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話を聞き終わった途端、少女の本条に対する評価が変わった。いや、正式には"そうであるべき評価に戻った"というべきだろうか。段階的に説明して行くと、本条曰く、部屋にいた女の子はやはり、少女がアマゾンランドで見ていたあの子だったらしいのだ。ではなぜ女の子があんな意味の分からない行動を取ったかというと、いい淀みながらも、全ては少女をこの部屋に連れてくる為だったそうだ。常識論、睡眠薬による昏睡や物理的な気絶をさせて部屋に連れ込むと、誘拐になり、加えて少女に嫌われてしまう可能性もある。そこで考えたのが、怪しくない部外者の手による昏睡だ。とあるルートで手に入れた遅効性の毒を使って、部外者の手から注入してもらう。そしてアマゾンランドからの帰り道で適当に時間を潰し、毒が効くのを待つという作戦だったようだ。だから少女の本条に対する考えは”戻った”のだ。少女は白い目で本条を見つめる。
「あの……アイアイ……ごめん……ね?」
「せっかく……本条さんのこと……好きになって来てたのに」
「……えっ?」
少女はポツポツと降り落ちていく涙で袖を濡らすと、その場にうずくまって何も言わなくなってしまった。本条は何か声をかけようと手を伸ばしたが、直ぐに戻し、何も言わずに隣へ座った。女の子はどうするべきか、と少しの間戸惑っていたが、机の上に置かれた封筒を手にして、そそくさと立ち去っていった。ドアが閉まり、部屋が少し揺れる。本条は少女の髪の毛を見る。交じりっ気のない蒼が深海みたいで、ずっと見ていると吸い込まれそうな魅力がある。いつもはこんな風にマジマジと見ることもないので、なんだか新鮮な気分だった。触れて、みたい。ただ一つの純粋な感情が、本条の中に沸き起こった。いつものじゃれあいなんかではなく、そんな中途半端な気持ちなしに、ただ美しく壊れやすい宝石でも触れるように。しかし葛藤がそれを拒んだ。自分の短絡的な行為が、逆に少女を傷つけてしまった。確かにそれに”理由”があるとはいえ、宝石に一筋の傷をつけてしまった。だというのに、私がまたこの宝石を触る権利などあるのだろうか。相反する二つの感情が混沌として、本条も今にも泣きだしてしまいそうな気分だった。けれど、本条は必死に堪えた。温かくて未来の為に。
本条はゆっくりと頷く動作をすると、すっと後ろから少女の耳を塞いだ。反射的にピクッと少女の皮膚も動く。耳元で、優しく、朗らかに、言葉が発せられる。
「--ごめんね。でも、誘拐してしまいたいぐらいにアイアイの事が好きなの」
部屋が汚いので掃除しなくていい世界に行きたい……逆に綺麗にしそうだし