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「……あ、アイアイこっちこっち!」
本条の手に招かれるように重い足をばたつかせて走る。
「間に合った……かしら」
「うん、ぴったし!十時十分ちょうどだよ!」
「良かった……」
べったりと地面に座り込むと、荒れた呼吸をすぅすぅはぁと整える。繰り返すうちに肺がだいぶ楽になると、人類の二足歩行へと戻った。その間本条は露も知らぬ顔をして朝ごはんだろうか、買ってきた卵サンドを美味しそうにモグモグしていた。じぃと視線をおくったが、本条は気付かずに食べたままだった。
やれやれと思いつつ、少女は鞄に手を入れる。ザラザラの表紙の単行本、少女の好きな作家の新刊である。手触りに頬を緩ませつつ取り出していると、本条が頭をペシッと叩いてきた。
「いてっ。何するの、本条さん」
「せっかくデートするんだし、読書は禁止だよ!」
「……別にカップルじゃないし、別にいいじゃない」
「だーめ。ほむんくるす君はしっかり知れば奥深いし、楽しいんだよ?ほらほら行くよー」
「わっ……」
心を穏やかにする温かさを持った手。なんだか懐かしい感じがして、少女は抵抗せずに大人しく引っ張られることにした。アマゾンランドの中はあの奇妙奇天烈なほむんくるす君とは真逆と言っていいほど美しかった。名前の通り自然をモチーフにしており、展示エリアはまるで本当のアマゾンみたいだった。なんだかんだ言っていた少女も良質な展示に魅了され、本条と並んで目をキラめかせていた。それも中間地点まで来た頃、休憩スペースとしていくつかベンチがあった。その頃には普段運動しない少女の体力は死にかけで、体力を持て甘す本条は仕方なくベンチに座って、休憩することにした。
「どう、アイアイ?ほむんくるす君の素晴らしさが理解出来た?」
「えぇ……!ほむんくるす君の要素がどこにあるか理解できなかったけど、展示は本当に優美で凛々しかったわ」
「むぅ……ほむんくるす君の味わいが分からないか……でもでも!どこかほむんくるす君感じさせない?」
「……ないわ」
「そんなぁ……」
落ち込むけれどめげない本条。呆れる少女。そんな会話をしていると、目の前をピンクのワンピースの少女が通った。いかにも妖精らしい見た目にふふっと頬が緩んだ少女は、本条の肩を叩き、無言でワンピースの少女を指差した。しかし、本条は小首をかしげた。
「……からかってるの、アイアイ?そこには誰もいないよ」
少女はぞっとしたが、疲れているから見える幻覚だと割り切って何度も何度も目をこすった。だが姿は消えない。あまりに目をこすっているので本条が心配そうな眼差しをしてきたので、そろそろ行こうかと本条の手を掴んだ。本条はもう少し一緒に座っていたそうで不満そうだったが、少女の何かを恐れるような顔を見て従うことに決めた。
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