けものフレンズ2の、にじそーさくだよ!   作:ヒラメもち

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第7話 この雨だって

地図によると、砂漠地方の隣に目的地であるジャングル地方があるらしい。ここは島なのだが様々な気候帯が地域ごとがあって、それぞれの地方名がどの気候帯かを表している。

 

砂漠地方を一気に抜けるためには準備が必要なのだ。太陽で熱される車両なんて乗りたくはないし、夕方から朝にかけて移動することが最善だろう。つまり、寒さを凌げる物と水の確保が今回の目的である。

 

 

「ぼうけん!ぼうけーん!」

 

サーバルたちは今日も新たな地方で楽しそうである。

おしくらまんじゅう、でもいいか……うへへ

 

「イッキ、もう少し速く歩けないの?」

 

「わ、悪い。考えごとをしていた。」

 

地図に大きく描かれている湖畔を目指して、俺たちは歩いている。

 

「どんなこと、考えていたんですか?」

 

純粋で優しい眼差しがまぶしい。

 

「いや、砂漠で寒さをどうしようかなって。」

 

「さばくちほーって寒いのかしら?」

 

「暑くて寒い。」

 

「どういうことなのでしょう?」

 

「日陰がほとんどないから昼は暑いのだけれど……、そうだなぁ、夜は冷えるのが早い。」

 

厳密には、温かい空気が上空へ逃げていってしまうことを防ぐものが少ない。

 

「なるほどね。」

「なるほどーぉ!」

 

ヒトは寒さにも暑さにも弱い。イエイヌも砂漠の暑さ寒さは堪えるだろう。夜行性なカラカルやサーバルも、直射日光や昼の暑さはあまり得意ではないだろう。

 

慣れない気候で活動するには、それ相応の装備が必要だ。

そう、学んだ。

 

―――学んだ?

 

「なにかくるよ!」

 

「なにこのスピード!」

 

「ビースト、でしょうか……?」

 

 

大きな耳でサーバルやカラカルが察知し、次にイエイヌもそちらを向いて、そして俺がようやく反応できる。もし俺だけだったのなら、気づくこともなく狩られているだろう。

 

 

「ヴェ!?」

両腕を掴まれて、俺は投げ飛ばされた。

たぶんみんな軽やかに退避していることだろう。

 

 

「て、敵か……?」

 

「たぶん、ちがうみたいよ。」

 

カラカルがそう告げて、俺は安堵の息をついた。

 

「サンキュ」

 

手を握り返して立ち上がる。

 

 

「あら、ごめんなさい。」

 

服装はサーバルによく似たシャツとミニスカートだ。

しなやかな美脚がグッとくる。

 

 

「ちょっと! 危なかったんだけど?」

 

「あなた。誰、ですか?」

 

カラカルやイエイヌが、ムッとしている。

軽々と避けたよね、2人とも。

 

「私? チーターよ。お姉様の次に、地上最速なの。」

 

長い髪をふぁさっとする仕草は、様になっている。

 

 

「そうそう、悪かったわね。驚かせたみたいで。」

 

「いや、気にしてない。危険察知のいい練習になったし。」

 

「そう?」

 

セルリアンやビーストじゃなかったのだから、問題ない。

カラカルやイエイヌの、そのやれやれ顔はなんなのだろう。

 

 

「すっごーい、速かったね!」

 

「あ、ありがとう……」

 

チーターってば、純粋に褒められると弱いタイプだ。

背後を見て、彼女は溜息をついた。

 

「ああもう、追いつかれちゃったじゃない。」

 

「待たせたな!」

 

自分自身の角を模した槍を片手に、走ってきた。

槍に結ばれた青いリボンが風にたなびいている。

 

「待ってないわよ!?」

 

白シャツとジャージは、陸上選手を思わせる。

なんともバランスよく筋肉の付いた足だ。

 

 

「プロングホーンさま~」

 

「おお、いい走りだな!」

 

もう1人、走ってきた。

 

「はぁはぁ……」

 

半袖シャツとスパッツ、鳥のフレンズなのに走る方が得意そうだ。

 

