けものフレンズ2の、にじそーさくだよ!   作:ヒラメもち

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第4話 夢ってのはな

最後に見たのは、満天の星空だったはずだ。

 

見上げてごらん、青空だ。

檻の中で、ドナドナされているのだよ。

 

 

周囲を見渡しても、カラカルやサーバルどころか、フレンズがいない。

 

 

「よしっ」

 

持ち物を没収していないことを後悔するがいい。

2人とも、木でできた荷台でこの檻を重そうに運んでいる。

 

バッグから、バールを引き抜く。

そもそも、バールとは単なる打撃武器にあらず。独特のフォルムから繰り出される『てこの原理』こそが、人類が生み出した科学の産物なのだ。バールのようなものではなく、正真正銘のバールだからこそ、可能とする奥義なのだ。

 

「おりゃあ!」

 

「「わぁーー!?」」

 

檻を無理やり開けようとしたので、荷台のバランスが崩れた。

 

「ヴェアアアアーー!?」

 

結果的に、荷台は横転して俺にもダメージが入る。

 

 

 

「「「いたた……」」」

 

ともかく、檻は破壊された。

 

「ま、待て、話せばわかる。離せばわかるから!」

 

今から逃げる方法を画策する。

あらかじめ考えて動けばよかった。

 

 

「絶対に逃げてしまうでしょうね……」

 

「えー、そうなの?」

 

「なぜバレたし。」

 

コミュニケーション力が足りなかった。

時間稼ぎにもならない。

 

「ふむ。ヒトのフレンズ、侮れませんね。」

 

「これ、もう直せないよね?」

 

「偶然見つけたものですし、いいのでは。」

 

「いいんだな……」

 

まあ、人工物はフレンズにとってはガラクタなのだろう。その利用方法もあまりわかっていなくて、檻の閉め方も雑だった。

 

偶然見つけて、運びやすいから俺を放り込んだだけなのだろう。

 

 

「君を持ち上げて、運ぶの無理なんだよねー」

 

「そこまで太ってないし!」

 

「重いのは、確かですよ。」

 

力持ちのフレンズではないらしい。

 

 

「ていうか、なんで拉致したの。」

 

「らち?」

 

「あー、ここまで、どうして連れてきたのでしょうか。」

 

「依頼主が会いたがっているからですよ。」

 

「ようやく、ヒトのフレンズを見つけたからね!」

 

そんなに希少なのかよ。

サーバルの知り合いを探すことは苦労しそうだ。

 

 

「じゃあ、会いに行くか。」

 

「え? いいの?」

 

「まあ、埒が明かないみたいだしな。案内してくれ。」

 

筆記用具は、まだあるしな。

武器としてはバールもあるし。

 

「わっかりましたー!」

 

「こちらです。」

 

意気揚々と歩いていく2人の後ろを、歩いていく。

時折りこちらを向くのだから、油断ならない。

 

「あー、そういえばごめんね。」

 

「どうした?」

 

「ここまで、無理やり連れてきちゃったみたいだし。」

 

「ヒトのフレンズをようやく見つけて、つい熱くなってしまいました。昨夜の恩を、仇で返すことになってしまったようです。」

 

2人は探偵気質なのだろう。

頼まれたことを達成しようとするフレンズだ。

 

「いいよ。2人とも連れていくことに必死だったらしいし、フレンズには得意不得意あるんだし。」

 

「そう言ってもらえるとは…」

 

「それに、あの場に留まるのもマズかった。」

 

「ええ、朝になったらいなくなっていたとはいえ、用心に越したことはありませんから。」

 

「サンキュ」

 

「ねぇ、センちゃん! ヒトって、優しいフレンズなんだね!」

 

「個人差はあるけどな。」

 

「そうなんだー。あっ、あれって依頼主さんじゃ?」

 

「そうですね。ふむ。匂いに、気づいたのでしょうか。」

 

 

こちらに近づいてくるフレンズがいる。

急に飛びついてきて、食べられる気配はない。

 

「あなた、ヒトですね?」

 

水色と橙色の瞳、全体に灰色っぽい。

首輪にも思えるアクセサリーが特徴的だ。

 

「まあ、ヒトだな。」

 

さて、どうくる?

