白露日和   作:夜咲ひつぎ

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この時期になってインフルにかかってしまいしばらく寝込んでました。遅れて申し訳ないです。


白露日和3

「ん~、空気が美味しいっぽい!」

「ふふっ、夕立姉さんはしゃぎすぎですよ」

 

 春うらら。注ぐ日差しは辺りを暖かく包み込み、そよぐ風はうっかり眠りについてしまいそうなくらい心地いい。

 鎮守府からほど近い場所にある、少し荒い道を抜けた先の草原を、腕を広げて縦横無尽に駆け回る夕立は、春雨がうっかり笑ってしまったようになんとも微笑ましかった。

 その後方に立つ俺のさらに後ろで彼女たちを見守る時雨と村雨の瞳には、どこか憂いがあった。

 

(姉さん、本当に良かったの?)

(何が?)

 

 内容が気になるが、それなりに離れているうえに彼女たちの声は小さく、ほとんど俺のところまでは聞こえてこない。

 

(何って、せっかく提督と二人でデートできるチャンスだったのに。それをみんなでピクニックだなんて……)

(いいの、これで。そりゃあ、ちょっと惜しい気はするけどさ。でも妹のことも同じくらい好きだから!それに祝ってもらった上に私一人で独占しちゃうのも、ね?)

(姉さん……)

「だから今日はいっぱい楽しむぞぉ!!」

「うん、そうだね」

 

 話が終わったのか、白露たちは少し歩調を速めて俺の背中に追いついた。

 

「提督、着いて早速だけど村雨のちょっと頑張ったお弁当、食べてみる?」

 

 食べりゅううぅぅ!!

…………。

 

 夕立と春雨を呼び戻してから村雨が包みを開け、レジャーシートの上に広げられるのは色鮮やかな料理の数々。見ているだけで食欲をそそられてしまう。

 準備が整うと、みんなで手を合わせてから一斉に箸を動かし始めた。

流石村雨というべきか、やはり見た目通りにどの料理も美味しく、口に運ぶ手が止まらない。

 

「やっぱり村雨姉さん手料理は本当に美味しいです!」

 

 彼女自身かなり料理上手な春雨をしてこう言わせられるのは、うちの鎮守府でもそれほどいないだろう。

 

「村雨はいい嫁さんになりそうだな」

「嫁っ!?えっと、それはあの……」

 

 村雨は視線をあちこちにさまよわせて口ごもった。

 まあ、そりゃそうか。艦娘たちに守られている俺でさえいつ命を落とすかわからないのだ。なのに常に前線で戦う彼女たちにとって結婚というものは相当苦しい決断を迫られるもののはずだ。少し思慮が足らなかったか。

 そんな俺の思考を知ってか知らずか、夕立や時雨、春雨はどこか恨めし気、というよりは羨まし気な目を向けてきた。

 

「うぅ~~……」

「提督、これ僕が作ったんだ」

「私もいっぱい手伝いました!」

「ん?ああ、二人ともありがとう」

((……そうじゃない)です)

 

 俺が感謝を伝えると二人は落胆を表すように項垂れた。なぜだ……。

 

 

 

「夕立、いくわよ」

「ぽいっ!」

 

 昼飯を食べ終えてしばらくして、腹ごなしに軽い運動をすることにしたようで、白露と俺以外のみんなは草原に出て行った。

 ……しかしああやって夕立がフリスビーを追いかけているとますます犬っぽいな。

 

 それにしても、

 

「白露はいかなくてもいいのか?」

 

 普段ならこういうとき夕立とともに真っ先に駆けだしそうな白露だが、今日に限ってはレジャーシートのうえで遠巻きに妹たちの様子を眺めていた。文字通り、遠く離れてしまったものを見るかのように。

 

「うん、たまにはこういうのもいいかなぁって」

 

 今の、いや、最近の彼女にはいつものような元気がない。先日の買い出しの時も少し無理しているような節があった。

 

「悩みでもあるのか?」

「……なんでこういうときだけ鋭いのかなぁ」

 

 白露は困ったように苦笑し、膝を抱えて頭を埋めた。それから俺の顔を窺い見るようにわずかに瞳を覗かせる。

 

「ねえ、提督。私ってみんなの役に立ててるのかな」

「あたりまえだろ」

 

 うちの鎮守府に役に立たない艦娘などいない。最前線で戦う金剛や加賀はもちろん、後方で頑張る暁たち、戦えない間宮や伊良子だって形は違えど欠かせない存在だ。

 当然、白露だって。

 

「でも時雨と夕立は海域攻略組だし、村雨と春雨は執務とか料理とかできるし。私だけなんにもないなーって」

 

 本当はもう少し後で言うつもりだったんだが……。

 

「白露、この後工廠に来てくれるか?」

「え?うん、いいけど」

 

× × ×

 

「お待たせ提督」

 

 表面上はつつがなく終わったピクニックのあと、辺りが暮れ色に染まる頃。

 工廠から出てきた白露の姿は以前と大きく変わり、その長く伸びた髪が際立って目立っていた。

 

「本当は誕生日に合わせるつもりだったんだが間に合わなくてな……、すまない」

「……ううん、すっごく嬉しい。ありがとう提督!」

 

 改二になって見違えた彼女だが、その笑顔には微塵も変わらない、見た者も元気にするような明るさが宿っていた。

 

「さて白露、明日はさっそく神通たちと出撃してもらう。夕立や時雨も一緒だ」

「任せて!いっちばんいい活躍、してみせるから!!」

 




とりあえずここで一段落ということでしばらく別の小説に取り組みます。時々上げるかもしれませんが、その時は『こいつサボってんな』とか思いながら生暖かい目で見守ってください。

ps この物語はフィクションです。うちの鎮守府、艦娘には一切関係ありません。(訳 うちの白露は改二まだです)
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