けものフレンズ2の、にじそーさくだよ!   作:ヒラメもち

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第9話 想い、そして運命

ゴリラたちはもっとお互いのことをよく知ろうと決めたようだ。元の動物としての種族は別々であって決して仲間となることはなかっただろう。サンドスターによってフレンズとなった彼女たちは『知る』という欲求を得ているのかもしれない。

 

 

彼女たちに別れを告げ、かばんさんが運転するバスに乗り込んだ。サーバルが探していたというヒトのフレンズには聞きたいことがたくさんある。数年間はジャパリパークで暮らしてきたのだし、島のことを一番知っている人物かもしれない。

 

「バスだー!」

 

「数年ぶりだよね。」

 

バスの内装に頬ずりしているサーバルへ、前を向いたまま告げる。

 

 

「この乗り物、だいじょうぶなの?」

 

あまり舗装されていない道ということもあるけれど、それでも振動や雑音はかなり大きい。モノレールの車両も古びてはいたけれど、このバスはただの老朽化だけではないように思える。

 

「騙し騙しなのは確かかな。」

 

「ねぇねぇ、かばんちゃん! どこに向かっているの?」

 

「今住んでいるところだよ。見えてきた!」

 

『開けるよ』

 

腕時計型のラッキービーストがそう告げれば、門が自動で開いていく。

 

「おおーっ!」

 

「なにあれ!?」

 

「……間に合わなくないか?」

 

「だね…。」

 

『止まるよ』

 

ガクンと、各自バスの内装に頭をぶつけた。

覚悟していたものとは異なる衝撃だ。

 

「いったーい……」

 

「ボスぅ、言うの遅いよぉ」

 

『ゴゴメンあわわわわ』

 

さらに急発進。

2度目の衝撃をもろに受けた。

 

「ちょっと~」

 

「あはは……ラッキーさんも舞い上がっているみたいだね。」

 

『……』

 

図星らしい。

サーバルとラッキービーストも、久しぶりの再会なのだ。

 

 

「それで、ここが?」

 

「うん、ぼくのおうち。」

 

明らかに人工的な建物であって、研究施設のようにも見える。古ぼけた様子はなく、壁の塗装も剥がれ落ちてはいない。敷地内には見覚えのある野菜の畑があって、倉庫がいくつかある。

 

 

イエイヌはクンクンと臭いを嗅いでいたが、直にやめた。

 

「イエイヌ、行くぞ。」

 

「あっ、はい……」

 

 

かばんさんが中に案内してくれる。

建物の中も白を基調としていて近未来的なデザインだ。

 

 

テーブルを挟んでソファに座った。

サーバルやカラカルは、フカフカ~って喜んでいる。

 

 

 

「博士さん、助手さん。」

 

白色と茶色、それぞれを基調とする鳥のフレンズが部屋に入ってきた。

 

「初対面のフレンズもいるのですね。アフリカオオコノハズクの、博士です。」

 

「どうも。助手の、ワシミミズクです。」

 

「あたしはカラカルよ。」

 

「イエイヌ、です。」

 

「イッキだ。」

 

顎に手を当てて、俺を見つめてくる。

たしか、あのパーカーのフレンズも不思議そうにしていたな。

 

 

「ふむ……。それでサーバル、少しはかしこくなりましたか?」

 

「うん! えっとねー、ばれーぼーる、できるようになったもん!」

 

「ダメですね、相変わらずなのです。」

「相変わらず、ですね。」

 

「なんでぇー!?」

 

このやり取りが、お互いに懐かしそうだ。

再び、扉が開く音がした。

 

 

「我々は騒がしいのは苦手と言ったはず……おや。」

 

「せ、セルリアン!?」

 

お盆を運んできた青いセルリアン2匹とともに、青を基調としたフクロウのフレンズが部屋に入ってくる。セルリアンたちは襲ってくる気配はないし、某RPGのスライムのようにマスコットキャラクターっぽい。

 

イエイヌやカラカルは、警戒したままだ。

 

「まあ、お茶でも飲んで落ち着くのです。」

 

「あんたが言うの!?………あっ、美味しいわ。」

 

「あのヒトたちも、お茶を飲んで落ち着いていました……」

 

紅茶にあまり詳しくはないが、美味しいということは俺にもわかる。

 

 

「……あなたは?」

 

「イッキだ。」

 

「……そうですか。私のことは、セルミミズクとでも、セミとでも呼ぶのです。」

 

「それで、なんでセルリアンがここに……?」

 

セルリアンたちも、お茶菓子を美味しそうに食べ……吸収している。

 

「美味しい物を食べてこその人生なのです。」

「なのです。」

「なのです。」

 

「どういう理屈だ……」

 

まるで意味が分からんぞ!?

