モノレールでの旅は続いている。
かばんさんがジャングル地方に住んでいるかもしれないと、先日アリツカゲラさんが言っていたものの、まだまだ道のりは遠い。そもそもジャングル地方はサバンナ地方の近くであって、俺たちはモノレールで反対方向に行ってしまったことに気づいた。
水の確保のために、池や湖が多い場所で一度降りた。
「きれいですねー」
「そうだな。」
「ここ、みずべちほーだよ!」
「来たことあるの?」
「たぶんー!」
ぴょんぴょんと飛び跳ねながら、サーバルが遠くに見える建物へ向かっていく。
「いつも通りね……」
「かばんさんのことは、いいのでしょうか……?」
「まあ、サーバルが何か思い出せるかもしれないしな。それに、ヒトのフレンズが見つかるかも、だろ?」
「はい!」
旅の目的として、サーバルが失った記憶を取り戻すことが増えた。もちろん旅を楽しむことや、ヒトのフレンズを探すことも忘れてはいない。
サーバルの向かった方向に歩いていく。
「サーバル。木に登って、どうかしたのー?」
「よっと……、なんとなくね!」
軽々と降りてきた。
サーバルって高いところが好きらしいから、木の上から建物の様子を見ていたのだろう。ほんの少し廃れているけれど、この建物は明らかにライブステージだ。ライトや音源装置は配線もきちんと繋がれているし、太陽電池もによる太陽光発電も可能としていそうだ。
「ここって、どんな建物なのでしょう?」
「ヒトのフレンズがいるかもしれない。」
「ほんと!?」
「ああ。ヒトが作った物で溢れている。」
「サーバルさん……? サーバルさんじゃないですか!」
「うーん、うーん」
眼鏡が似合っているネコ科のフレンズが近づいてきた。
サーバルやカラカルのような服ではなく、イルカのフレンズが着るような水色と白色のセーラー服だ。頭にはPの文字が3つ輝く水兵帽を被っていて、もはやコスプレのように見える。
「あっ、そうだった……」
表情が曇り、サーバルの両手をゆっくりと離す。
「あんた、サーバルと会ったことあるの?」
「ご、ごめんね?」
「いえ、お気になさらず。」
「あたしはカラカルで、こっちがイエイヌとイッキよ。」
「私はサーバル!」
「では、改めまして。私はマーゲイ。……なんと!PPPの専属マネージャーをやらせてもらっています!!……うへへ」
すっごーい強調してきた。
しかし、PPPなるものを俺は知らない。
「サーバルさん、まさかPPPのこともお忘れに!?」
「う、うん。」
あのサーバルが、テンションで押されている。
「ほ、他の皆さんは?」
お互いに顔を見合わせ、首を傾げ合う。
「ごめん。知らない。」
「そ、そんなぁ……私の力が至らないばかりに……」
「あんた、だいじょうぶ?」
「あの、教えていただければ、」
「ではお教えしましょう!!」
落ち込んでしまったフレンズを慰めさめようとしたら、顔を勢いよく上げた。
「「「あ、はい」」」
「Penguins Performance Project、その頭文字を取ってPPP。このジャパリパークで活動する、ペンギンのフレンズの皆さんで構成される、5人組アイドルユニット!それこそがPPPです!」
すっごーい早口である。
アイドルが何かを、カラカルたちは知らない。
「そしてそして!PPPのメンバーをご紹介し………はっ!この香りは!みなさん!!」
涎を垂らしながら駆けて行ったマーゲイを追いかける。
マネージャー自身が一番のファンであるらしい。
「相変わらずね……って、サーバルじゃない!?」
「ほんとだ~」
「久しぶりだぜ!」
サーバルは、ペンギンのフレンズたちに囲まれる。
レオタードやパーカーを着ていて、それぞれ個性溢れる可愛さがグッとくる。
「ご、ごめんね。」
「やはり、覚えていないそうです……」
「なるほど。」
「聞いていた通りですね。」
「あの……どういうことでしょうか?」
PPPのメンバーが各自顔を見合わせて、意を決したようだ。
「サーバルは、あるセルリアンに食べられてしまったらしいの。」
「えー、そうなのー!」
「あんたのことでしょうが……」
どこまでもサーバルらしい。
PPPのメンバーやマーゲイも微笑んでいる。
「そういえば、食べられたらどうなるんだ?」
「やる気なくなったり~、意識失っちゃったり~、おなかへったり~」
「ほかには記憶喪失だぜ。」
「博士たちが言うには、『輝き』を奪うそうです。」
断片的な情報から考えてみる。
何かを襲う理由はその『輝き』を求めているからなのだろう。フレンズだけでなく、先日は遊具を襲っていたことから人工物も持っていそうだ。撃退される危険性のあるフレンズよりも、安全に『輝き』を得ることができることに、本能的に気づいたのかもしれない。
そして、その姿をコピーしている。
