AI   作:海沈生物

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 目をキラキラと輝かせながら先を歩く本条を微笑ましく見つつ、二人はゲームセンターへと足を進めていた。学校からほど近くにあるショッピングモールの中にあるらしく、少女はその近さになんだか安心感を覚えた。しばらく何も話さずとも上機嫌な本条だったが、少し時間が経つとその熱が少し冷めてきたらしく、少女に歩幅を合わせ始めてくれるようになった。ニコッと少女と目を合わせる本条。

 

「ねぇ、アイアイ。こうやって二人で一緒にいる機会なんてほとんどないんだしさ、どうせだしアイアイの読んでいる本の話聞きたいな。私、本を読むのが苦手だから滅多に本を読まないんだけど、昔から誰かに本の内容の話をしてもらうのは好きなんだ。毎晩寝る前に、お母さんに十冊も読み聞かせてもらっていたぐらいだからさ」

 

「うーん。だったら、ちょうど昨日の夜に読み切った”Old Story”っていう短編集の話でもいいかしら?」

 

 本条は少女の両手をガシッと掴んだ。

 

「全然いいよ!確か……昨日の昼休みに読んでた原書の本だっけ?どんな話なの?」

 

 少女はコホンとわざとらしい咳をした。

 

「この作品は”Love”、”Evening"、”No Hope”の三つの作品で構成されていて、それぞれがそれぞれの味を持っているの。例えば”Love"。この作品はある中世の時代の騎士が散歩をしている途中で出会った、姫が扮した村娘に恋をして、でも叶わないって話なの。感情の描写がとても秀逸で、特に二人が永遠の別れを誓うシーンは……もう……人間の心を持った人なら、皆切なく思うだろう内容だったわ……」

 

「ふーん。そうなんだ……」

 

「……はぁ」

 

 素っ気ない返答に少女は呆れたが、あえて口に出さないでいた。そこから着くまでは終始無言だったが、なぜか本条は少女の姿を見ながらニコニコしていた。少女は少し不気味だと心の中で少し引いた。

 ゲームセンターに着くと、本条は真っ直ぐUFOキャッチャーエリアへと突っ走って行った。少女は元気溢れているなと詠嘆しつつ、のっそりと跡を追いかけていった。

 

「……あっ。アイアイ、こっちこっち!」

 

 いつの間にか制服から謎のキャラクターが刷られたTシャツに着替えているのに、少女は当惑を隠せなかった。小走りで本条の元に向かうと、ちょうど本条の着ているTシャツのそれと同じキャラのぬいぐるみが、本条の隣にあるUFOキャッチャーの中に入っていた。

 

「ねぇ、本条さん……そのキャラクター、何……?」

 

本条はくりくりとした目を輝かせた。

 

「ふっふっふっ……これはね、”ほむんくする君”っていう名前の超絶可愛いマスコットキャラクターなんだよ!」

 

「超絶……可愛い……?」

 

「ほらほら、見て見て!ここの鼻筋のカーブとか、この大学芋みたいな肌のカラーリングとかさ、あとあとあと……」

 

 少女は本条の唇に右手人差し指を当てた。一瞬本条はその意味が分からなかったが、直ぐに察して口を止めた。今日何回目か分からないため息を少女はついた。

 

「それで。本条さんはこのぬいぐるみを取ってみたいわけね」

 

「ご明察!いやーアイアイやっぱり賢いね!」

 

 こんなことで褒められても全く嬉しくないと心の表面では思っていたが、身体は正直で少しだけ顔を赤くしていた。それを見て、本条は静かに微笑んだ。本条は鞄から”ほむんくるす君”が刷られた財布を取り出すと、とりあえず一枚、百円玉を取り出した。

 

「アイアイ、UFOキャッチャー名人の私の勇姿見ていてね!」

 

「……えぇ」

 

 少女の見立てでは、このぬいぐるみは五百円程度の価値だと踏んだ。五回までなら失敗しても安上がりだが、それから先はするだけ無駄だろうとも。百円玉が機械に入ると、軽快な音楽が流れ、二つあるボタンの内の片方が光りだした。横矢印マークが書かれている。本条はゴクリと息をのみ、ボタンを押した。ジィーという機械音をと共にアームが動いていく。ちょうどぬいぐるみの辺りにアームが行くとボタンを離し、今度は二つ目のボタンが光り始めた。少女は同様にボタンを押して、ちょうどぬいぐるみの端の辺りでボタンを離した。それからワンテンポ置いて、アームが降りていく。少女はこれの何が楽しいのだろうかと冷めた目で見ていたが、心の奥底ではやってみたいと期待感を募らせていた。アームがぬいぐるみを掴む。しかし、アームの掴む力が弱いのか、掴んですぐにぬいぐるみを落としてしまった。

 

「……ふにゅう。も、もう一回!」

 

 財布からまた百円玉を取り出し、機械の中に入れる。同様にボタンを押し、またぬいぐるみを掴んだ。だが、やはりアームが弱いのだろう。パタンとぬいぐるみを落としてしまった。

 

「……も、もう一回!」

 

 また百円玉を財布から取り出そうとする本条の手を、少女の手が掴んだ。本条は何事!?と言った感じで顔を赤らめている。少女はため息をついて鞄から自分の財布を取り出すと、百円玉を取り出した。

 

「私に任せて」

 

「アイアイ……」

 

 少女は百円玉をかちゃんと機械の中に滑り込ませた。軽快なBGMが鳴り、少女の心を煽る。彼女ははぁぁぁふぅぅぅと深く呼吸をすると、ボタンを押した。アームが動かされていく。

 

「……ここよ」

 

 ちょうどぬいぐるみの角の辺り。光るボタンを二回押して、成分表示等が書かれた白い部分がある辺りにアームを置いた。ごくんと本条は息をのむ。少女は平然とした顔でその光景を見つめている。アームが降りていく。降りていく。降りていく。やがて下まで降りると、ちょうど白い部分の隙間部分にアームが挟まった。そのままアームが持ち上がると、搬出口にまで運んでいき、ボトンとぬいぐるみが落ちた。テレテレッテテーと軽快な賞賛する音が鳴った。

 

「おぉ!すごいね、アイアイ!」

 

「……別に、普通だわ」

 

 そう言いつつ少女は搬出口のぬいぐるみを取り出した。改めて”ほむんくする君”の顔を見つめる。途中で折れ曲がった鼻筋、分厚いたらこ唇、禿げた髪の毛。少女はその姿を見て、直ぐ決断した。

 

「いら……じゃなくて、今日ここに連れてきてくれたお礼にあげるわ」

 

「ほほほほ、ほんと!?ありがとう、アイアイ!」

 

 ぬいぐるみを受け取った本条はぴょんぴょんと飛び跳ねると、ぬいぐるみをぎゅうと抱きしめた。少女はその姿になんであんなもので喜べるのかという呆れと同時に、けれど喜んでもらえてうれしいな、と強く感慨を覚えた。




市販の蜂蜜梅干しは実質おやつ
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