「む? キミたちは、チーターの走り仲間かな?」

 

「初対面よ。」

 

「そうか。プロングホーンのプホンだよ。この娘はグレーターロードランナーだ。」

 

「プロングホーン様の舎弟をやらせてもらってる。ロードランナーでいい。」

 

「私はサーバル!」

「カラカルよ。」

「イエイヌです。」

 

「ヒトの、イッキだ。」

 

「キミたちも、走るのが好きなフレンズか!?」

 

思ってたのと違う反応をされた。

 

「まあ、人並み。フレンズ並みには。」

 

「そうかそうか! チーターと一緒に『ホーンチェイサー』に入らないか?」

「なんでもう決まってるのよ!?」

 

「お前らっ、プロングホーン様直々のスカウトなんだぞ!」

「どういう意味!?」

 

「ごめん、角ないから。」

「そこ気にするの!?」

 

「細かいことは気にするな!」

 

「なんだかたのしいフレンズだね!」

 

 

「もうっ、あんたたちねーー!!」

 

チーターの大声が、平原に響き渡った。

ツッコミ役はもう限界らしい。

 

 

「こほん。……それで?」

 

あっ、なかったことにする気だ。

 

「うむ。一緒に走ろう。」

 

「まあ、待ちなさいよ。」

 

「そうですね。どうして、チーターさんを無理にでも?」

 

カラカルやイエイヌが割って入る。

 

「そうだな。共に地上最速を目指すフレンズを探したいんだ。」

 

「あの、あたしじゃ、ダメなんですか……?」

 

「いや、慕ってくれるロードランナーには感謝している。でも、この、ぽっかりと空いたような、そんな……」

 

「プロングホーン様……」

 

表情が曇る。

サーバルと似た事情なのだろうか。

 

「……いいわよ。でも1度だけだからね!」

 

「いいのか? 長距離走なんだぞ。」

 

「さ、先に言っておくけど。地上最速流には反するから……、万が一負けても仕方がないんだからね。」

 

「そうか。ありがとう。」

 

「か、かんちが」

「ねぇねぇ! わたしたちも走ろうよ!」

 

「へっ、だが、お前らが追いつけるわけねぇだろぅ?」

 

「だいじょうぶ! 狩りごっこで鍛えてるから!」

 

確かに、狩りごっこも走るからな。

 

「どうする……?」

「どうしますか……?」

 

俺に判断を任せるのか。

 

「じゃあ、あの湖畔まででどうだ。俺たちはあそこを目指しているんだ。」

 

「なら、共に走ろうぞ!」

「まっけないぞーー!」

「地上最速の力見せてあげる!」

 

スタートダッシュでサーバルたちが飛び出した。一番速いのはやはりチーターだが、どこまで体力が続くかだろう。ていうか、サーバルが互角の勝負をみせるのは狩りごっこの恩恵なのだろうか。

 

鞄の紐を短くし、靴紐を結ぶ。

 

「待ってください~、プロングホーンさま~!」

 

「私たちも行きましょう。」

 

「イッキ、無理はしないで来なさいね。」

 

「おう。」

 

俺たちも走り始める。

 

やはり最高速度は、ヒトのフレンズはずっと劣る。

サーバルたちの姿なんて、もはや見えない。

 

 

顔の汗を、パーカーの袖で拭く。

 

 

渓谷に入れば、イエイヌやロードランナーの姿が見えた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

「なっ、追いついてきたのか!?」

 

さすがに追い越すのはマズかったかもしれない。

もし限界を超えて倒れでもしたら困る。

 

あまり長距離を走るフレンズではないのだから。

 

 

「イッキも、速い、のね……」

 

「まあな……」

 

カラカルに並んでも、リズムのいい走りを続ける。

 

前にいたチーターの姿が見えなくなった。

下に落ちていったともいえる。

 

「あたしの、勝ちね!」

 

カラカルが湖に飛びこんだ。

 

この真下は、ほどよい深さなのだろう。

すでにサーバルたちが水浴びをしている。

 

「やっと……だぜぇぃ……」

 

「はぁ…はぁ……」

 

