執務室の中央から少しそれたところに置かれた予備の机。先日吹雪が使っていたそれの上には今、大きな紙袋が乗っている。
本日の秘書艦春雨は中身が気になるのか、不思議そうに眺めていた。
「司令官。これ、なんですか?」
「ああ、それは……」
俺がどう伝えるべきか躊躇っていると春雨はますます好奇心に駆られたのか、袋の方をちらちら見ている。
「気になるなら見てもいいけど。……俺の趣味じゃないからな?」
「?。どういうことですか?」
俺は質問に答える代わりに手で袋を開けるように促すと、春雨はおっかなびっくり中身を取り出した。
「えっと、司令官、これは……?」
「メイド服、だな」
「司令官にそんな趣味が!?」
「だから違うってさっき言ったじゃん!?」
心底驚いた風に大きな声を出した春雨に俺は慌てて反論した。それで落ち着きを取り戻したのか、春雨は息を吐いてから改めて俺に向き直った。
「それで、どうしたんですかこれ?」
「ちょっと知り合いから貰ってな」
舞鶴の方の鎮守府を運営している俺の同期の提督からつい先日送られたきた。曰く、『うちで余ったからやるわ』とのこと。メイド服が余る鎮守府ってなんだよ……。ていうかいつ使うんだよこんなの……。
だがしかし、好きか嫌いかで言えば大変好きなわけで、さらにそれを春雨が着てくれようものならあまりの可愛さに悶えてしまうことはもはや自明の理。
「でも見てみたくはあるな」
「私でよければ着ましょうか?」
「え、いいの?」
「はい!司令官がおっしゃるのでしたら!」
冗談半分期待半分だったのだが、春雨は快く引き受けてくれた。眩しい笑顔で答えてくれた彼女に邪な目を向けるのが非常に申し訳なく、俺は春雨から目を逸らした。
しかし罪悪感があるからと言って、頼むかどうかとはまた別の話なわけで。
「ぜひ頼む」
「はい♪」
春雨が着替えるので一度俺は部屋から出て準備が終わるのを待つ。中からシュルシュルと衣擦れの音が断続的に聞こえてきてさっきからずっと落ち着かない心地だった。
『司令官、着替え終わりました!』
「ん、入るぞ」
扉を開けると、そこは桃源郷だった。
「えっと、どうでしょうか……?」
春雨は慣れない衣装だからか、腰をねじったりスカートに軽く触れたりして具合を確かめている。そして俺を見つめる彼女の瞳は、どこか不安げに揺れていた。
『メイド服と少女』
『―相利共生―』
『この世には組み合わせるべくして生まれてきたと言っても過言ではない関係が存在する』
『スク水と幼女!セーラー服と少女!浴衣と貧乳!相利共生は個々のポテンシャルを最大限に引き出す!』
『男の大多数はメイド服が好きであり、提督も例にもれず煩悩にあふれた人間』
『そしてここに春雨という容姿端麗な少女が一人……』
『二つの存在の愛称は彼の目にどう映ったか……』
「か、」
かわえぇぇぇぇぇ!!
『奇跡的相性(マリアージュ)』
だめだ、あまりの可愛さに頬が緩む。
だが俺は仮にも彼女の上官。無様な姿は見せられない……!
「ああ、よく似合っている。可愛いぞ春雨」
「ふぇ?ほ、ほんとですか!?えへへっ」
可愛らしく喜ぶ春雨が気付かぬうちに、俺はハンカチで口元を流れる血を拭った。
褒められて嬉しくなったようで彼女はその場でクルっと一回転。片側で結んだおさげ髪に遅れて、膝下ほどの丈のスカートがふわりと舞った
だめだ、また頬がっ……!!
「……あの、司令官?」
「ん?」
「後ろに、その……」
一時たりとも目を離したくなかったが春雨に言われて渋々後ろを向くと、窓の上側から薄く紫がかった髪の束が垂れている。そして少しずつ『ソレ』が降りてきて、やがて現れた双眸が俺達を射抜く。具体的にはメイド服を着た春雨と、それに歓喜する司令官という状況を。
「……」
「……」
「青葉、みちゃいました!」
「アオバワレェ!!」
翌日。朝一で張り出された号外を見た時雨に『僕の妹で遊ばないでくれないかな?』と怒られ、吹雪からはジト目で見られたりと散々だった。
だがその代わりに春雨イドの写真を青葉からごうだ……貰ったので良しとしよう。
着せたかっただけです。それにしてもタイトルのわりに白露が全然出てない……。ちゃうねん、嫌いとかやなくて、ただネタが思いつかんだけやねん。
書いてほしいネタとかシチュがあれば言ってくれると助かります。
ps 春雨可愛い