赤土が目立ってきた。
広大な平野が広がっていて、木々はあまり多くはない。
違うとするなら、あまり水源や草原がないことだろう。
「なんだかここって、サバンナちほーに似てない?」
「たしかにそうね。」
またもや電車は駅に止まる。
「どうするの?」
「まあ、ヒトのことを知っているフレンズもいるかもだしな。」
「だね!」
車両から降りて、駅から出る。
サーバルやカラカルの目でも、建物は見つからないらしい。
とりあえずの目的はフレンズ探しと、水の確保だ。
「たーんけん、たーんけん!」
「ねぇ、あれってなんなの?」
カラカルが穴の多く空いた、そびえ立つ岩を指差す。
「アリの巣だな。……なあ、虫のフレンズっているのか?」
「さあ、見たことはないわ。」
「あと、鳥のフレンズって、虫を食べるのか?」
「いいやー。ジャパリまんの方がおいしいって、言ってたよ!」
「そ、そうか。」
美少女が虫をモグモグしている光景は見たくはなかったので良かった。
「おっ、誰かいるよー!」
俺たちに気づいた美少女が、ポニーテールを揺らして近づいてくる。
「サーバルさん!カラカルさん!」
「アードウルフ!」
「まさか会えるなんて!」
白黒模様のシャツは2人似ているが、スカートではなく黒のホットパンツ姿だ。ホットパンツとニーハイソックスに挟まれた肌色領域がグッとくる。リボンではなく、小さめのネクタイが似合っている。
「あの、こちらは?」
「イッキ、ヒトのフレンズだよ!」
「どうも。」
「会えたんですね!」
「探しているヒトとはちがったけどね。」
「一緒に旅しているんだ!」
「そうなんですね。あの、はじめまして。わ、私、アードウルフです……」
ヒトに、トラウマでもあるのだろうか。
何もないのに、俺が怖いとかないよね……?
「ちょっと人見知りとか、しちゃいますけど……、で、でも、いざという時は、頑張りますから……」
「なるほど。よろしくな、アードウルフ。」
「は、はい!」
「ところで、ここまで何をしに来たの?」
「私、住むところを探しているんです。」
「思い出せないんだっけ、前にいいと思った場所。」
サーバルと同じような事情を抱えているのだろうか。
「そうなんですよね。でも、もっといい場所を見つけてみせます!」
「おお! やる気満々だね!」
「お待たせしましたー!」
「……そうやって、飛ぶのか。」
頭から白黒の斑模様の羽が生えていてそれを羽ばたかせて飛んできた。髪は黄色、白いブレザーで、眼鏡をかけている。ミニスカとハイソックスの間の肌色領域もグッとくる。
「あなたが?」
「はい、私がアリツカゲラ。巣を作るのが得意なフレンズです。あなたのご要望に合わせて、内装をいじったりして最高のお住まいを提供しますよ。お気軽にご相談下さいね!」
「あ、あの、よろしく、お願いします。」
「はい!……って、サーバルさんじゃないですか!」
「知り合いか?」
「さあー?」
「宿泊施設『ロッジアリツカ』にいらっしゃったじゃないですか!」
「うーんうーん」
「ところで、かばんさんは?」
「かばん……かばん!」
「なにか思い出したの!?」
「わかんないや! でも、かばんちゃんって呼んでいた気がする。」
「なにかあったのでしょうか?」
「まあ、そのかばんって、ヒトのフレンズを探しているのよ。」
「そ、そうなんですね。見つかると、いいですね。」
「あの……」
「そうそう! アードウルフさんにぴったりの巣を見つけてあげますよ! ではみなさん出発しますよ!」
「おーーっ!」
「お、おー」
アリツカゲラの先導のもと、歩いていく。
平野から、まずは森の中に入っていった。
「どういう巣がいいか、ご要望はありますか?」
「ほかの方が昔使っていた場所をお借りしたい思っています。あと、外敵から身を守れると言いますか。」
「セキュリティも気になるということですね! そんなアードウルフさんにちょうどいい巣があちらです!」
指差した方向を見ても、それらしいものはない。
「もしかして、あのぶらさがっているものかしら?」
「まてまて、あれってウツボカズラ……」
「その通りです。近くにはスズメバチの巣もあるので、外敵も近寄ってきませんよ!」
「まてまてまてーい! あれは寝袋じゃないんだからな。ていうか、ハチは俺たちには危険すぎる。」
「ちょっと、狭いかなー。」
「そうなんですか? では、次に行ってみましょう!」
次に向かった先は、川の近くだ。
休憩として、水を飲ませてもらった。
どんどん上流に向かっていくのだから、不安しかない。
「どうですかー!!この滝!!」
「いや、すごいんだけど!!」
「耳がいたいー!!」
滝を目の前とした窪みは、滑ってしまいそうで危険すぎる。
その上、カラカルたちにとっては、この音がキツそうだ。
「じゃあ、次行ってみましょーう!!」
大きな声で叫ばなければ、話が成立しない。
「雨か。」
「わわっ、どうしよー!」
「次の場所で雨宿りしましょうか。」
急な天候の変化、雷雨から逃げるように洞窟に逃げ込む。
「ここ、私的にはオススメしないんですけどね。」
「あら、お客さん?」
「あっ、まだお住まいでしたか?」
「ええ。でもここ、広いから。」
洞窟の奥の暗闇からやってきた影は、気づけばアードウルフの目の前にいた。
「あ、あの。」
「ふふっ、かわいい。」
髪型はボブカットで、コウモリの羽は背中にある。
濃い紫色のセーラー服とマント、足はタイツで隠されている。
「私、ナミチスイコウモリ。あなたたちは?」
細い指を唇に押し当てる仕草が、あざとい。それある!
