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家に帰ると、イルカのエプロンを着た前野がソワソワしながら玄関前に立っていた。少女が小走りで前野の方に走っていくと、その姿に気付いて前野も少女の方に向かって歩いてきた。二人が合流すると前野は心配そうな顔をして「大丈夫?」「怪我はなかったかい?」などと少女を質問攻めにした。別段やましいことはしていないので少女が大丈夫と受け答えすると、それならよかったと言ってほっと一息ついた。
「それにしても学校から藍ちゃんがサボタージュしたって聞いて驚いたよ。藍ちゃん、生真面目だからこういうことするのに抵抗あると思っていたからさ」
「は、はい……私一人じゃきっと、こんなことしなかったと思います」
「なるほど……”昼”が出来たんだね」
「……”昼”、ですか?」
「ははっ。何でもないよ。……それじゃあ亜鈴君も回鍋肉作って待ってるし、家の中に入ろうか」
「……は、はい」
前野が少女の頭をポンポンと撫でると、ぽぉぅと少女の頬が火照った。
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ご飯を食べ終えると、前野の勧めで少女は一番にお風呂に入ることにした。湯舟には白濁色の入浴剤が入れられており、大根のように少女の疲れた体にとても染みた。湯舟から漏れ出す湯気を見つつ今日あったことを思い出すと、なんだか夢の中の出来事の様で少女はイマイチ実感が湧かなかった。前野の言う通り、少女は理系人間と話せない以外はとても真面目に生きている。しかし、そんな少女が学校をサボって遊び惚けるなんて、夢の中の出来事にしか思えない。明日目が覚めたらこれは悪い夢で、本当の私は普通に学校に行っていたのではないか。そんな気がしてならなかった。でも、本条におごられて買った駄菓子は部屋に置いてあるし、なにより夢と違って今日の事は未だ鮮明に覚えている。
「……でも、非日常だったけど、今日は楽しかった」
新しい出会い、不安、恐怖、そしてうまい棒。あと、”ほむんくるす君”。大好きな作家の本の一ページ目をめくるあの感覚とは違った、また新たな感覚。少女は一生今日という日を忘れないだろうな、と強く思った。
「さて、上がろうかな」
少女は湯舟から上がって、ドアを開けようとする。しかし、なぜかドアが開かなかった。無論お風呂のドアに鍵なんてついていないし、開かない道理はなかった。もし開かないとすれば、誰かが意図的に開かないように細工をしているのだろうか。なんにしても、長時間お風呂の中にいたらのぼせて倒れてしまう。少女は思いっ切り息を吸って……吐いた。
「前野さーん!」
「…………」
しかし返答はなく、残響だけが残った。どうしようか。少女は必死にドアをガチャガチャして、開かないかと試してみる。しかし、何かが向こう側に突っかかっているのか、やはり開かない。そんなことをしている間にも少女の身体は熱くなっていき、目の前の世界がクラクラとしてくる。
「あっ。窓開けたらい……」
そのことに気付いた時には手遅れで、少女はけたたましい音を立ててお風呂のタイルの上に倒れた。それを確認したや否や、お風呂のガラスのドア越しに誰かの影が蠢いた。
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少女が気が付くと、そこは家の庭だった。家の電気は当に消えており、空には月が煌々と白い光を漏らしていた。一体何があったのだろうか。少女が立ち上がろうとすると、やけに周りがへこんでいることに気付いた。そして、隣にはスコップが置かれていることも。
「……」
少女は身体に付いた土を払うと、そのまま何事もなかったかのように、なるたけ音を立てないように家の中に入っていった。
うどんは極細いのが好き。ほうとう?のアレが好き。