けものフレンズ2の、にじそーさくだよ!   作:ヒラメもち

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丁寧口調なイエイヌたちが、元気ハツラツ3人に隠れてしまう。

サーバル3人分だからね


第5話 『友情』は

モノレールの車窓から見えたのは青い海だ。

興奮を隠せない3人が駅から砂浜へ飛び出していった。

 

「これ、ほんとに全部水!?」

 

「なにこれなにこれ!!」

 

「なんだか、臭いが」

 

嗅覚の優れたイエイヌにとっては少し潮の香りがキツいらしい。

 

「つめたーい!」

 

「水浴びはするなよー」

 

「わかってるわかってるー!」

 

「イエイヌもきなさーい!」

 

「はい!」

 

俺の隣にいたイエイヌも2人と合流する。

 

浅いところで、足をつけてパシャパシャと遊んでいる。

眼福眼福、もしこれで水着だったら最高だった。

 

「ねえー! この水、なんか変なんだけどー!」

 

カラカルの声が聞こえて、ビクっとした。

 

「飲んでも美味しくないぞー!」

 

「ほんとですねー!」

 

「あははー、なんか変な味―!」

 

 

さて、周囲を確認しても、他のフレンズの姿はない。

そもそも、魚のフレンズはいるのだろうか。

 

「おっ、あれは建物か。」

 

「なにかあったの?」

 

「た、建物を見つけてな。」

 

いつの間にかカラカルが近くに来ていて、動揺した。

 

シャツが透け

「ねぇねぇ! あそこにフレンズがいるよ!」

 

「行ってみましょうか。」

 

「お、おう。そうだな。」

 

 

海上レストランだろうか。

荒廃しているとはいえ、かつて観光地だった面影はある。

 

「いきますよー!」

 

「よいしょー!」

 

水色のセーラー服美少女と、パーカーを羽織った眼鏡美人が遊んでいる。特徴的な尾ひれが尻尾のように生えていて、たぶんイルカやアシカのフレンズだろう。アシカのフレンズが投げたボールは宙を舞って、それを追いかけるように見事なジャンプをして、唇で触れる。

 

つまり、キスだ。

ボールそこ代われ。

 

「あー! サーバルちゃんだー!」

 

「え、えー?」

 

サーバルの両手を取って、イルカのフレンズがぶんぶんと振る。

 

「ぼくね、アシカちゃんと遊んでいたの! いつもは海なんだけどね!」

 

「ドルカさん、お知り合いでしょうか?」

 

「うん! サーバルちゃん!最近お友だちになったアシカちゃんだよ!」

 

「はじめまして。あなたたちは?」

 

「あたしはカラカルよ。」

 

「イエイヌです。」

 

「はじめましてっ! ぼく、バンドウイルカのー、ドルカ!」

 

「そして俺はイッキ。とおりす」

「キミたちって何のフレンズ!?どこからきたの!?」

 

「えっ、え~」

 

今度はイエイヌの両手を取って、ぶんぶんと振る。

 

「海ははじめて?泳げる? ぼくね、泳ぐのすっごく得意なんだよ!」

 

「し、質問多いわね……」

 

「だな……」

 

好奇心旺盛で、サーバルに通ずるものがある。

 

 

「あれー? かばんちゃんは?」

 

「私たちは今、その方やヒトのフレンズを探しているんです。」

 

「そうなんだ! でも、ぼくたちもあれから会ってないなー」

 

どうやら、かばんという人の所在は知らないらしい。

サーバルは口を開いたまま、海の向こうを見つめている。

 

 

「ね! 久しぶりに会ったからさ、ぼくたちと一緒に遊ぼうよ!」

 

「うん! 前に会った時はバタバタしちゃったからね!」

 

「サーバル、あんた……」

 

「思い出したんだ。まだ、ちょっとだけだけどね。」

 

「良かったじゃない。」

 

「えへへー」

 

「ボール投げてさー、ぴょーんってやるの、やろうよ!」

 