「わたしはサーバル!」
「カラカルよ。」
「イッキだ。」
「あの、アードウルフと言います。」
「覚えたわよ。」
俺たちのことは眼中にないらしい。
「ね! 雨が止むまで狩りごっこしない?」
「でも、ここは狭いわよ?」
夜が近づいてきていて、カラカルのテンションも上がってきている。
「まずは腹ごしらえしないか?」
「それもそうね。」
ジャパリまんを、フレンズの全員に手渡していく。
バッグから出てきたことで、称賛の声が上がった。
ていうか、コウモリのフレンズさんもジャパリまんが好物らしい。
「かばんさんも、こんな風にロッジで雨宿りしていってくれましたね。」
「ねぇねぇ! かばんちゃんってどんなフレンズだったの!」
「そうですねぇ。イッキさんに似ているでしょうか。」
「それ、ヒトのフレンズだからじゃない?」
「ええ。親しみやすいところが似ていますね。頼りになるかどうかわからないところとかも。」
「それ、褒めてるのか……?」
「はい。かばんさんも旅をしていて、いろんなフレンズを結びつけてくれました。」
「へえ!へえ!」
「まあ、かばんさんたちが海から旅に出てから、会ってはいませんが。」
旅をすべき範囲が広まってしまったな。
「うみって、なに?」
「大きな池みたいなものだ。それもカラカルが想像できないくらい広い。」
「そうなのね。」
「あっ、でもジャングルちほうに住んでいるとも聞いたことがあります。」
「おおっ!」
「いいことを聞けたな。」
「雨、上がったみたい!」
天候が変わりやすいのだろう。
さっきの雷雨は、夕立に過ぎなかったらしい。
2人だけのお話をしているアードウルフやナミチスイコウモリは、たぶんさっきの洞窟に同棲をするだろう。アリツカゲラが会話に混ざっていった。
一度、俺たちは外に出る。
街灯などはなく、満天の星空が広がっている。
「月、綺麗だな。」
「そうね。今まで、当たり前だと思っていたけど、ね……」
「ね! あそこ、光ってない?」
「行ってみましょう!」
テンションの高いサーバルたちには追いつけそうにもない。
ていうか、暗すぎて2人の姿は見えなくなった。
まあ、あの光っているところに向かえばいいだろう。
「ヒト!やっと見つけた!」
「大人しく我々に着いてきてください。」
茂みから2人のフレンズが登場した。
セーターを着たブレザー姿で、探偵のように見える。
「まさか、逃げようとしてます?」
美少女が迫ってきたのだから、距離を取ろうとしただけだ。
「詳しいことは後で話すから、付いてきて!」
「どういうことかまず説明を」
言葉を続けることはできず、まぶしさから顔を腕で覆い隠す。
人工的な光なんて、久しぶりだ。
「まさかセルリアン!?」
「センちゃん、まずいよ……」
1つ目のセルリアンで、長い筒には脚が生えていて4足歩行。たぶんモチーフは懐中電灯だ。俺たちの姿は照らされていて、ゆっくりと突撃の姿勢を見せている。その大きさからして、俺たちはいとも簡単に押しつぶされるだろう。
「逃げるぞ!……なにをしているんだぁー!?」
2人とも、身体を丸めて伏せている。
アルマジロのようなフレンズ習性なのかもしれないが、美少女がやってもただの止まった餌だ。
「ちくしょ!」
小柄な2人の両腕を掴んで引っ張り上げ、走る。
ジグザグに動く俺たちを追うように、光が向けられる。
真っ直ぐ走っていたら、危なかった。
「ありがとう、ございます……」
「でも、追いつかれるー!」
もちろん追いかけてきた。
サーバルやカラカルが来てくれれば最高なのだが、逆方向に走ってしまっている。
「小屋に隠れるぞ!」
コンクリートでできた小屋に入って、扉を閉める。
息を整えながら、窓から外の様子を伺う。
セルリアンは俺たちを探すように、あちこちの暗闇を照らしていた。
「あの、どうして……?」
見捨てることもできたよな。
この2人よりは、速く走ることもできるだろう。
「咄嗟だったから、自分でもわからん。……大事なこと、ここで学んでいるからじゃないか。」
「そ、そうですか。」
現状は変わることはない。
ここで籠城するにしても、いつ諦めてくれるかもわからない。
「さて、なにかないか……ヴェ!?」
浮遊感の後に、後頭部に衝撃が走る。
カランと、
鉄パイプの音がして、そのまま気を失った