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ショッピングモールを後にした二人はその足で商店街に向かった。少女の妄想ではサボりをするような人間はもっと裏社会的な行為をすると思っていた。例えば手頃なヤンキー引っ掛けて遊んだり、昼間から”そういう場所”に行って”然るべき行為”を行ったり、そういったことを。しかし本条の行動を見た感じ、案外サボりと言っても皆が皆、そんな破廉恥なことをするわけではないのだと、強く感じた。
しかし商店街も真ん中辺りに着いた頃、本条は突然真っ暗な裏路地に入り始めた。入り始めた頃はまだ明るさが残っていたので大丈夫だと思っていたが、段々少女は不安を募らせていった。
「あ、あの……ほ、本条さん?」
足を止めて、本条は少女の方を向く。ちょうど先程少女がプレゼントした”ほむんくする君”を抱きかかえている。
「ん?どうかした、アイアイ?」
「あの……ど、どこに向かっているのかしら?」
「大丈夫だよ、もう少しで着くからさ!」
「いや、そうじゃなくて……」
「さぁ行こう、行こうー!」
最悪何があってもいいよう、少女は護身用にと鞄の中の原書を握り締めた。コツンコツンと二人の足音だけが響く中、ついに目の前に白い光が見えてきた。少女はごくりと息を飲み込んで、原書を持つ手に力を入れた。しかし、光の先の光景を見た途端、その力も緩まった。なんとそこにあったのは、小さな駄菓子屋だった。てっきり奥は袋小路になっていて、そこにバッドを持ったヤンキーが何人も座っていて、少女にあんなことやこんなことをしようとスタンバイしていると恐れていた。けれど実際は、子供一人大人一人もいないような辺境で、少女は拍子抜けした。駄菓子屋の中にはうっすらと優しそうなおばあさんがいるのが見えたが、そこら一帯にはそれ以外の人影が見えなかった。
「えっと……本条さん?この駄菓子屋は一体?」
ふっふっふっと本条は自慢げな顔をした。
「何を隠そうこのボロ駄菓子屋、私のおばあちゃんが細々と続けている駄菓子屋なんだよ!老後のあまりに退屈な生活をどうかしようと、若い頃に荒稼ぎしたお金を資本に駄菓子屋を始めたものの、場所が場所だから毎月大赤字!そんな素晴らしいおみ……」
そこまで言った時、突然お店の方から野球選手が投げたのではないかと思うぐらいのスピードで袋に入ったうまい棒が飛んできた。運よく二人が立っている真横の壁にぶつかった為に回避できたが、うまい棒は袋の一部が破けて中身が粉々になっているのが見えた。
「もう、おばあちゃん!友達連れてきたんだから、突然うまい棒投げてくるのはやめてよ!」
本条の声に呼応するようにまたうまい棒が飛んでくる。今度は二本も。今度のうまい棒は良く見て見ると、何か紙が巻きつけられていた。本条は三本のうまい棒を拾うと、その紙を取り外して広げた。そこにはこう書かれていた。
『店の前で堂々とこの店の批判をするんじゃないよ、紗耶香!次そんなことをしたら、うまい棒乱れ舞の刑だからね!あと、その粉々になったうまい棒はお友達にでもあげな』
此の祖母にして此の娘ありなんだな、と少女はとても納得した。同時に心底呆れたが。少女は本条から粉々になったうまい棒を受け取ると、微かに開いた隙間を拡張して、中身を粉薬でも飲むみたいにサァァと喉の奥に流した。本条は慣れた手つきで袋の穴を拡張して、二つ一緒に喉の奥に流し込んだ。
「うーん、美味しい!」
本条のことを冷めた目で少し見たが、言っても無駄かと大人しく駄菓子屋に入店した。中は古き良き駄菓子屋と言った雰囲気で、子供の頃に見たことがあるようなお菓子が並んでいた。
「あ。ミックス餅」
「それ美味しいよね。爪楊枝で一つ一つ食べるの楽しいし」
「……そうね」
少女は両親との優しい記憶を思い出して少し感傷に浸ったが、湿っぽくしたくないと思い、すぐに振り払った。少女が顔を上げると、レジの前でお茶を飲む本条の祖母と目が合った。厳しそうな目つきの中にどこか闇を感じて、三白眼の少女は少し親近感を持った。しかし本条の祖母にとってはあまり好印象ではなかったのか、すぐに視線を逸らされた。
「……ねぇ、本条さん」
「ん?なに、アイアイ?」
「……本条さんの祖母ってどんな方なの?」
「うーん。戦争でおじいちゃんと死別して、なんだっけ……みぼ……みぼ……」
「未亡人?」
「それ!みぼーじんになったらしいんだけど、そこから一人で超稼いで、今はここで半隠居暮らししてるらしよ」
「ふーん……なるほどね」
つまるところ、あの目の中の闇の正体は私と似て非なるものなのか。少女は、少しだけがっかりした。とりあえず本条に頼んでオススメの駄菓子を教えてもらうと、一緒にレジに持って行った。
「えっと……合計で百五円になるよ。ほら、紗耶香。どうせそのぬいぐるみ、そこの三白眼のお友達に取ってもらったんだろう?百五円ぐらい奢ってやりな」
「むぅー分かってるよ。むしろ払わなかったら、私の腹の虫が踊るからね!」
「……はぁ。三白眼のお友達さん、こんなバカ娘だがこれからも良くしてやっておくれ。悪い子ではないからね」
「……えぇ、まぁ」
本条の祖母に軽く頭を下げて店を出ると、いつの間にか空は夕焼け模様になっているとに気付いた。流石に夜遅くまで遊んで互いの両親に捜索届を出されたら困るということで、二人は路地裏を抜けたところで別れることにした。
マーライオンの口から豆乳流れないかな