「ふぅ」
ため息を吐いてカーテンの隙間から窓の外を見ると、満開に咲いた桜が春風に吹かれて花弁を散らしている。
さらにその下ではたくさんの艦娘たちが呑めや歌えやの大騒ぎ。壁越しでも少し声が聞こえるほどには楽しんでいるらしい。
机に置かれた酒をちびちびと煽っていると扉が開かれ、その奥から一人の艦娘が入ってきた。
「何やってるんですか司令官?」
「吹雪か」
「みんな寂しがってますよ。早く行きましょう」
「だが……」
今日は海域を攻略してくれた皆の祝勝会を兼ねたお花見。今回の作戦では無難な指示しか出せず、勝てたのはひとえに彼女たちのおかげ。それなのに俺があの場に交じるのはどうしても憚られるのだ。
「電ちゃん、『司令官、来ないのです……?』って泣きかけてましたよ」
「うぐっ……」
付き合いの長い吹雪は俺がどうやったら折れるか大体わかっているので、全力で罪悪感を煽りにきた。
「隼鷹さんも『提督が来るまでは飲めねえなぁ』って」
「いや、めっちゃ飲んでない?」
桜の下には花より酒と言わんばかりにジョッキを呷る隼鷹の姿が。
「あれノンアルらしいです」
ノンアルならいいのか?
「鳳翔さんと間宮さんも司令官のために腕を奮ったって。瑞鳳さんも卵焼き食べて欲しいって」
「ぐぬぬ……」
「……私も、司令官が来てくれないと楽しめないです」
悲しそうな瞳を吹雪に向けられて、俺はついに折れた。
「わかった俺が悪かった。今行くよ」
「はいっ!」
嬉しそうにみんなの下に駆けて行く吹雪の後ろを、ゆっくりと追いかけた。
× × ×
「あっ、提督。おっそ~い~!」
「しれぇ!早く早く!」
「遅いじゃないか。待っていたぞ」
「このクソ提督、遅いのよ!」
「ボノたんずっとそわそわしてたもんね」
「うっさい!してない!ボノたん言うな!」
「司令官、まずは一杯どうだい?」
皆が遅れてきた俺の姿を見て次々と声を掛けてくれる。とりあえず響はそのウォッカから手を離そうか。
「提督さん、こっちこっち!」
「はいはい」
夕立に誘われてそちらに行くと白露型の娘たちが集まっていた。夕立は俺を座らせるとすぐさま膝の上に乗っかった。
今回夕立はほんとに頑張ってくれたからな。
「~~♪」
そっと髪をなでると夕立は気持ちよさそうに声を漏らした。
ふと隣を見ると春雨が落ち着かなそうにちらちらとこちらを見てくる。
「どうした春雨?」
「その……、私もいいですか……?」
春雨は恥ずかしそうに俯きながら俺に尋ねる。春雨も大量の資源を運んでくれたし叶えてやりたいのはやまやまだが物理的になぁ……。
「夕立が乗ってるから後でなら」
「でしたら私は腕をお借りします!」
春雨は俺の腕を取り抱えるようにして抱きしめた。節々に柔らかい感触がして、心なしか甘い匂いが漂ってくる。
そんなことをしているとふいに俺の位置に影が差した。頭上を見るとど、こからか歩いてきた時雨が呆れた顔で俺を見下ろしている。
「僕の妹たちを侍らせて何をしてるんだい?」
「もうちょっと何か言い方あるだろ……」
やけに悪意のある言葉を投げかけた時雨は 大きなため息を吐いて俺の隣に並ぶ。
「隣、座るよ」
「ああ」
それから時雨は一言断って春雨の反対側に腰を下ろした。
皆の調子はどうかと辺りを見回せば、急遽拵えた簡易ステージの上で一芸を拵えてきた艦娘たちが各々の芸を披露している。他の者たちは遠近様々にそれを取り囲むようにして楽しんでいるようだ。
「トップバッターはミー達に任せるネ!アーユーレディ?」
「あーあー、マイクチェック、ワンツー。」
「榛名は大丈夫です」
「気合!入れて!いきます!!」
「あ~っ!一番取られた!?村雨、私達も負けてられないよ!」
「……何で私まで」
「みんな~那珂ちゃんだよー♪」
「歌っていただきましょう、加賀さんで『加賀岬』」
「~~♪」
俺はわいのわいのとはしゃぐ艦娘たちの姿を慈しむような眼つきで遠巻きに眺めていた。
「ずっと、こんな日が続けばいいのにな」
「だったらもっと頑張らないとね」
「ああ」
また明日から頑張ろう。この幸せと、彼女たちの笑顔を守るために。
うちの春雨がこんなに可愛いわけがなくない
ps基本的にうちにいる娘で練度高いのは出せました……。駆逐艦がやけに多いのはきっと気のせい。