静かな執務室には、カリカリとペンが紙の上を走る音と秒針が刻む音だけがやけに大きく響く。気になってしまうのは集中力が切れた証拠。一度ペンを置いて時計を見るともう正午を回っていた。
俺はまだ隣で書類と睨めっこをしている今日の秘書官、春雨の肩を叩いた。
「春雨、休憩にしよう。お腹もすいただろ」
「あ、はい!わかりました!司令官はお昼どうされますか?」
普段は自炊か誰かに頼むかなんだが、今日は鳳翔のところに顔を出そうか。『時々で良いので来てください』、なんて言われたしな。
「たまには食堂にでも行くか」
「えっと、ご一緒してもよろしいでしょうか?」
「そうしてくれると嬉しいな」
「はい!」
春雨はパタパタとおさげ髪を揺らしながら部屋から出ようとする俺の横に並んだ。そのままいくらか会話をしながら鎮守府の廊下を歩き、食堂に着くと扉の奥からは賑やかな声が聞こえてくる。
何となく、この雑多な騒がしさが苦手なんだよな。別に嫌いなわけではないし、うちの娘達が楽しそうな姿を見れるのは嬉しい限りなんだけど。こればっかりは性と言うほかない。
食堂に入るとちらほらと視線を浴びせられる。中でも鳳翔は、俺の姿を見ると嬉しそうに手を合わせてこちらに笑顔を向けてくれた。そんなものを見せられては声を掛けないわけにもいかないじゃないか。
「邪魔するぞ鳳翔」
「お久しぶりです提督。やっと来てくれたんですね」
「鳳翔の手作りが恋しくなってな」
「そう言うならもっと来てくださいよ……」
「……善処はしよう」
ちょっとカッコつけたけど嘘は言ってない。実際鳳翔や間宮の美味しいご飯を食べられるここはうちの鎮守府でも大人気だ。特に量を食べれて値段も安めということで赤城や加賀からの評判がいいらしい。
俺が隅の方の席に座ると、その正面の席を春雨が引いた。
「「いただきます」」
そうして箸を進めてからしばらく経って、春雨がふと尋ねてきた。
「司令官、今日の夕飯は何がいいですか?春雨、頑張って作っちゃいますよ!」
うちでは俺の夕食は大抵その日の秘書艦が作ってくれる。主に担当してくれる白露型姉妹や吹雪はある程度料理ができるし、比叡と磯風は当番からは外れているので俺の胃が死ぬ心配はない。
中でも時雨、春雨、吹雪の三人は特に美味しい物を作ってくれるので時々非番の日に頼んだりもしている。
しかし食べたいものか……。そう聞かれるとなかなか思い浮かばないのだが、『なんでもいいは一番困ります!』とこないだ吹雪に言われてしまったしな。
頭をひねりながらじーっと春雨を見つめていると、彼女は小さく首を傾げた。可愛い。
さらに見つめると頭の上に疑問符を浮かべながら少し困った顔になった。とても可愛い
「春雨が食べたい」
「ふぇっ!?」
春雨は顔を真っ赤に染めてあわあわと口を動かしている。やがて何かに気付いたのか、恥ずかしそうに顔を伏せた。その肩はわずかに震えている。
「いえ……、なんでもないでしゅ……です……」
噛んでさらに恥ずかしくなったのか、肩の揺れが大きくなった。にやけそうになる口を必死に堪えていると、春雨はついに耐えられなくなったのか食器を持って立ち上がった。
「さ、先に戻りますぅぅ~~!!」
「春雨ぇぇ!?」
食堂から飛び出していく春雨の後ろ姿を、食堂にいた艦娘たちは奇異の目で見送った。
× × ×
「うん、やっぱり春雨の春雨は美味しいなぁ」
「司令官にそう言ってもらえると嬉しいです♪」
ウルトラ可愛い。
清純派むっつり美少女春雨。
p.s. 春雨ちゃんを食べたい