、面倒臭い。

 

「すみませんが、少々良いでしょうか」

 

そんな時、一人の少女が俺に声をかけた。喧騒の中でもその声は何故か、はっきりと俺の耳に届いた。彼女は名を氷川紗夜と名乗った。

 

「何ですか?」

 

「その左の前髪ですが、何故伸ばして居るのでしょうか。身嗜みはキチンとすべきです。何か理由があるのならば、教えて下さい」

 

その言葉だけで、氷川さんが几帳面な性格である事は間違いなかった。丁寧に聞かれた質問に、俺は誠意を以て答える。

 

「昔、怪我をしまして。それで髪で隠しているのです。すみません」

 

そう言いながら、前髪を捲る。その下の傷痕を目の当たりにした生徒達は明らかに引いた表情をする。だが、氷川さんは一瞬驚いた表情を作るのみであった。

 

「そう、ですか。失礼しました。それと質問に答えて頂き、ありがとうございます。何か有りましたら言って下さい」

 

「はい、分かりました」

そう言って自分の席へと帰って行く氷川さん。正直に、このクラスの中では一番好ましい人物であることは間違い無かった。

 

その後、チャイムが鳴り授業が始まった。

最初こそ、殺到していた生徒達は既に興味を失ったのか、俺への質問責めをしなくなっていた。

初めは、真面目に授業を聞いていたのだが知っている事を延々と聞かされる事がこんなにも苦痛であると初めて知った瞬間である。

ボーッと、黒板と先生を眺める。

これが日常というモノであるのだろうか。何て益体も無いことを考えて居ると、不意にガラッと音を立てて扉が開いた。

そこに居たのは一人の女子生徒。顔を伏せ、その表情を伺う事は出来ない。

しかも今は授業中。生徒が出歩くタイミングではない。そして、この教室に空いた机も無かった。

殆どの人が訝しげに女子生徒を見るなか、氷川さんが小さく呟いた。

 

「小川さん…?」

 

その声に反応したのか、バッと顔を上げる女子生徒。その顔には狂笑が張り付いている。

頭に響く警鐘。同時に教師が女子生徒を咎める。

しかし、女子生徒は意にも介さずポケットから何かを取り出した。

 

《T-REX》

 

響く音声。そして、躊躇いもなく女子生徒は首筋へとガイアメモリを突き立てた。

そして女子生徒の姿が歪み、ティーレックス・ドーパントが誕生した。悲鳴に包まれる教室。

吼えるティーレックス・ドーパント。ドーパントを中心として放たれた衝撃波は円形に範囲内に有った物を吹き飛ばす。俺は咄嗟に立ち上がり、後方へと飛びすさる事で回避した。

そして、机等が散乱するなかを歩き始めたティーレックス・ドーパント。 その先に居たのは氷川さんだった。

衝撃波の範囲外ではあったものの、飛ばされた机が氷川さんの机に直撃したようで、身動きが取れない様子であった。

 

「…氷川さぁん」

 

「小川、さん」

 

「アナタのおかげでね、私のグループは解散しちゃったって言うのに……何でアナタのグループは成功しているの?」

 

「それは、何度も言った様に貴女がお遊び気分でやっているからではないですか!」

 

どうやら、あのティーレックス・ドーパントは氷川さんとの確執があるようだった。言い募るドーパントに氷川さんは臆することなく言い返していた。大した胆力である。しかし、言い方が不味かった。明らかにドーパントを逆上させている。

 

「五月蝿いうるさいウルサイ!全部全部、アナタが悪いんじゃない!!もう、許さない……!」

 

「―えっ」

 

激昂したティーレックス・ドーパントは氷川さんとの距離を詰めると、その口を大きく開いた。

 

「コロシテヤル」

 

閉じられる口。そのまま行けば、氷川さんの頭部はティーレックス・ドーパントの胃へとまっしぐらである。

だが、その刹那。俺はティーレックス・ドーパントの横っ面を蹴り飛ばした。蹴り飛ばされた勢いで、ティーレックス・ドーパントは何も無い所を噛み砕く。

生身でドーパントを蹴った脚はジーンとした痺れを響かせた。

 

「黙って聞いてれば、お前が悪い。それしか言えないのかお前は」

 

「何?」

 

「他人が悪いと考えるのは良い。だが、自分にも悪い箇所が有ったとは思わないのか?そこを反省し、生かす事で人は成長出来る。それが何故分からない!」

 

ティーレックス・ドーパントへと言葉を発しながらドライバーを腰へと当てる。そして、ベルトが自動的に巻かれデッキケースが出現した。

 

「何なのよ、アンタは!」

 

苛立った様子で俺へと向くドーパント。俺はデッキケースからカードを引き抜き、ドーパントへと見せつけ、バックルへと差し込む。

 

「通りすがりの仮面ライダーだ、覚えなくて良い。…変身ッ!」

 

《KAMEN RIDE―――DECADE》

 

瞬間、俺はディケイドへと姿を変える。照井さんに連絡していたため、被害が出てしまった。が、もう被害は出させない。

ティーレックス・ドーパントの腕を掴むと、背負い投げの要領で窓の外へと投げ飛ばす。

不意の攻撃に対処出来なかったティーレックス・ドーパントはあっさりと窓を突き破り、落下する。幸いにも下はグラウンドであるし、この程度でドーパントは倒れない。

ドーパントを追って飛び降りようとした俺に、氷川さんの声が届く。

「門矢、さん……?」

 

が、俺は一瞥をくれると窓から飛び降りた。

 

 

 

 

 

 

落下したドーパントは既に体勢を整えて居た。俺を迎え撃つように飛び上がって、突進をかける。

が、それを予測して居た俺はデッキケースからカードを引き抜き、バックルへと差し込む。

《ATTACK RIDE:SWORD》

 

現れる直刀。それをしかと握り、体を捻る。

そして、ティーレックス・ドーパントが俺へと接触する瞬間、落下エネルギーと膂力を十二分に生かして斬擊を放つ。

突進が直撃するより早く斬られたティーレックス・ドーパントは火花を立て再び落下。俺は危なげ無く着地した。

どうやら、このティーレックス・ドーパント。戦いをした事が無いらしい。動きもぎこちなく、戦いやすい。

しかし、長期戦は禁物。ティーレックスの衝撃波を全力で放てば最悪、死人が出てしまう。

故に、俺が選択したのは落下したダメージで動けないドーパントに今止めを差す事であった。

デッキケースから金色のカードを引き抜き、それをバックルへと差し込む。

 

「さて……メモリブレイクだ」

《FINAL ATTACK RIDE:DE DE DE DECADE》

 

十枚のホログラム状の金色の壁が一列になり現れる。それを確認した俺は飛び上がった。グラウンドに転がったティーレックス・ドーパントまで達した金色の壁は、飛び上がる俺と連動して動き十枚目の壁がティーレックス・ドーパントの頭部に照準を合わせた。

 

「セイ…ハァァァァァァッ!!」

 

十枚の壁を通り抜けて放たれた飛び蹴りは、狙いを外すこと無くティーレックス・ドーパントへと命中。その反動を生かして後ろへと俺が飛んだ瞬間、爆発が巻き起こった。

地面へと倒れたままの女子生徒に、砕け散ったガイアメモリ。

それらを見届けた俺は、照井さんを待つ傍ら、救急車を呼ぶのであった。

 

 

 

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