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勢いよく上がる炎。黒い煙はすぐに中を蔓延していき、視界は真っ黒になった。このままでは少女どころか自分までも死んでしまう。どうにか火を消そうにも、もちろんだが水なんて持っているはずがない。もう後戻り出来ない場所にいた。もう私に出来ることはただ、前に進むことだけだ。自分の舌を血が滲むほどに噛みながら前野のいた十字架の方へと走る。
「……えっ?」
いない。そこには十字架に括り付けられた少女も、あの微笑を浮かべていた前野もいなかった。代わりにそこにあったのは、少女を縛っていた縄とガソリンの入っていたタンクだけだった。黒い煙を吸い過ぎたせいだろうか、さすがに意識が遠のきかけた。けれど、こんな場所で死んでいる場合じゃない。口を覆いながら、周りをキョロキョロ探すと裏口らしきものが開いているのに気付いた。なんとかあそこから、あそこから出なければ。もはや執念だけしかなかった。本条はケホケホと咳をしながら、裏口へと駆け抜ける。
「……っはぁ!はぁ……はぁ……はぁ……」
口の中が血の味でいっぱいだ。周りには少女と前野の姿は見えない。教会の前には既に野次馬が出来ており、本条の姿を見つけた数人が駆け寄ってくる。
「大丈夫かい、キミ!?」
「もしかして君が放火したのか?」
「あぁ……神よ……罪深きこの女性を許し給え」
身体が動かない。言うことを聞かない。少女を助けたいのに、助けなければいけないのに。動け、動け。
「ひとまずこの子を救急車で……」
「ひ、必要……ありません……」
「しかし、キミ、煙を吸ったんだろう?だったら……」
「邪魔しないで……ください。私は!」
「”私はそんなクソみたいな身体で少女を助けたい”……とでもいうつもりか?」
野次馬を潜り抜けてきた男、声だけで分かる。というか、ついさっき聞いたばかりの。
「まぁ俺に任せておけ。”時間”は稼いでおいてやる」
そこで私の意識はブラックアウトしてしまった。それからどれだけの時間眠っていたか分からない。ただ後悔の念だけが私の中に渦巻き続け、あの雨音が……雨音だけが脳裏に染みついているように鳴り続いていた。次に目が覚めた時にいたのは、病院だった。それも、警察病院。幸い手も足も普通に動いていたが、ただ一つ。舌の痛みだけは未だにヒリヒリとあれが現実だったことを示してくれていた。
「は、早くアイアイを探さないと……いやでも、もう……」
窓の外は既に明るくなったいる。少なくとも、一夜は明けたわけだ。だったらもう、アイアイは既にあの男に殺されている可能性も十分あり得る。でも、”そうでない”可能性も十分にあり得るのだ。決心したなら、早くしないと。本条は腕に刺さっていた針を引き抜くと、ベッドから降りた。ふっとその時、何かが一緒に床へ落ちた。何かと床を見ると、白い紙。拾い上げると、ただ一言。
「雨宮藍はまだ生きている」
昨日エイプリルフールだったでマジですか!?(後書き連続で書いてるのに白々しいが?)
まぁでも、私は言葉の魔術師じゃあるまいし、上手い嘘も思い付かないから仕方ない。
種も仕掛けもないぐらい、私の中身は空っぽだからね!(言ってて恥ずかしくないか?)