遊具を襲ってきた小さな個体が次第に強力な個体となって、カメラや懐中電灯を模したのだろう。
「記憶を取り戻す方法はないのかしら?」
「そこまでは……」
「博士やかばんさんなら、知っているかもしれませんが……」
「ジャパリまん食べながら~ライブ見たら思い出せるかもよ~」
「ナイスアイディアです!」
「なになに! ライブってどんなことするの!」
「歌って踊るんだ。」
「次の、ライブは……」
「そうなんだよなぁ……」
「ね~、おなかすいたよね~」
メンバーの顔が暗くなっていく。
1人はマイペースに空腹アピールである。
「何かあったのか?」
「ええ。次のライブでは、新曲を披露しようってことになったんだけどね。」
「その、なんだ……」
「ちょっと、自信が持てなくて……」
「サーバルさんたちにも、見てもらいましょうか?」
「そうですね。では、こちらへ。」
案内された先は、大きな鏡のある楽屋だ。
なかなか本格的な練習を行っているらしい。
各自、準備運動をしている。
「マーゲイ、よろしくね。」
「はい!」
「「「「「『アラウンドラウンド』」」」」」
音楽が鳴り響く。
リズムに乗った5人の息の合ったダンスが披露される。
「へぇー、やるじゃない!」
「これがライブなんですねー」
歌も申し分なく上手だ。
カラカルやイエイヌも、歌やダンスに感動している。
「ストーップ!」
その声で、音楽が止まる。
「あれあれー?どうかしたの?」
「ど、どう思った?」
「いや、すごかったわよ?」
「そうですよね。」
「ああ。歌も動きも、かなり安定している。だがしかし!」
「もしかして、イッキさん。」
マーゲイには、俺がアイドル好きであることを気づかれたようだ。そして俺が言いたいことも第一にわかってくれるだろう。
「俺はさっきの曲しか知らない。だがあえて言おう、やっぱりPPPはすごいと言われる!」
「そうなんです! だから熱狂的ファンとしてはもっと革新的なことをしてほしいといいますか。」
「なるほどね。」
「何かが足りないと思っていたのだが、そういうことか。」
さっきの完成度から、何度もライブをしてきたのだろう。サーバルと会った時にはすでにデビューしていたようだし。
「それって どういうこと~」
「ジャパリまんに飽きるということだ。」
「そっ そんな~」
そんな絶望した顔を、マイペースキャラに見せられるとは思わなかった。
「まあ、物の例えだ。」
「ど、どうすればいいのかしら。」
「個性、だな。」
「個性……、個性ですよ!」
「アイドルはそれぞれの個性を持ってこそなんだ!マーゲイ!」
「イッキさん!わかってますね!」
「なんかイッキのテンション高くない?」
「そうですねー、いつもよりずっと生き生きとしているというか。」
「ソロで歌ったことは、あるか?」
「いえ、一度も……」
「だけど、みんなで揃ってPPPだろ。」
「そうですね、わたしだけじゃ……」
「それは、緊張するな。」
「でも~ ジャパリまん飽きるなんてやだ~」
あまり反応は良くはない。
決断は、みんなのリーダーに委ねられた。
「やるわ!」
「「「「え?」」」」
「みんなの良さを、私はもっと引き出したい。もっと魅せたい。だから、やってみましょう!」
そう、言いきった。
「がんばりますね!」
「プリンセスが、そう言うのならな。」
「よっしゃ、ロックに決めるぜ!」
「ふぁんふぁろ~」
そのジャパリまんは、いつ咥えたのだろう。
ともかく、それぞれの持ち味を一度確認し直せば、PPP全員での歌にも良い影響があるはずだ。悪影響を及ぼすかもしれないが、息の合ったダンスのできるPPPの絆があれば大丈夫だろう。
「イッキさんも、ぜひ手伝ってくれませんか!」
「ああ! 俺の培ってきた知識を伝えてやろう。」
アイドル好きとしての友情がここに芽生えた。
マーゲイのPPPへの愛には、まだまだ敵わないがな。
「でも、ヒトのフレンズのことはどうするのかしら?」
確かに、数日はここに滞在することになるだろう。
サーバルに視線を向ける。
「いいよいいよ! かばんちゃんみたいに、フレンズの力になりたいから! それに、なにか思い出せるかもしれないもん!」
「まあ、それならいいわよ。」
「もしかしたら、ライブにヒトのフレンズさんも来てくれるかもしれません。もちろん、PPPの皆さんのお力になれるのですから、私も構いませんよ。」
「よしっ、決まったな。じゃあ、基本的に1人ずつ付くか。」
5曲も作る必要があるからだ。
俺やマーゲイがフォローに回ればいいだろう。
「えっと、それってつまり?」
「もしかして……」
「カラカルも、イエイヌも、手伝うんだよ。」
「「えっ、えー!!」」
「楽曲はあるか?」
時間もないし、音源を作る技術もない。
「ええ。このライブステージに残されているわ。」
