白露日和   作:夜咲ひつぎ

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とりっくおあとりーと!

 猛威を振るった暑さは鳴りを潜め、季節は徐々に秋へ向かっている。鎮守府の中の木々もわずかばかりだが葉の色を変え、秋の訪れを感じさせてくれる。

 

「もうすっかり秋だね。秋刀魚の季節だよ」

 

 気分転換か、不意に顔を上げて窓の外に目を向けた時雨が楽し気に呟いた。

 

「秋刀魚か、いいな。鳳翔にでも頼んでみるか」

 

 などと手を動かしながら時雨と和やかに話していると、執務室の扉を誰かが軽く叩いた。

 

「提督さん提督さん!おしごとおわったっぽい?」 

 

 扉の奥からいつもにましてテンションの高い夕立の声が聞こえてくる。夕立は非番の日にはよくここに遊びにくる。今日もきっとそういうことなんだろう。だが……、目の前に積まれたこの書類の束を片付けるまでは相手をしてあげられそうにない。

 

「ごめんね夕立。もうちょっとかかりそう」

「わかったっぽい……。ここで待ってるっぽい!」

 

 時雨がやんわりと待つように言うと、夕立はそのまま扉を開けることなくその場にとどまった。

 先日までの暑さはどこに行ったと言わんばかりにここ最近は冷えているので、部屋の外にいると寒いはずだ。

 

「夕立、入らないのか?そこにいても寒いだろ?」

「ううん、待ってるっぽい!」

 

 だから中に入るように言ったのだが、夕立は動こうとしなかった。普段なら一も二もなくと入ってくるのに……。

 夕立にしては珍しい行動に疑念が湧く。何か企んでいるのか?

 

「ふふっ。提督、夕立が風邪ひいちゃう前に早く終わらせよう」

 

 時雨は何か知っているのか楽し気に笑って再び机に向かった。

 まあ時雨が笑っているんだし、悪いことにはならんだろう。あまり待たせても悪いし急いで片付けてしまおう。

 

……

 

「よし夕立。終わったぞ」

「本当!?じゃあじゃあ――」

 扉の奥に声を掛けると夕立の食い気味な返事が返ってきた。それから間もなく、バンッと勢いよく扉が開かれた

「とりっくおあとりーと!っぽい!」

 

頭に犬の着ぐるみの帽子?を乗せた夕立が部屋に勢いよく突撃してきた。その手や足には爪の付いたもこもこ、さらには背中側のスカートの裾から尻尾まで見えている。

 

「がるる~、ぽ~い!」

「おわっ!?」

 

 そしてそのまま胸元に飛び込んできた夕立の恰好を見て、今日が何の日か思い出した。

……そういやハロウィンか。

 

「すまん、完全に忘れてた。お菓子は持ってない……」

 

 サラサラの髪をゆっくりと梳くように撫でながら謝ると、夕立は顔を上げて満面の笑みをこちらに向けた

 

「じゃあ――、いたずらするっぽい♪」

 

 そう言いながら夕立は俺をソファに座るように促し、そのまま膝の上に乗っかった。それからこちらに徐々に体重をかけてくる。 

 

「一緒にお昼寝するっぽい!」

 

 これいたずらでも何でもないけど……。まあいいか。夕立が楽しそうだし。

 ふと視線を横に向けると、呆れた顔の時雨が大きめの毛布を持って立っていた。

 

「……はぁ。二人とも、こんなところで寝たら風邪ひくよ?」

 

 ほら、とこちらに毛布を渡す時雨。いそいそと俺と自分の身体を毛布で包んだ夕立は、少し寄って一人分のスペースを空けた。

 

「時雨もはいるっぽい!」

「僕も?わかったよ」

 

 やれやれ、と言いたげな表情を見せた時雨だが、その頬は隠せないほどに緩んでいる。たまには素直になればいいのに……。

 

 

 

 それから、俺たちは春雨が夕食で呼びに来るまで三人そろってずっと眠っていた。呼びに来た時にどこか春雨が不機嫌だったのは触れないでおこう。

 

「春雨、今日のメニューは?」

「秋刀魚らしいですよ司令官!鳳翔さんが作る旬の秋刀魚料理、楽しみです!はい!」

 




お久しぶりです、ひつぎです。春雨誕生日回を書くって言ったのはどこいった?
友人から『ハロウィングラ夕立』と聞いて久々に艦これ起動するとあまりの可愛さにしばらく悶絶してました。
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