「ですが、ボールは1つしかありませんよ。」

 

眼鏡くいっが、アシカに似合っている。

 

 

「なら、バレーボールはどうだ?」

 

「「「ばれー、ボール?」」」

「「なにそれなにそれ!!」」

 

興奮を抑えきれないフレンズ2人をまずは落ち着かせ、ルールを簡単に説明していく。砂浜に線を引きながら、3人1組でやるだとか、タッチ3回までだとか、ボールを相手コートに入れるだとか、自慢の爪を使わないようにしてくれだとか。

 

競技ではないので、細かいルールは割愛する。

 

「ドルカ、アシカさん、それにサーバルでどうだ?」

 

「うん!」

「負けないよー!」

「わかりました。」

 

さて、身体能力的には劣るヒトのフレンズだが、この身体に染みついたスポーツの技術を見せてやろう。

 

「あたしたちの力、見せつけてやるわよ!」

「はい、私もがんばりますね!」

 

どちらのチームも気合いは充分。

 

「じゃあ、ゲームスタート!」

 

まずは見本として、俺のサーブを相手コートにふんわりと入れる。

 

「こうするんですね!」

 

「わわっ!?」

 

アシカがおでこでレシーブ、続けてサーバルが飛びつこうとしたが慣れない砂浜で自慢のジャンプは繰り出せない。

 

「ぼくに まかせて!」

 

サッカープレイヤーもびっくりの、ドルカのヘディングである。

 

「いってぇー!?」

 

足腰をちゃんとバネにしてレシーブをしたが、その衝撃をもろに受ける。

 

「カラカルさん!」

 

「任せなさい!」

 

コートの外に出そうなボールに飛び込むように追いついたイエイヌによるパスを、カラカルがパンチで相手コートへ打ちこむ。

 

「よっと!」

「いっくよー!」

 

早くも砂浜に適応したサーバルがボールを拳で打ち上げ、続いてドルカがジャンプして蹴りこみ、砂浜にボールが勢いよく埋まる。

 

「「いえーい!」」

「やりますね!」

 

人知れず、俺は冷や汗を流していた。

 

「次は負けませんからねー!」

「そうね!」

 

気づくのが遅かった。

俺は、超次元バレーボールに巻き込まれた一般人なのだ。

 

 

 

****

 

太陽が輝いている。

カラカルやイエイヌが視界に入った。

 

「大丈夫?」

 

「……そう見えるか?」

 

「お水をどうぞ。」

 

「サンキュ」

 

川を見つけて、汲んできてくれたらしい。

上体を起こして、一気飲みする。

 

 

「イッキー!たのしかったよ!これなら、みんなで遊べるよ!」

 

「1つのボールで多くのフレンズとも遊べますからね。」

 

「それはなにより。」

 

「お礼に、海の上に連れてってあげるよ!!」

 

「こちらです。」

 

重い身体を起こして、2人に付いていく。

 

 

 

案内された先には、クジラを模した人工的な船。

エンジンはすでに壊れているだろう。

 

「乗って乗って!」

 

「私たちが泳いで運んであげます。」

 

海に潜り、クジラのヒレの部分をそれぞれ押していく。

 

「すっごーい! やっぱり泳ぐの得意だね―!」

 

「でしょでしょー!」

 

「これ、なんか苦手……」

 

カラカルの耳がシュンとしていて、いつもよりしおらしい。

 

「そうですね、不安になります……」

 

相対的に動く海面を見つめてしまっていて、陸ではないことを実感しているからだろう。

 

 

「そうだ! ちょっと待ってて、何人かお友だちを呼んでくるから!」

 

「わかったー!」

 

「2人とも、本当にいつも元気溌溂ですね。」

 

サーバルが俺たちを元気よく引っ張っていく存在だ。

アシカさんにとっては、それはドルカなのだろう。

 

 

「と、止まった?」

 

「風が気持ちいいですねー。」

 

「そうね。止まってたらいい感じだわ。」

 

