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いつものように何事もなく学校に来た少女だったが、やはり昨夜のお風呂からのことを思い出して気持ちが暗かった。そう思い悩んでいる時、バンっと机が叩かれる音がした。ぺちゃくちゃと話していた周りの人間達は突然の大音量に黙り込み、少女の机の方に視線をやった。
「ア!イ!ア!イ!お!は!よ!う!」
「……あっ。ごめん、本条さん。おはよう」
「もーアイアイ。ぼぉーとしてたけど、どうかしたの?」
少女は少し目線を下げた。周りの人々はいつの間にか平静を取り戻し、ぺちゃくちゃ喋っている。
「……まぁ、なんでもいいよ。それより今日、放課後にご飯食べに行かない?」
今日の放課後。大した用はなかったはずだが、二日連続で遅く帰ったらまた前野さんに心配をかけてしまうかもしれない。少女は悩んだが、断ることにした。その言葉に本条は残念そうな顔をしたが、仕方ないと言ってそのまま友達の元へと駆けていった。
「……ねぇねぇ紗耶香、昨日のニュース見た?」
「うん!まさかアレがアレなんてね……」
「本当やばいよね!」
いつのものように、少女と一緒に話すより楽しそうに話す本条の姿。少女の心の中で、それがなんだか引っかかった。悔しい、悲しい、残念。そう言った感情が入り混じったような何か。形容し難いその感情。少女は未だその感情の名を知らなかった。気を紛らわそうと借りていた原書を読み返そうと鞄を漁る。
「……あれ」
ない。ない。本がない。確かに昨日家で読んで鞄に仕舞った記憶はあるが、部屋に忘れてきてしまったのだろうか。仕方なく、来週に迫る中間テストの勉強をしようと勉強道具一式を出す。数学B以外の教科は前野に教えてもらっているので安泰なのだが、数学Bだけはどうに無理らしいのだ。ノートと問題集を開けると、少女は紙との睨み合いを始めた。べくとる、ないせき、ふくそすう。まるで別の世界の言語みたいで、少女の目はぐるぐると回った。
「……こんな時に、誰か頼れる人がいたら」
「それじゃあ私達が教えようか?」
「……へっ」
背後にはいつの間にか、本条とその友達らしき人達の姿。しかもその友達の中にはいかにも理数系っぽい顔をした人間もいた。反射的に少女の口が動かなくなる。
「……いや私は教えるの苦手なんだけど、波間ちゃん数B得意らしいの」
えっちょっと明らかに嫌がる女子生徒を少女の前に突き出す。少女は無味無臭の空気を吸わされて感想を聞かれた時のような顔をしている。その顔に気付かないまま、本条は話を進める。
「でもアイアイ、数Bが苦手なんてね……でも気持ちは分かるよ。確かに計算が複雑怪奇だしね……うんうん」
「……ごめん」
「えっ……」
少女を囲む包囲網に無理矢理穴を開けると、少女はそのまま走り去って行った。無理矢理退かされた女子生徒はカンカンに怒っていたが、少女は世界が真っ暗になったようで、ただただ安心できる場所へという意思しかなかった。
中華のモトは外れ多くてあんまり好きじゃない