 

 

「ふわぁ。なんだか、お腹いっぱいで眠くなってちゃった~」

 

「あたしも、なんだかね。」

 

おやつの時間の後に、お昼寝。

カフェインを飲んでも寝れるんだな、夜行性組。

 

 

「我々も一休みするのです。」

「休息は大事なのです、我々はかしこいので。」

「省エネも、『保存』なのですよ。」

 

博士たちが、バタバタとソファに顔をうずめていく。

 

 

 

「おやすみ~」

「もぉー、サーバルってば~……」

 

サーバルやカラカルも、互いに寄りかかるように眠る。

 

 

 

「サーバルちゃんと、仲が良いんだね。」

 

「トラブルメーカーの保護者、らしいですよ。」

 

「あ、あの……。」

 

「なにかな?」

 

「ほ、ほかに、ヒトのフレンズを知りませんか?」

 

「……ぼくは、会ったことないよ。」

 

「そう、ですか……。」

 

「うん。たぶん、ジャパリパークにはもうヒトはいない。……ぼくも、厳密にはヒトのフレンズだからね。」

 

「……なら、ジャパリパークの外には?」

 

「わからない、としか言えない。」

 

「どういう、ことですか?」

 

「合わない環境は、フレンズの寿命を縮める。あの火山がもたらすサンドスターがない場所では、生きられない可能性が高い。………ぼくたちフレンズも、そしてセルリアンも。あまり遠くには、ね。」

 

窓から見える巨大な虹色の結晶を、俺たちは見る。

 

「……少し、風に当たってきます。」

 

 

 

ヒト、いや人に会える確率は限りなく低いことを知らされたのだ。ここまで旅をしてきた目的も、あのおうちを守り続けてきた使命も、イエイヌはもう一度人に会うことを目指していたからだ。

 

 

俺たちも、ソファから立ち上がる。

 

「ぼくたちも、場所を変えていいかな?」

 

「いいですよ。」

 

部屋の明かりを消して、スヤスヤ眠るカラカルたちを寝かせておく。

 

 

リビングと呼べる場所を一度出て、別棟までやってきた。

この研究室には多くの本や資料、倉庫には機械部品が集められているようだ。

 

 

「いろいろ調べているんですね。」

 

「まだまだ分からないことが多いんだけどね。」

 

ジャパリパークの地図上に×印で記されているのは、たぶん黒セルリアンが出現した場所だ。セルリウムやサンドスターと、火山が大きく関係しているのならば、もっと山頂寄りに分布してもいい気がする。

 

 

「数年前にね、ぼくたちはフィルターを張り直したんだ。」

 

「フィルター?」

 

「噴火口から出るセルリウムをサンドスターに変換する力があってね。四神のフレンズのおかげらしいんだけど。」

 

「俺たちは先日、黒いセルリアンと戦闘……、戦いました。」

 

「た、倒せたの?」

 

「へしがあったので、なんとか。」

 

「そうか。まだ『コピー』するまでには至っていなかったんだね。」

 

こういう会話をしていると、かばんさんの姿が誰かと重なる気がしてきた。

 

 

「たぶん、噴火口以外からセルリウムが漏れ出しているんだ。」

 

かばんさんが地図の、2つの範囲をなぞりながら示す。

高山地帯と、海底火山、か。

 

イルカのフレンズたちが生まれたと言っていた海底火山から、セルリアンも生まれているのだろう。

 

 

「水に弱いセルリアンが、固まりきる前に『コピー』しているんですかね。海の底に沈んでいる物とかを使って。」

 

「海の底に、沈んでいる……?」

 

陸に上がったセルリアンが、さらに重ねて『コピー』している可能性もある。

 

 

 

「現状、漏れ出すセルリウムを止める方法はない、か。」

 

かばんさんは、小さく頷いた。

 

 

「……ついてきて。」

 

なぜか、倉庫にはピカピカの丸い物が多い気がした。

 

 

倉庫に停めてあるジャパリバスを、工具を使って修理を始める。ラッキービーストが指示し、そこを適切に直していくだけでいい。もちろん、俺もかばんさんと同じように道具を器用に使いこなしていく。

 

ある時は、別の乗り物の部品と取り換える。

 

「これ、もう他の乗り物に替えてもいいくらいでは……」

 

あちこちガタがきているので、そう呟いてしまった。

 

「このバスがいいんだよ、ぼくたちはね。」

 

「ああ、すみません。」

 

「ううん、気にしないで。」

 

「もしかして、セルリアンに?」

 

「うん。このバスを、『コピー』したセルリアンがいたんだ。」

 

「これだけ大きいセルリアンだと、苦労しそうですね。」

 

 

首を振る。

それだけじゃないと。

 

 

「たぶんなんだけどね。人の思いが籠められている物ほど、つよい『輝き』を持っているんだと思うんだ。このバスの『輝き』を得たセルリアンはとても強くて、その時にサーバルちゃんが………」

 

「それは……」

 

作業をしていて汚れた手のひらを、俺は見つめた。

 

 

仮説が正しければ、人間は引き金になりうるのだ。

 

 

「ぼくのせいなのかなってね。迷惑なのかなって。」

 

『かばん、そんなことないよ』

 

「ラッキーさんも、博士たちも、慰めてくれるんだけどね。」

 

 

俺たちと関わることで、大切な友達を危険な目に遭わせることになる。

 

 

 

「サーバルちゃんと、また会えたとしても…って思っちゃったんだ」

 

なんて、寂しい笑顔なのだろう。

 

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