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亜鈴に付き添われながら、"あの部屋"の前に来た。ごく最近、入ったばかりの部屋。決して疑いたくなかった人の部屋。震える手を必死にいなしながら、ドアノブに手をかけた。
「……えっ」
二人の声が重なった。少女も亜鈴も、目の前に広がる光景に自分は夢を見ているのではないかと思った。その部屋には、一冊の本が落ちていた。同時に、あったはずの本や家具が"何一つなかった"のだ。まるで魔法によって消されたみたいに。少女たちは驚き戸惑いながらも、ひとまず本を取り上げた。タイトルは"Old Story"。よほど丁寧に扱われていたのだろうか、古びたその見た目も無くした時のままだ。恐る恐る例の二つ目の話、"Evening"の部分を開けようとする。……開かない。よく見ると、その話の部分だけ糊で張り付けられているらしい。無理に外そうとしたら、ビリビリになってしまうだろう。どうしたものかと悩んでいると、亜鈴がそれを取り上げてしまった。はっと後ろを向くと、糊付けされたページを無理矢理こじ開けてしまった。案の定、ページはビリビリに破けてしまっている。
「あ、亜鈴!な、なんてことを……これじゃあ本が読めないじゃない!」
「仕方ないだろ、くっつけられていたんだし。それよりも問題はこっちの方だ」
ページの隙間に手を入れ込むと、中から一通の便箋を取り出した。便箋はある程度の月日を経たモノらしく黄ばんでおり、TELの隣には”自分と同じ名字の者の名”が書かれていた。少女は反射的に取り去ると、亜鈴がおいっという声も無視して乱雑に封を破り開けた。逆さまにして中身を落とすと、折りたたまれた手紙と星の形をした”何か”が出てきた。星の”何か”はよくおもちゃのおまけにでも付いてくるような、プラスティックの何気ない物だった。そちらも気になったが、当面の課題はそちらではない。少女は折りたたまれた手紙を開いた。
『この際なのではっきり言います。前野、貴方は狂人よ。物語は物語足りえるからこそ、狂人は存在しうるし、それが問題化することがないの。そんな当たり前の事、貴方にもわかっているはずでしょう?だというのに、貴方は物語を一つの現実にしようとしている。確かに私は貴方のことが好きだった。貴方の下手くそで現実離れした作品が、どうにも好きだったことも真実よ。でも、私と貴方は別れてしまった。私は別の人と結婚したの。いつまで貴方は夢を見ているのかしら。早く現実を見て、貴方も貴方の幸せを掴んで。それじゃあね』
少女はその場にへたり込み、星形の”それ”をただただ見つめた。
冬休みなので本を読んでいるんですが、原田マハ作品にハマりかけてます……楽園のカンヴァス読んだけど、文学と絵画の親和性というか、文学と絵画は表裏一体というか、なんというか……最高でした、至福。