「オッケー」
ダンスよりは、歌メインになるだろう。
歌詞をPPPのメンバーたちらしく作り変えればいい。
「それじゃあ、みんなで、がんばろーっ!」
「「「「「おーーっ!」」」」」
「お~」
「ほ、ほんとうにやるの?」
「私が力になれるでしょうか……」
適材適所だ。
****
喧騒は大きくなっている。
ここまで多くのフレンズを、一度に見たのは初めてだ。
「うぅ、なんだかあたしまで緊張してきたわ。」
「すっごーい数のフレンズが集まっているね!」
「鳥のフレンズに至っては飛んでいるしな。」
「でも、ヒトのフレンズさんは見当たらないみたいですね。」
「だから、俺の出番だよな。」
「はい、よろしくお願いします!」
「じゃあ、行ってくる。」
「がんばってくださいね!」
「がんばりなさいよ!」
「がんばってねー!」
激励を背中に受ければ、膝の震えは止まった。
水色のパーカーを腕捲りする。
橙色の羽がついた、古ぼけた白のキャップを被り直す。
これだけのフレンズの前に、また立つことになるとは。
「「おっまたせしましたー!」」
「ライブの進行役を務めます、マーゲイです! 本日はー、」
「俺、参上!」
「なんとヒトのフレンズが来てくれました!」
さて、反応は上々。
顔を見合わせて、かばんさん以外のヒトのフレンズがいることに驚いてくれている。ヒトを探しているヒトが、逆に来てくれるかもしれない。ヒトのフレンズの存在をその目で焼きつけてくれる。
まあ、今はライブを満喫しよう。
「最初の曲は、みんなお待ちかねの新曲だ!」
「『1曲目、行くわよ!』」
マーゲイの得意な声真似で告げた瞬間、PPPが登場する。
「「「「「『アラウンドラウンド!!』」」」」」
♪
♪
♪
まさにオープニングに相応しい曲だ。
マーゲイ曰く、ソロ楽曲を作ってからさらに良くなったらしい。
「「「きゃーーー」」」「「「ペぱーぷー!!」」」
「PPPはこの方がいないと始まりません!」
「次の曲は、プリンセスのソロ楽曲だ!」
会場に、衝撃が走る。
プリンセスだけがライブ会場の中央へ歩いていく。
「聴いてください、『夢みるプリンセス』」
流れ始めた音楽は、いつもと違う曲調。
綺麗な歌声で、観客はそのリズムに乗せられる。
「『やっぱり私がいないとね』そんな勝ち気で努力家なプリンセスさん。まさに私のお姫様……にゃはー!」「鼻血拭けし!」
メンバーはすれ違いざまにタッチして、中央を入れ替わる。その合間を、俺たちで繋ぐのだ。
「『Rockin’ Hoppin’ Jumpin’』!ロックにいくぜー!」
「もっと、上を目指していこう。『200キロの旅』」
「『Hello!アイドル』!一生懸命がんばります!」
「『やくそくのうた』うたうよ~」
イワビー、コウテイ、ジェーン、フルルが続いていく。
サーバルが参戦することでさらに明るく激しくなったロック、俺がイロハを伝えることでさらにあざとくなったアイドルソング、カラカルの旅の経験を取り入れることでさらにメッセージ性が増したJ-POP、イエイヌがマイペースさをフォローすることでさらに奥ゆかしくなったバラード。
『ドレミファロンド』、懐かしいな。
「ラストを飾るのは、この曲!」
「『ようこそジャパリパークへ』!」
「さあ、フレンズみんなで、歌うわよー!」
歓声が上がる。
会場のテンションは最高潮だ。
「うへへ……これです、これがいいんですよ……」
マーゲイに至っては、涎を垂らしながら喜んでいる。
「ほら、いっくよー!」
「ちょっとーっ!」
「う、うたえませんよ~」
サーバルが2人とも引っ張って連れてきてくれた。
その笑顔で、なにかしら思い出したことはわかる。
音楽が流れ始めれば、全員がリズムに乗り始めた。
「なんだろう、この曲知ってる……?」
「そうですね。なんだか懐かしいような……」
「せーの!」
「「「「「「Welcome to ようこそジャパリパーク♪」」」」」」
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後書き。(長文)
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この小説や原作2期が嫌いな人がいるとしても、少しでも読んだ方がけものフレンズ自体を好きなままでいてくれたら嬉しい。なんて上から目線なことは言いません。
どこか否定的な見方ばかりになってきた自分自身がけものフレンズ自体を好きなままでいたかった。結局は自己満足ですね。
だから今日も、けものフレンズを見ながら筆を執る。1期リスペクトで2期を再構成。カラカルとイエイヌが生き生きとさせやすいのは2期のおかげなのは確か。
最後まで読んでくれるなんてやさしーフレンズだね!