ps 何の成果も得られませんでしたぁ!!(艦これ春イベ)
この鎮守府は都会から離れた位置にあり、夜になると光り輝く星々が空にはっきりと見える。その中でも一際目立つ二星を窓から見つめ、誰に言うでもなく呟いた。
「そういえば明日は七夕だったか」
あまり縁のない行事ごとなんかはついつい忘れてしまうが、明日は七月七日。七夕の日だ。
もう願いごとを短冊に書くような年でもないし、織姫と彦星の話に胸をときめかせるようなロマンチストでもない。
だから今年も何事もなかったかのように過ぎ去っていくのかと思っていた。
× × ×
翌朝、起きて食堂に行くと何やらざわざわと騒がしい。普段のこの時間は混んでいるわけでもないし川内も寝ているから割と静かな方なのだが、どうやら今日は違うようだった。
騒ぎの中心の方を見ると主に駆逐艦の子らが隅の方に置かれた笹のもとに集まっている。
「おはよう春雨、これどうしたんだ?」
「あ、おはようございます司令官!それが、今朝来てみたら置いてあったんです」
少し後ろの方でニコニコとその様子を眺めていた春雨に声を掛けると、彼女は自分の背丈よりも高い笹を見上げた。
「長門さんたちが用意してくれたらしいんですけど、それにしてもすごいですよね、これ」
ああ、長門か。なるほどな……。
俺の目の前にある立派な笹には既に数多くの短冊が吊るされている。遠目からそれらを見てみると何とも微笑ましい文言が書かれていた。
はやくおっきくなりたいのです! 電
りっぱなれでぃになるんだから! あかつき
皆にもっと頼られたいわ 雷
平和なままでいられますように 響
……響が一番しっかりしてないか?頼りにしてるぞ雷。がんばれ電。うん、暁も、な?
休んでください司令官 吹雪
↑吹雪ちゃんもね 白雪
堕落 初雪
吹雪のやつ……。いいからお前も休んでくれ。ほら、白雪に言われてるぞ。あと初雪は……まあいいか。
いっちばん強くなるんだから! 白露
素直になりたいな 時雨
もっと料理上手になりたいわね 村雨
提督さん遊んでほしいっぽい! 夕立
白露、最近頑張ってるな。これからも頼りにしてるぞ。
時雨は口に出すのが下手だからなぁ。もっと甘えてくれていいんだぞ。
村雨、十分美味しいが……。是非味見に付き合わせてくれ
すまない夕立。できるだけ時間取るようにはするから……。
そこまで見てふと、あと一枚短冊が足りないことに気が付いた。
「あれ?春雨は書いていないのか?」
「……実はまだちょっと悩んでいて」
春雨はまだ何も書かれていない短冊を両手で持って口元を隠して困った風な感じだったが、何かを思いついた様子で俺の方を見た。
「そうだ!司令官もよかったら書きませんか?」
「ん、それもそうだな」
まさかこんな年になって書くようなことになるとは思わなかったが、たまにはこういうのも悪くないか。
それにしても何を書こうか……。
だめだな、こういうのは悩んだら負けだ。叶えたいことをそのまま書けばいい。
インクが擦れる音を立てながら俺は胸にある願いを書いていく。
『この鎮守府から誰一人欠けることがありませんように』
……いや、これは願うものじゃない。俺が自力で叶えるべき願いだ。
俺は申し訳なく思いつつも書き終えた短冊を丸めてポケットに入れた
「やっぱりやめておくよ」
「そうですか……」
悲し気な表情を浮かべながら、春雨は手に持った短冊を俺に見えないように吊るした。
「なんて書いたんだ?」
「教えません♪」
そう言って春雨は俺をここから除けるように背中を押してくる。しかし振り返る間際に一瞬だけその内容が見えた。
司令官のお願いが叶いますように 春雨
罪状
夕立、村雨、五月雨の進水日を忘れる。
イベントで春雨堀りを諦めて二次創作に逃げる。
許して……許してぇ……。