「今日の秘書艦はっと……あぁ」
俺が秘書艦を確認し、何とも言えない声を漏らしたとほぼ同時に部屋の扉が開いた。
「提督、ちーっす!」
「鈴谷か……」
「何その反応!?ひっどーぅい!」
だってなぁ……。
早速業務に入ってもらうと鈴谷はかなりハイペースで書類を捌いていく。
鈴谷は大淀や霧島、吹雪ほどではないがかなり執務ができるし、お茶もコーヒーも美味しいものを淹れてくれる。さらにはよく気が利いており、いいお嫁さんになりそうな娘だ。
「提督ぅ―、鈴谷暇なんですけどぉ。終わらないなら手伝おっか?」
昼過ぎには彼女に割り当てられた仕事をやり終え、執務室に備え付けられたソファに座って何やら雑誌を読み始めた。
「もう少しだから待ってろ」
「ほーい」
口ではいろいろ言っているが、彼女が俺の仕事を邪魔したことはないし、公私の分別もちゃんとついている。
つまるところ大変有能な秘書艦なわけだが、何が問題なのかと言うと……。
「あ、終わった?どうする?ナニする?」
鈴谷は制服の胸元を緩め、俺に見せつけるようにひらひらと扇ぐ。
そう、これなのだ。彼女は『公』の時間は大変優秀なのだが、『私』になったとたん駆逐艦娘にはあまり見せたくないような感じで俺をからかい始める
「鈴谷。そんなことばっかしてたらしまいにひどい目に遭うぞ」
「別に誰にでもやってるわけじゃないよ?提督だからやってんの!」
そう言って鈴谷はソファの上で膝を抱えた。俺の位置からだと彼女の下着が足に隠れて見えそうで見えない。
またそうやって煽るようなことを……。何か起きてからでは遅いし一度ちょっと脅しをかけておくべきか?そしたら流石に鈴谷も懲りるだろう。
「鈴谷」
「ん?なに……って、ひゃ!?」
俺は鈴谷をソファに押し倒した。互いの距離は近く、彼女の荒くなった呼気が微かに俺の顔に触れる。
「え、ちょっ、提督ダメだって!まだ心の準備が……」
鈴谷が俺を遠ざけようとワタワタと手を必死に振る。そんな顔真っ赤にするくらいなら最初からやるなって……。
「とまあ、こんなことになるから揶揄うのもほどほどにな」
「ふぇ?」
「詫びと言っては何だが食堂にでも行くか?奢ってやるぞ」
多少の罪悪感を拭うために俺がそう誘っても、鈴谷は口を開けて呆然としたまま動かずにいた。
そろそろどかないとまずそうだと思い、足を動かそうとしたその時。
ギィっという音と共にゆっくりと扉が開かれてゆく。
「司令官、しつれいs……」
「……」
「……」
「……」
無言。俺が鈴谷を押し倒しているのをみた春雨も、鈴谷に覆いかぶさる俺も、呆けたままの鈴谷も、誰一人何一つ音を発さず静寂が空間を包んでいた。
「ご、」
やがて春雨が出した声が沈黙を打ち破る。
「ごゆっくりどうぞぉ~~!!」
「春雨ぇぇ!?」
扉を開けっぱなしにして駆けてゆく春雨の背中に手を伸ばすが、鈴谷をこのままにしておくわけにもいかず、とりあえず上からどいて様子を見守った。
「鈴谷?」
「馬鹿ぁ!」
「うぉ!?」
大声を上げた鈴谷に驚いてたじろいだ俺に、彼女はソファに座り直してからさらに捲し立てる
「このデリカシーなし!女たらし!鈍感提督ぅ!」
またひどい言われようだな……。自業自得だから仕方ないんだけど
「ほら行くよ!」
急に立ち上がったかと思えば、鈴谷は俺の手を引いて部屋の外に連れ出し、そのまま前を歩いて行く。
「えっ、どこに?」
「食堂。奢ってくれるんでしょ。それで許したげる」
そう言って初めは速足で廊下を歩いていたのだが、鈴谷はふと立ち止まり、何か言いたげに指で毛先を弄びだした。
彼女が切り出すのを待っていると、何かの決心がついたのか、鈴谷はゆっくりと口から声を漏らした。
「それと、その……、ごめんなさい。次からは気をつけるね」
「俺も悪かったよ。やりすぎた」
お互いが謝ると、鈴谷は手を打って頬を釣り上げた。
「よし!この話はこれで終わりっ!」
「じゃあ奢らなくても――」
「それとこれとは話が別ですぅ」
「冗談だ。ちゃんと奢ってやるよ」
「鈴谷、今日は赤城さんぐらい食べれるかも」
「やめろ。財布が死ぬ」
「冗談だって」
「胃に悪い冗談だな、両方の」
「上手いこと言っても誤魔化されないからね?」
軽口をたたき合う鈴谷との会話は、あまりこういった娘がいないだけに新鮮なものだった。
純情処女ビッチ鈴谷。……鈴谷ってこんな感じだっけ?
ps 今まで春雨ドロップ6-2と思ってましたが3だったんですね。さらにきつそうなのですが……。