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本条の家はマンションの一室だった。指紋認証と顔認証のダブルセキュリティがあるぐらいの超高級マンションであり、意識が半ば朦朧となりながらも、少女の心はアタフタと慌ただしかった。本条の顔を認知した自動扉が開く。
「ほらアイアイ、私の家に着いたよ。少しは落ち着いた?」
「……え、えぇ」
本条が電気のスイッチを押すと、LEDの電球が競うようにキラリと全ての部屋を照らした。これが最新鋭の技術かと少女は唖然した。それも束の間の内に本条自身の靴と少女の靴を脱がせると、すぐさま玄関横の部屋に入った。部屋の中央のお姫様が寝るような大きな蚊帳付きベッド、高級そうなタンスやクローゼット、化粧台。そんなベッドの上に少女は降ろされる。
「……ふぅ。中々アイアイ重いね」
「……早速の無神経発言やめてくれる?」
「ごめん、ごめん。嘘だよ、アイアイ異常に軽かったよ」
それはそれでどうなのかと頭をモヤモヤさせたが、強く疲弊した身体がそこで思考をストップさせた。ふっと気を抜いたら、意識が深い夢の奥底へと落ちていきそうだ。寝てしまいたいが、まだ前野にこの事実を伝えられていないことが気がかりだった。朦朧としながら鞄の中に手を入れて、なんとかスマホを取り出す。……充電はなんとかあるみたいだ。少女はほっと一息ついた。電話をしたいが、倒れ込んだなんてバレたらどれだけ心配をかけることだろうか。LINEでその旨を伝えようとした時、LINE電話がかかってきた。サイズの合いそうなパジャマを探していた本条がこちらを向く。
「アイアイ、電話?」
「うん……出るよ」
つい言葉が口の先から出てしまった。本条の目線がある一方、電話にでないわけにはいかない。スマホに表示された二十二時という表示をチラッと見てから、耳にスマホを当てる。
「あ、やっと繋がった!藍くん、こんな時間まで一体何を」
「……す」
「え?なんだい?」
あれ。少女は喉に違和感があった。声がカスれて出ない。このままではまずいことになる。目が一刻一刻と眠りに近づいているのがハッキリと形をなして分かってきた。まずい。スマホが手から滑り落ちて、ベッドの下に落ちる。少女がいくら手を伸ばそうとしても、なんだか上手くつかめない。半目がもう完全に閉じているせいだろうか。少女の胸に失望と迷惑が入り混じって暴発しそうになったその時、ひょいっと陽に焼けた腕が少女のスマホを拾った。
「あっ、もしかして前野さんですか?」
「君は?」
「はい、前に遊びに行った本条です」
「あぁ、あの時の。それで藍くんは一体……」
「実は……一緒にカラオケに行ったんですけど、歌いすぎちゃって声が枯れてしまったみたいで……」
「なるほど。それで、今藍くんと君はどこに?」
「私の家です。実はアイアイ……もとい藍さんと前から一緒にお泊りしたかったんですが、中々その機会がなくて……今日頼んでみたらOK貰えたので……本当にすいません!」
「いや、それなら良いんだ。それじゃあ本条さん、藍くんのこと、頼んだよ」
「分かりました!」
通話の切れる音共に、少女は胸の中の嫌な感情が全て溶けだして、気が付くと暗闇の世界へと落ちていっていた。
推しカプが死にそうで毎日苦しい