その日はいつもより風が騒がしい日だった。
土の香りを乗せた風が舞うモンゾーラ王国に、一通の知らせが届いた。
「魔王の猛攻激しくムーンブルク陥落したり。」
その知らせに緑の田畑の中に白亜の城壁を誇るモンゾーラ城は恐怖と疑念に包まれていた。
「おい聞いたか、ブレイブ。」
モンゾーラ城の見張り台に一人の青年が駆け込み、見張り台の中の青年に話しかけてきた。
「ムーンブルクの話か?」
「そうだ、ついに落ちたらしい。」
「ここも大丈夫だろうか?」
「まぁここには、創造神シドー様の作りし恵みの大樹があるんだ、どんな魔物だって、大樹様がお守りしてくれるさ。」
「恵みの大樹ねぇ。」
ブレイブと呼ばれた青年は顔を見上げた。
そこには、モンゾーラ城の中庭を突き抜け、モンゾーラ上の天井よりも高くそびえたつ大樹がモンゾーラ城を優しく見下ろしていた。
ブレイブは見上げていた目線を西の海の方へ戻すと、小さな影が海の上に見えた。
「すまない、望遠鏡を取ってもらえないか?」
「ああ、ほいよ。」
ブレイブは手渡された望遠鏡を覗く、そこには木で出来た大きな帆船が映った。
「見慣れない船――、あの旗は魔王軍か!一隻だけじゃない、三隻もだ!!」
ブレイブは大きく叫んだ。
彼の望遠鏡には、まがまがしい魔物が描かれた紫色の大きな旗を掲げ、船上に魔物達を敷き詰めた船が三隻映し出されていた。
「どうしたブレイブ?」
「敵襲だ!魔王軍三隻、西の船着き場の方だ!!」
「なんだって!」
ブレイブは、見張り台に取り付けられた鐘を大きく鳴り響かせた。
カーン、カーン、カーン。
モンゾーラ城の内部が急にあわただしくなり始める。
見張り台に居た二人は、急いでモンゾーラ城の城内へ駆け込むと一際立派な鎧を着こんだ男が見張り台の入り口に立っていた。
「どうした!?」
「隊長、敵襲です!敵は魔王軍三隻、西の海から船着き場へ上陸する模様です!」
「報告御苦労!お前たちは装備を整えてこい!」
「了解!」
二人は力強く敬礼をすると、兵士詰め所へ駆け込んだ。
「何があった!?」
詰め所では、他の兵士たちが二人を取り囲んだ。
「魔王軍だ!西の海からやってきやがった。俺達は迎え撃つぞ!」
ブレイブの横で、一緒に降りてきた青年が声をあげた。
「魔王軍だって!」
それを聞くな否や、ブレイブたちを取り囲んでいた兵士たちは一目散に装備を整え始めた。
ブレイブも自身のロッカーから支給品の銅の剣と松明を腰に下げ革の鎧を着た。
そこへ詰め所に隊長が入ってくる。
「準備できたなお前たち!それでは作戦内容を説明する!敵は西の海から侵入してきた魔王軍三隻、乗っている魔物の数は推定30匹と思われる、種類はおおきづちやマンドリルが確認されている。我々は偵察隊として真っ先に船着き場へ進軍、後続との伝達ができ次第、敵背後から後続の味方と挟撃を計る。特にマンドリルは強敵だ、絶対に一人では戦うなよ。」
そう言って隊長は兵士たちを見回した。
「それでは、出撃する!」
その声と共に隊長を先頭にブレイブを含む兵士たちはモンゾーラ城を出た。