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それから少女は荷物をまとめ、何も言わずに本条の部屋を出た。背中に、本条の視線をヒシヒシと感じながら。まだ早朝も早朝の頃だったので、通りには、元気に散歩をしている老人か、犬の散歩をする学生程度しかいなかった。そんな中を思いつめたような暗い顔で歩いていると、遠方から見覚えのある人がランニングしてきている姿を見つけた。眉間に皺を寄せて見ると、それは本条の祖母だった。額の汗をぬぐいながら走っており、少女の姿に気付くとあらと言って駆け寄って来た。
「おや、おはようさん」
「おはよう……ございます」
「なんだい、その萎れたスミレみたいな声。……もしかして、紗耶香と何かあったのかい?」
少女はポカンと一瞬間の抜けた顔をしたが、すぐに元の暗い顔に戻って頷いた。本条の祖母は少女の目をじぃーと見つめると、肩をポンポンと叩いた。頭を傾げつつ、少女は本条の祖母の目を見返した。
「……あの子はとても不器用でねぇ。ああ見えて私以外の人間が苦手だったし、誰かを好きになることなんて万が一にもなかったんだ。でも高校に入ってしばらくした時から、人と積極的に関わるようになったの。気になって理由を聞いたら、”好きな人が出来た”って言ってたわ。……とっても、嬉しそうな声でね」
遠い過去の思い出を語るみたいに、本条の祖母は空の向こうを見つめていた。少女はより顔を暗くしてしまう。本条の祖母はハッとして口を押えた。
「……あっ、すまないね。喧嘩をしたなら、こんな昔の話よりも、どうすれば仲直り出来るとか解決法を言うべきだったね。……ふむ」
思い悩む本条の祖母に、少女は両手を突き出した。
「あの……私は一人でも、大丈夫、ですから」
「……そうかい。だったら、一つだけ。”この世は舞台、みな役者だ”。……なりたいものを、演じなさい」
「シェイクスピアの言葉、ですか」
「えぇ。……私の見立てでは、今、貴女に必要なのはこの言葉だと思うよ」
「……」
思い悩む少女の顔が少し晴れたのを見て、本条の祖母はふっと大きく息を吐いた。快活な笑顔を浮かべると、腕時計をチラッと見た。
「おや……そろそろお店の開店の時間だね。それじゃあね……あー名前、なんと言うんだい?」
「雨宮藍です」
「藍ちゃんね、うん。それじゃあね、藍ちゃん」
そう言い残すと、本条の祖母は元気そうな後ろ姿で走り去っていった。
「なりたいものを、演じる……私は……何になりたいのかな」
爽やかな風が、少女の蒼い髪を揺らした。
プリン醤油未だにやる勇気出ないが、美味しいのカ?