あの不思議な夢を見てから幾日か経った。あの日からはあのような夢も見なかった。"白いの"と言うのが少し引っかかるが、抽象的すぎてわからない。また、あの夢を見ればなにかわかるかもしれないが、あまり見たくないと言う気持ちもある。夢だと思えている今も、その圧が本当にそこにあるように感じ取れた、その感覚を覚えている。
そんなことを考えながら、自宅へと向かう。今は午後4時過ぎくらい。学校を終え、特に寄り道もすることもなかった。そう思っていた。
目の前に、小さい犬がいた。毛色は黒ベースに、手や尻尾の先が少し灰色がかった毛をしている。そして、額に傷のようなものが付いていた。毛の色にしても傷にしても、普通とは違った。
興味を惹かれ、足を止めて観察していた。
その犬は、イッセーの方を一瞥すると、ゆっくりと歩き出した。すぐそこにあった路地裏に向かっていった。
路地裏に入り少しすると、犬は立ち止まった。そしてイッセーの方に振り返り、じっと見つめて来る。
「…付いて来いってか…?」
犬の入っていった路地裏に向けて歩き出した。犬は路地裏に入ったところを確認すると、路地裏の奥に向かって歩き出した。
見失わないよう、犬の後ろをついていくと、ある店を見つけた。
[BAR]と書いてあった。
その店をボーッと眺めていた。そして思い出したかのように、辺りを見渡すと、先ほどの黒い犬はいなくなっていた。
犬を探しあたりを見回していると、BARの扉が開き一人の男が出てきた。
「君か。刃が呼んだのは。」
「…えっと、俺ですか?」
「そう、君だ。個性が呼んだんだ。」
男はそういうと、先程居た黒い犬を呼び出した。
「さっきの犬だ。…もしかしてこれがあなたの…。」
「そう、これが俺の個性だ。あ、他の人にはオフレコでお願いするよ。」
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話すと、彼がプロヒーローの1人であることがわかった。それも有名なヒーロー事務所【SLASHDOG】の人だった。
名前は幾瀬鳶雄といい、ヒーロー名はブラックドッグ。
自分で考えていたヒーロー名を却下され、その名になったと教えて貰った。
本名を明かしてもいいのか、と聞いたところ、
「今後君とは色々ありそうだからね。」
と、言われた。
そこで、俺は思いついた。今の自分の夢の相談をこの人にしようと。
「鳶雄さん、すこし相談したいことがあるんですがいいですか?」
「相談か…。いいよ、なんでも気軽に話すといい。」
「ありがとうございます。…俺ヒーローになりたいって夢があるんです。でも俺に出来るのか、俺の個性で誰かを助けられるのかって不安になるんです。どうすれば、ヒーローになれますか!」
「ヒーローにか…。誰かを助けたい、その気持ちがあればヒーローになれる。
…と、そう言いたいがあえて君のために言わせてもらう。今の君は、ヒーローには向いていない。」
「そう…ですよね…。」
プローヒーローに相談すれば、なんとかなる、アドバイスを貰えると思っていたが、そう甘くはなかったみたいだ。ヒーローには向いていない。その一言は、あまりに重かった。
だけど、伝えたいことはそれだけではなかったらしく、幾瀬鳶雄はまた口を開いた。
「今の君は、だけどね。」
と付け足すように彼は言った。
「…どういうことですか?」
「自分を信じきれない人は、ヒーローにはなれない。だけど君はまだ若い。いずれその意味がわかると思う。だから、少しだけヒントをあげよう。1度自分と向き合ってみるといい。自分と、個性と。」
彼はそういうと、やる事を終えたかのように立ちあがり、BARへと戻ろうとする。
「向き合うか…。分かりました、ありがとうございます!」
深々と礼をし、戻るいくぜ飛雄を見送る。すると、BARに入る前に、
「もし、君の夢が変わらず切符を手に入れたなら、また会おうか。イッセー君。」
と言い残し、BARへと戻って行った。
幾瀬鳶雄が戻ったあと、イッセーは、自宅に帰ることにした。
自分と、個性と向き合う。その意味を考えながら。
そしてその日、また、夢を見た。