 

 

「私は、イエイヌです!」

 

「ぐほっ」

 

勢いよく抱きつかれる。

 

「会いたかったー!」

 

「ギブギブギブ!」

 

尻尾が、ブンブン振られている。

 

 

「依頼は完了ですか?」

 

「はい、ありがとうございました。これはお礼です。」

 

「わーい、ジャパリスティックだ!!」

 

「イエイヌ、また何かあれば呼んでねー!。もちろんヒトのフレンズさんも!」

 

「お詫びに、あなたはサービスでお請けしますよ。」

 

「おう、またな。」

 

「ではー!」

「では。」

 

2人とも、遠くへ去っていく。

なかなか酷い目にあったけど、ちゃんと和解できてよかった。サーバル風に言えば、フレンズになれてよかったということだ。

 

 

「ていうか、どうしてヒトを探していた?」

 

「まずはこっちです!」

 

「急ぐな急ぐな」

 

俺の手を引っぱって、道を走っていく。

こういう感じの飼い主、前世で見たことあるな。

 

河川敷、だっけか。

 

 

「着きました!」

 

その声で意識がここに戻ってくる。

寂れた家がいくつか建っていたが、人の声どころか、他のフレンズの声もない。

 

 

「ここには昔何人もヒトがいたんです。よく私も遊んでいました。」

 

「……へぇー」

 

1つの家の扉を開ける。

ピンクの内装で、目ぼしい小物はほとんどない。

 

「でも、みんないなくなってしまって。……でも、でもいつか……。」

 

「今もここに住んでるのか?」

 

「はい、お留守番しているんです。」

 

鍵閉めるのかよ。

たぶん人間の行動を見ていたのだろう。

 

ヒトの生活をよく学んでいる。

 

「ふむ。何もないか。」

 

タンスを開けても、中身はない。

全国の勇者が舌打ちしそうである。

 

「あの!」

 

「なんだ?」

 

「な、なにか言ってください。」

 

「な、なにを?」

 

「私にあれをやれとか、これをやれとか!」

 

「な、なんでもか!?」

 

「なんでも! 遠慮なく!」

 

頬を赤くした美少女が顔を近づけてくる。

ゴクリと、息を飲んで……

 

 

首を振る。

そもそも猫派だったわ、俺。

 

でも、犬もなかなか良いのでは‥‥

 

「おすわり。」

「はい!」

 

「お手。」

「はい!」

 

頬を赤くして、涙を流して喜んでいる。

美少女にやらせてるのだから、犯罪行為だな。

 

でも、やめられない。

 

「次はあれを!」

 

「フリスビーか。」

 

「ふりすびーって、言うんですね!」

 

 

「外、行くか。」

 

「はい!」

 

建物に囲まれた広場だ。

ここなら、ケガもしないだろう。

 

「いくぞー」

 

「わー!」

 

 

フリスビーは空を舞い、それを追いかけていく。

口に咥えて、帰ってくる。

 

 

ヤバい、俺捕まる。

おねだりに流されて、またやってしまう。

 

 

ちょっとだけ! あと1回だけだから!

 

 

 

「やーっと、見つけたー!」

 

その声で中断した。

サーバルとカラカルがこちらへ向かってきている。

 

「……何者です?」

 

「友達だ。」

 

「ともだち、って?」

 

飼い主としか、深く関わってこなかったのだろうか。

 

「あー、家族みたいなものだ。一緒に旅をしているフレンズだ。」

 

「……そうなんですね。旅、ですか。」

 

 

「はい!これ!」

 

「サンキュ」

 

ジャパリまんは、すでに食べられたか。

サーバルから手渡された色鉛筆を、筒に戻す。

 

「イエイヌ。この2人は、サーバルと、カラカルだ。」

 

「はじめまして。」

 

礼儀正しく、イエイヌが頭を下げる。

 

「うん!よろしくね!」

 

対して、サーバルはいつもの元気ハツラツである。

 

 

「なんだか仲が良いわね。」

 

カラカルがむすっとしている。

 

「まあ、いろいろあってな。」

 

「勝手にいなくなって、そして遊んでたっていうの?」

 

「えーと、いろいろ、重なってしまったというか。」

 

「はっきりしなさいよ!」

 

「俺のせいじゃ……いや、心配かけたな。」

 

「……無事で、よかったわ。」

 

俺たちは、こういうフレンズだから。

時には喧嘩もするし、ギクシャクしてしまう。

 

 

でも、ちゃんと仲直りする。

 

 

「すみませんでした。私が、ここに来させるようにしたので。」

 

寂しそうな表情で、イエイヌがそう告げる。

 

「……ねぇ、イッキはこれからどうするの?」

「みんな!」

 

サーバルが、腰を低くして戦闘態勢に入った。

続いて、イエイヌやカラカルも同じ方向を見る。

 

 

そのけものの声に、俺も遅れて気づく。

 

 

「少々、厄介なやつが来ましたね。」

 

「知っているのか?」

 

「ビースト、そう呼んでいました。」

 

「来るわよ!」

 

現れたのは、トラだ。

腕についた鎖が、特徴的だった。

 

目は輝いていて黒い瘴気を纏っている。

途方もない怒りを感じた。

 

「後ろにいてください! ここは私が!」

 

そう告げて、イエイヌが取っ組み合う。

しかしトラに対して、勝つことはままならない。

 

