よくよく考えたら、"まだ"ガールズラブ要素ないのでタグ外しときます。
※09月12日、勢いで若干シナリオ変えちゃいました。細かい訂正はまた今度……
あの外国人は、どうやら道に迷っていたらしかった。
なけなしの英語力で何とか道案内に成功した香澄達は、休憩の為公園へと立ち寄った。
ベンチに二人で腰かける。りみは、自身のカバンをぎゅっと抱きしめ俯いたまま呟いた。
「……香澄ちゃんはすごいね」
カバンを握る手に力が篭っていた。どこか、諦めたような表情にも見えたりみの言葉を香澄は黙って聞く。
「私、昔からすぐ固まっちゃうんだ。皆に見られていたり、急に何かあると、頭が真っ白になって、テンパっちゃって……。変わらなくちゃとは思っているんだけど……」
溜息をつく。ここで、励ましの言葉の一つでもかけることができれば良かったのだが、香澄には言葉が思いつかなかった。本当に辛そうに話すりみを見ると、一層香澄は何も声をかけられなくなった。
「私、香澄ちゃんに憧れてたんだ」
「えっ?」
聞き返してしまう。りみは、俯いていた顔を上げて香澄を見つめてきた。
「自己紹介とか、授業とか……。全部一生懸命で、楽しそうで。……ちょっと憧れてたんだ」
違う。本当は、怖かったのだ。臆病だったのだ。だから、香澄はその反対を演じているに過ぎない。勿論、素の自分が出ている所もあるがそれはそれ。局所局所で、弱い自分が出るのを隠しているだけなのだ。
だが言えなかった。香澄は黙ったまま、りみの独白を聞いていた。
「だから、バンドに誘ってくれた時、とっても嬉しかった。こんな私にも、手を取ってくれるんだなって」
「……」
「でも、私。ステージに上がるのが怖くって。皆に見られたら、頭真っ白になっちゃって、香澄ちゃん達に迷惑掛けちゃう。きっと、ガッカリさせちゃう」
「牛込さん……」
香澄は、ハッとしていた。
バンドを断ったのはりみなりに、色々考えた結果だったのだ。ただ、バンドを断ったとか、そんなものではなく。様々なことを考えた故に、誘いを断っていた。
そんなりみに、香澄はしつこく付きまとっていた訳で。
「そっか……」
それしか言えなかった。何か言えればよかったのだが、やはり言葉にならない。
「ごめんね」と、謝ってくるりみは、本当に申し訳なさそうにしていた。
ううん、謝るのは私の方。理由も分からず、ただただ付きまとい。しつこかっただろう、ただただ迷惑だったはずだ。
「ごめんね、牛込さん。私、牛込さんの気を知りもしないで……」
「あ、謝らなくていいよ! 理由も何も、私が言えなかったからなんだし……」
お互いに謝り合う。そして訪れる気まずい雰囲気。
そんな中、香澄は考えていた。
償い、と言ったら少し大事かもしれない。けど、なにかりみにしてあげられないかな。
もう少し優しく、付きまとうと言うよりも寄り添ってあげれれば、語りかけることが出来ていれば、こんなに気まずくはならなったかもしれないのに。
…………。
チラチラと、香澄の様子を伺うりみ。香澄が何か言うのを待っているのか、それとも気まずいからもう帰りたいのか。どちらにせよ、ソワソワと落ち着きが無い様子だった。
香澄は、落ち着きなくギターケースに着いた星のキーホルダーに触れた。
カシャリと音を立てる、香澄の大好きな黄色い星のキーホルダー。香澄は無意識に、星に助けを求めていた。
星を纏えば無敵になれる! 困難だって撃ち抜ける! どんな場所へだっていける!
昔のゲームでそんなキャラクターがいたはずだ。香澄はやったことがないけれど、ネットでちらりと見た事がある。
体力のない小さい状態でも、星に触れれば軽快な音楽が響いてきて。走り始めて、敵をポコスカと薙ぎ倒す。そんな配管工のゲーム。
"そんな星に、私はなりたい!''
香澄はキーホルダーから手を離し、ギターケースを開けた。首から
その感わずか30秒。りみは、ポカンとしながら香澄を見ていた。
そして、香澄はピックを振り下ろす。力のD! 漲るG! 迸るD! 締めのA!
ジャカジャカとかき鳴らすその様子を、牛込さんはただただ見つめている。
そして香澄は。唯一弾ける「トゥインクル・スターダスト」を歌う。
「か、香澄ちゃん……?」
戸惑いに染まるりみ。最初こそそうだったが、次第に歌に耳を傾けていく。
「トゥインクルトゥインクルひーかーるー♪おーそーらーでーひーかーるー♪」
歌う。ただひたすらに、歌う。
本当だったら、この気持ちを歌にするのだろう。だが、生憎。香澄はこの曲しか弾けない。
けれど、想いを伝えるために、歌う。
言葉で伝えられないのならば、音楽で伝えればいい。この星と一緒なら、何処へだっていける。なんだってできる。なんだって伝えられる。
短い歌が終わった。
香澄はりみを見た。その顔は、先程の悲しみの影が感じられるようなものではなく。どこか、明るくなったように伺えた。
香澄は大きく息を吸い込み、想いを吐いた。
「牛込さん、本当にごめんなさい。私、牛込さんの気も知らずにすごく迷惑かけちゃった」
「え、いや、大丈夫だよ! そんなに気にしなくても……」
「ううん、私が気にするの。牛込さんに迷惑をかけちゃった……周りを見ないで、自分の独りよがりで突っ走っちゃった私が許せないの」
黙り込むりみ。香澄は言葉は言葉を続ける。
「だから、私決めたよ。私、牛込さんの手助けをする」
「え?」
「牛込さんの為に、
ハッとした表情を浮かべるりみりん。言葉こそ発さなかったが、香澄はそれを肯定と捉えた。
「私、自分を変えたいのなら、今を変えないといけないと思うんだ」
「……」
何かを考えるように、りみは俯いた。
「けど! その勇気がないなら、私が分けてあげる」
「……!」
「こんな私で良ければ、いくらでも。変わることに勇気が出せないなら、私が分けてあげるから!」
りみが、香澄を見つめる。今度はしっかり、目と目を合わせて。
りみはなにか言いたそうに口を開いているが、何も言うことは無かった。
「それが、せめてもの私のやれることだから。それに……」
大きく息を吸う。夕方の、清涼感のある空気を精一杯呑み込んだ。
「私達、
……一番星が、一瞬瞬いた気がした。
香澄はランダムスターをしまい、ケースを背負う。
「本当にごめんなさい! また明日ね!」
本当は、バンドに誘いたかった。けれどそれでは私の独りよがり。もう、1人でも突っ走ってはいけないから。
だから、バンドには誘わない。もし、一緒にやってくれるなら程度に、留めておく。
最後に笑顔をりみに見せて、香澄は踵を返した。