イエイヌたちがクールダウンしながらやってくる。

 

「おう、お疲れ。」

 

「お前ら、や、やるじゃねぇか。」

 

走ると気持ちいいのは、確かだな。

 

 

湖畔へ斜面をざざざーっと降りる。

ロードランナーは、ふわふわと飛んで降りた。

 

 

勝敗も気にせずに、美少女たちが水浴びしている。

 

「どうか…しました……か?」

 

「建物を見てくる。ここで休んでいてくれ。」

 

「そうさせてもらいます。」

 

 

高床式の、プレハブ倉庫だ。

錆びれている階段をおそるおそる登る。

 

扉を、ゆっくり開けた。

 

 

部屋の中央に歩き

「ア゛ア゛ア゛ア゛!?」

「ヴェアアアアーー!?」

 

「な、なんだお前!?」

 

「お、おちつけ、俺はセルリアンじゃない!?」

 

「見たらわかる……。ヒト…なのか。しかし、かばんがいるだろうに。」

 

ブツブツと何かを言っている。

フード付きパーカーワンピースで、首元にはピンク色のリボンを巻いている。

 

一体何のフレンズだろうか。

 

『セルリアンよ!!』

 

その声で部屋から飛び出す。

飛び出す時、咄嗟に黒い筒を背負った。

 

「でけぇ……」

 

今まで見てきたセルリアンよりはるかに大きい。

4足歩行で黒く淀んでいるその姿は、何かを模したとは思えない。

 

「こいつ、どうすれば!」

 

「かたすぎるよー!」

 

サーバルやカラカルが自慢の爪で足を攻撃しているが、あまり効果はないようだ。

 

 

 

「へしを探せ!」

 

いつのまにか隣にいたフードのフレンズが、そう叫ぶ。

 

「ロードランナー!」

 

「はい、プロングホーン様!」

 

ふわりと浮かび上がり、そのへしを探す。

 

「背中です!」

 

背中と言っても、4足歩行のセルリアンだ。

周りに木もないし、サーバルのジャンプ力でも届かないだろう。

 

 

「引きつけるから。あんた、なんとかできない!?」

 

「でも、あたし、あんまり飛びながらだと……」

 

 

「あのタイプなら、水が効くはずだ!」

 

「イエイヌ!」

 

「はい!」

 

パーカーのフレンズから受け取ったバケツを投げ渡す。

セルリアンの動きはそこまで速くはない。

 

イエイヌが湖で汲んだ水をセルリアンの足にかければ、その部分が石のように固まる。

 

「うみゃあ!」

「ここなら!」

 

その部分になら効果があることがわかったサーバルたちが、攻撃を集中する。

 

 

 

「ちっ……」

引き金を引いたが、弾は出ない。

老朽化しているのだろう。

 

 

「お前、使い方がわかるのか!?」

 

「なんとなくだけどな!」

 

俺は階段を駆け上がる。

 

暴れながら、横転したトラックに向かっている。たぶん、その『輝き』を求めているのだろう。この巨大なセルリアンがそれをコピーしたとなると、そう簡単には止めることはできない。

 

 

 

紫色の水晶、へしが見えた。

セルリアンを止めようと、フレンズが必死になっている。

 

 

 

身体が熱くなり、力が溢れてくる。

 

「ヒトの力、みせてやる」

 

引き金を、この手で引く。

轟音とともに俺に反動がきた。

 

 

 

 

 

 

°

°

°

°

 

 

「なんとか持ち堪えるんだ!」

 

黒い粒子が空から降っている。

まるで、雨のようだ。

 

「まつんだ、君たち!?」

 

セルリアンたちに彼女たちは勇猛果敢に立ち向かっていく。

先導しているのはサーバルに似ている。

 

 

「はやく倒れろ!」

 

彼女たちに当たらないように、援護することしかできない。

 

 

「ちくしょう!」

 

膝をついた少女のもとへ、俺は駆けた。

 

 

 

「にげて! にげてよ!」

 

「大丈夫!」

 

フレンズには笑顔でいてほしいから

 

 

 

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