白露日和   作:夜咲ひつぎ

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好感度メーター前編

「なんだこれ?」

 昼食を取って執務室に戻ってくると、俺の机の上に小さな袋が置いてあった。

 これは何なのか訊こうと先に戻っていた吹雪の顔を見てみると、彼女は呆れたような様子で肩を竦める。

「さっき明石さんが嬉々として持ってきましたよ」

「あぁ......」

 吹雪のその一言で色々と察してしまった。

 明石。彼女は基本的に工廠から出てこないが、稀に発明品をこうして持ってくる。そして、その時の表情が楽しそうであればあるほどろくなものではない。

「......開けるか」

「開けちゃうんですね......」

「流石にこのまま放置するのもな。あとで煩そうだし」

 そう言いながら袋から中身を出すと、リモコンのような何かと取扱説明書が出てきた。

「なんだこれ?」

 イラストなどもついていてやけに凝っている説明書を開いてみると、その上部にでかでかとこう書いてあった。

「『好感度メーター』?」

「もう嫌な予感しかしないんですけど......」

 そうは言うものの、吹雪も俺の手元を覗き込んでページを捲るのを促してきていた。

『艦娘に好かれているのか知りたくないですか?そんな時はこれ!好感度メーター!』

「なんかすでに胡散臭いな……」

『使い方は簡単!好感度を測りたい艦娘に向けて測定ボタンを押すだけ。0~100までの数字で表示されます』

 そこまで読んだ後、下に注意書きが描かれていることに気づいた。

『注意 好感度と一口に言っても愛情、友情、親愛などその種類は様々です。数字が高いからと言っても愛されているとは限らないので気をつけてください』

 説明書を最後まで読み終えて隣に座る吹雪の方を見てみると、何とも言えない表情をしていた。

「それでこれ、どうするんですか?」

「せっかくだし使ってみるか……」

「え、使うんですか?」

 吹雪はこんな胡散臭いものを?とでも言いたげな目でジトっと見てくるが、俺だって艦娘の子らにどう思われているかは気になる。

「はぁ……。わかりましたけど、内気な子にするのはやめてくださいよ。電ちゃんとか春雨ちゃんとか」

「わかってるよ。というかちゃんと本人に許可を取ってからするつもりだ」

 というわけで、だ。

「吹雪、見ていいか?」

「私ですか!?」

「まあ、うん」

 何年も一緒にやってきた仲だし嫌われているとは思ってはいないし思いたくないが、やはりどう思われているかは気になる。

「いいですけど、あんまりおもしろくないですよ」

「別に面白さを求めてるわけじゃないから」

「……むぅ。ならはい、どうぞ」

 吹雪は少し不満げにしながらも、体を差し出すようにして目を瞑った。その姿はわずかに震えていてどこか緊張しているように見える。

 さて。吹雪の方をリモコンを向けてボタンを押した。

92

 ……高いな。

「どうでした?」

 吹雪は再度体を寄せて俺の手元を覗き見た。

「92、まあこれくらいですか」

「思ってたよりも高かったな……」

「そりゃあ、この鎮守府が始まったときから一緒にやってきたわけですし……。信頼してますよ」

「そうか……、ありがとう」

 改めて面と向かって言われるとこう、何と言うか嬉しいが恥ずかしい。

「それで、次は誰にするんですか?」

「んー」

 バタバタバタ。

悩んでいると廊下を慌ただしく走る音が聞こえてきた。この足音の主は、もう姿を見るまでもなくわかる。夕立だ。

「ていとくさーん!遊びにきたっぽいー!」

「夕立、廊下は走らないの。提督、お邪魔じゃないかな?」

 勢いよく室内に入ってきた夕立と、その後ろから控えめに姿を現した時雨。ちょうどいいし、次はこの二人にしようか。

「ちょうどよかった。二人とも、ちょっと付き合ってくれないか?」

「っぽい?」

「どうしたんだい?」

~~状況説明中~~

「そういうことならうん、いいよ」

「よくわからないけどやってみるっぽい!」

 二人から了承を貰ったので早速測ってみる。

 夕立は普段これだけ遊びに来ているし、時雨もなんやかんやで夕立と一緒にここに来ているので、嫌われているということはないだろう。とはいえ、やはり多少は緊張する。

 時雨 83

 夕立 85

「どれどれ、これって高いの?」

「多分な」

「吹雪はもう測ったんだよね。いくらだったの?」

「へぇ……」

「夕立より吹雪の方がていとくのこと好きっぽい?」

 吹雪の数値を聞いた瞬間、時雨の目が座った。夕立の方は純粋な瞳で小首を傾げている。

「って、流石に吹雪には勝てないよね。年季が違うよ」

 しかし、数瞬おいて時雨は物騒な空気を収めて首を竦めた。どうやら吹雪は彼女たちに相当信頼されているらしい。

 それから、時雨はコホンと咳払いをしてから、改めて俺の方に向き直った。

「この際だから正直に言うと、僕は、きっとみんなも提督のことが好きだよ。いつも一生懸命で、僕たちの為に働いてくれて、本当に感謝してる。そんな提督だから僕たちの背中を預けられるんだ」

「夕立もていとくのことだいすきっぽい!!」

「おまえら……」

 年甲斐もなく大声を出して泣きそうになった。艦娘たちからそんな風に思ってもらえるなんて、まさに提督冥利に尽きる。

 俺は時雨と夕立の体を引き寄せて、両腕に抱きかかえた。

「俺もお前たちが大好きだ。お前たちの為ならいくらでも無茶できる」

 時雨は照れ臭そうに顔を背け、夕立は逆に目一杯抱き着いてきた。

「……そう言ってもらえるのは嬉しいけど、ちゃんと休んでほしいな」

「ていとくさん、いつもいそがしそうで遊んでくれないっぽい」

「うっ……、善処する……」

 いつも吹雪に言われていることだ。そう言われては言い返せない。俺は気まずくなって目を背け、お茶を濁すような曖昧な返事をした。二人はそんな内心を見透かしているのか、疑わし気にこちらを見ていた。

 

 それから、二人を離して次のターゲットを考えることになった。

「う~ん、白露とか村雨とか?」

「いいんじゃない?少なくとも提督を嫌ってるってことはないし」

「春雨もよさそうっぽい!」

「そうだな。ひとまず白露に頼んでみるか」

「呼んでくるっぽい!」

「あ、夕立!ごめん提督、行ってくるよ」

 途端に駆け出す夕立に続いて、時雨も部屋から飛び出していった。

 ……正直、俺のことを嫌っている艦娘に試してみたい気持ちがある。・……大井とか。

普段はどう思っているのかなんて聞けないし、はぐらかされて終わりだ。この機会に何故嫌われているのか、聞き出したかった。それで、できることなら和解したい。

「提督―、時雨たちから提督が呼んでるって聞いたんだけど」

そんなことを考えていると、執務室のドアが叩かれた。

 




約一年の時を経て帰ってきました。
正直なところ艦これ熱が冷めかけていたのですが、某くちくかん漫画が更新されて書きたくなった次第でございます。
こんな感じで投稿頻度がばがばで内容もゆるゆるですが緩く読んでいただければ幸いです。
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