波の音と、風の音しか聞こえない。

さっきとは違って、久しぶりの静寂を楽しむ。

 

サーバルの視線の先には、空を飛んでいく白い鳥のフレンズが2人いた。

 

 

海から飛び出したり潜ったりを繰り返しながら、3人のイルカのフレンズがやってくる。

 

「おっまたせー!」

 

さながらイルカショーのように、ドルカが船に着地する。

桃色と青色のセーラー服美少女が続いてくる。

 

「サーバルさんではないですか!」

 

「ほんとだー!」

 

「久しぶりだね、2人とも!」

 

置いてきぼりな俺たちの方を向く。

 

「申し訳遅れました。私はシナウスイロイルカの、ナルカです。」

 

「マルカちゃんの名前はー、マルカだよ!」

 

「あたしはカラカルよ。」

 

「イエイヌです。」

 

「俺はイッキ。通りすがりの冒険者だ。」

 

「あははは、またおともだちができたよー!」

 

「一緒に遊んだんだー!」

 

「いいないいなー!」

 

「ばれーぼーるっていう遊び、イッキに教えてもらえたんだー!」

 

「なにそれーおもしろそーう! マルカちゃんもやってみたーい!」

 

「すっごーい、おもしろかったよー!」

 

ドルカとナルカのテンションに、サーバルまで加わる。

さっきまでの静寂が嘘のようだ。

 

まあ、こういう騒がしいのが、フレンズらしい。

 

 

「ふふっ。あなたを見ていると、かばんさんを思い出します。」

 

「ヒトのフレンズ、だからか?」

 

「そうかもしれませんが、親しみやすいことは確かです。」

 

なんて優しいフレンズなのだ。

生足をチラチラ見ている俺と、親しくしてくれるなんて。

 

「マルカちゃん!」

「セルリアンが近づいています!」

 

「うそ、海にもいるの!?」

 

海にいるセルリアンなんて、サーバルたちでは戦うことはできない。

 

 

「ドルカちゃん!マルカちゃん!」

 

「うんっ!」

「お友だちを助けるよっ!」

 

「私も、ご協力しますよ。」

 

4人で船を押してくれれば、凄まじいスピードで陸に向かっていく。

 

「はやいはやーい!」

 

背後を見ても、セルリアンの姿は見えない。かなり遠くに、虹色に輝いている場所があるが、それこそがセルリアンが生まれる兆候なのかもしれない。

 

ともかく、俺たちは海の上では足手纏いだ。

 

「あわわわわわ」

 

「なんかきもち……」

 

「耐えるんだ!」

 

断続的な声を出していたり、口を押さえたり、2人とも明らかにヤバい顔をしている。

 

 

 

「とうちゃーく!」

 

船のあった場所まで無事に戻ってこれた。

 

「ありがとう、みんな!」

 

「サンキュ」

 

「どういたしましてー!」

 

「お友だちだからねっ!」

 

「海の底の山が噴火したのでしょうかね……」

 

「海底火山が近くにあるのか。」

 

「ええ。その山のおかげでフレンズになったんですよ、私たち。」

 

フレンズやセルリアンは、火山と関係しているのだろう。

 

「セルリアンはどうするんだ?」

 

「シャチさんたちが退治してくれるでしょう。」

 

「私たちは、セルリアンのことを一早く伝えることしかできませんから。」

 

エコーロケーションを得意とするイルカのフレンズが、伝達役を担ってるらしい。

 

 

「では、私たちは失礼します。」

 

「ばれーぼーる、今度やるからねっ!」

 

「かばん、見つかるといいねー!」

 

「また会いましょう! 皆さんもお気をつけて!」

 

振り返りながら、4人が海を泳いでいく。

 

「うん! 今度は、かばんちゃんと一緒に来るからねー!」

 

「またなー!」

 

「バイバーイ!」

 

手を振りながら、大声でしばしの別れを告げる。

 

 

さて、船酔いで苦しんでいる2人を介抱するか。

筋肉痛の身体に鞭打って、カラカルを背負った。

 

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