 

サーバルやカラカルも、有効打がない。

セルリアンとは違って、姿はフレンズなのだ。

 

「もう!どうしたらいいのかしら!?」

 

殺すことを、避ける。

 

「絶対に、守りますから!」

 

何か、俺にできることはないかと必死に探す。

動きを止めるにしても馬鹿力だ。

 

檻、いやそれはダメだ。

入ってみて、その苦しみは思い知った。

 

 

「……ふぅ」

 

一度後ろに引いてきたサーバルが、深呼吸する。

そして、再びビーストと対峙する。

 

 

サーバルもビーストも、同じように目が輝いていた。

 

 

 

睨み合う。

2人の威圧感に、震えが止まらない。

 

 

踵を返した。

森の中へ、ビーストが去っていく。

 

「逃げたの……?」

 

「はぁはぁ」

 

「サーバル、大丈夫か?」

 

「うん、なんともないよ!」

 

「……そうか。」

 

 

「あんたも大丈夫?」

 

カラカルの手を取って、イエイヌが立ちあがる。

 

「ありがとう、ございます。……あの、私は、役に立てましたか?」

 

「ああ、ばっちりだ。」

 

ていうか、俺が足手纏いだったし。

 

「あたしたちだけじゃ、危なかったわ。」

 

「そうですか、よかったぁ……私、戻りますね。」

 

「あんた……」

 

「ヒトに会えて嬉しかった。あなたの居場所は、あのおうちではないのですね。」

 

「まあな。イエイヌはどうするんだ?」

 

「私はお留守番を続けます。それが使命ですから。」

 

「ちょっと、あんた!」

 

「最後に! 最後に、言ってもらえませんか、『おうちにおかえり』って。」

 

 

泣きそうになりながら、告げることではないだろう。

一度、大きく息を吸って両手を突き上げる。

 

 

 

 

「うるせェ!!いこうーー!!」

 

 

 

「……え?」

 

 

 

シャキっとしろってカラカルもいつも言ってくれるし。

 

 

「探しに行くんだよ、ヒトを。」

 

「わたしたちも探しているんだ!」

 

「み、みなさん……」

 

「もちろん、あたしも付き合うわよ。」

 

今度は、イエイヌはちゃんと泣いていた。

その背中をさすってあげる。

 

 

「で、でも……お留守番」

 

「書き置きするか。」

 

「かきおき?」

 

「言葉を残していくことだ。あー、そう、ヒトがやるマーキングだ!」

 

「な、なるほど……」

 

「あんた、何言ってんの……?」

 

イヌのマーキング方法とは違わい!!

 

 

「文字って言ってもわからないしな……。ヒトの特有の、会話?」

 

「なんだかすごそう!」

 

「ふっふーん、ヒトのフレンズの力を見直したか。」

 

「すごいけど、あんまり調子乗らないの。」

 

「へい。」

 

「ふふっ、じゃあ、お願いしますね。」

 

イエイヌの言う通りにメッセージを残せば、こっちから探しに行ける。

 

 

「ていうか、ずいぶんとモノレールから離れちゃったな。」

 

「ここまでの道は、覚えているわよ。」

 

「さすがカラカルだな。」

 

「ほ、褒めても何も出ないんだからね!」

 

あら、顔を逸らされた。

夕日に照らされた顔を見て、俺も顔を逸らす。

 

 

 

 

こうして旅に新たなメンバーがくわ

「ねぇねぇ! イエイヌって、なにが得意なフレンズなの!?」

 

「そうですねぇ、ヒトと心を通わせることでしょうかね。」

 

「いいないいなー!」

 

「カラカルさんも得意みたいですね。まあ、私ほどじゃありませんけどね。」

 

「な、何を言ってるのかしら!? い、イッキが単純なだけじゃない?」

 

「そうかも!」

 

「ひでぇ……、まあ他のヒトに会ったら、わかるんじゃないか。」

 

「ふふっ、そうですね。よしっ、探しますよー!」

 

「おーーっ!」

 

夕日に向かって、みんなで歩いていく。

 

まだまだセルリアンとビーストと戦う力も勇気もない。それでも、こうして1人のフレンズを救えたのだ。ヒトは1人では無力だけれど、助けてくれるフレンズがいるから、少しでも俺も力になりたいと思う。

 

 

「ところで、イエイヌって夜行性なのか?」

 

「いえ、今の時間帯が一番」

 

「一緒に、苦労しよう。」

 

「はい?」

 

 

 

「ね! 狩りごっこしない!」

 

「しょうがないわねー。この前のリベンジ、やってやるわ!」

 

「負けないんだから!」

 

 

 

「……なるほど。」

 

カラカルまでテンション上がるのだから、サーバルを止めるフレンズがいない。

 

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