遠い音楽   作:冴月

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 次の日。今日は、たえがギターを教えてくれる日だった。

 たえと一緒に、有咲の蔵へと向かう。その最中で、香澄は例のあの曲についてたえに話す事にした。

 

「私が歌詞で、有咲がメロディ作るの!」

「そうなんだ。有咲って曲作った事あるの?」

「ないって言ってたけど、勉強するんだって!」

「へぇー……」

 

 そんな会話をしながら、有咲が待つ蔵へと向かった。

 

 有咲の家に着くと、例の曲のメロディが聞こえてきた。元気が出るそのメロディにテンションが上がった香澄は、うっきゃあ! と声を上げ、たえの手を引き蔵へと入っていく。

 

「おたえこれ! この曲! 行こ!」

「うん」

 

 蔵に入ると、例の曲はちょうど終わった所だった。一曲弾き終えた有咲は、ヘッドホンをつけながらノートパソコンと睨めっこをしている。

 

「有咲、おはよう!」

「んー」

 

 生返事が返ってきた。有咲は作業に集中してしまっていた。

 香澄達は、邪魔をせずそっとしておくことにした。

 静かに荷物を置いて、ランダムスターを取り出す。ギターとチューナーをシールドで繋ぎ、チューナーの電源を入れる。針を睨み、ペグを調節しゆっくり落ち着かせて言った。

 一方のたえは、スナッパーを取り出した後ほとんどチューナーを使わず、ぴん、ぴーんとハーモニクスで調弦をする。ササッとその作業を終わらせると、シールドをアンプに差し込んだ。

 そしてすぐさま、うさぎのピックを取り出す。

 

「……おたえ?」

 

 気づいた有咲がヘッドホンを外す。それを確認したたえは、にっと笑って弦へピックを振り下ろした。

 

「~~♪~~♪」

 

 ぶるぶるぶるぶると、香澄達は震えた。これがロックなのかと改めて実感させられるような音響に、ザンジとバルは飛び上がって驚く。

 たえのコードストロークは続いていく。びりびりびりびりと唸るサウンド! 音圧の向こう側! おたえのギターは香澄たちの魂を震えさせた。

 

 フレーズを弾き切ったたえ。ふぅ、と息を吐きながら、少し乱れた髪を指で梳いた。

 

「すごいすごい! すっごいキラキラドキドキした!」

 

 うきゃー! と声を上げて立ち上がり、たえの手を握る。さながら臨場感のあるライブを見ているようで、香澄は興奮しながらたえの手をブンブンと振った。

 

「なんで! なんでこんなキラキラのフレーズ弾けたの!? 実は準備してたとか!?」

「準備? してないよ。有咲が打ち込んだ曲聞いてたら、パッとこのギターソロ思い出したんだ」

「思い出した?」

 

 有咲が聞き返す。たえは頬に人差し指を当てて「んー……」と考え出した。

 

「昔、音楽教室通ってた時のことなんだけど……。教室を間違って入っちゃった時に、男の人がギターを弾いてたんだ」

 

 その時に聞いたギターがなんて格好良かったことか。たえは一気にギターにハマり、お母さんにお願いしてギターを習い始めたという。

 

「その時のフレーズが忘れられなくって。弾けるようになってから、今でもたまに弾いてたんだけど……」

 

 この有咲の打ち込んだ曲を聴いていたら、「これしかない!」って思ったらしい。まるでパズルのピース2つが揃ったような感覚だったとか。

 

「なるほどなぁ……」

 

 有咲は頷いていた。少し考え込むような素振りを見せた後に、口を開く。

 

「もしかしたら、その時の人が香澄のランダムスターの持ち主だったのかもな」

 

 なんと、そんなことが有り得るのか。香澄は何か本のようなものを広げる有咲に聞き返した。

 

「ちょうどこのギターが入ってきたのって、私たちが子供の頃……から少し経った時なんだよな」

 

 仕入れ台帳なるものの日付を3人で確認する。その日付は、確かに10数年前を示していた。

 

「その持ち主が……もしくはそのバンドメンバーが、この曲を完成させようって時におたえは鉢合わせた……とか」

 

 それって……。そうだとしたら……。

 

 なんて、なんて奇跡なんだろう。

 

「すごい……すごいすごいすごい!」

 

 きゃあ! と声を上げる香澄。香澄は首からかけていたランダムスターに触れながら言った。

 

「なんだかすっごいドキドキした!」

 

 香澄は思わずギターにかき鳴らす。急に響く音圧に、うつらうつらしていたバルがビクリと反応した。

 

「ねぇ、この曲絶対完成させよう!」

 

 香澄は2人を見つめる。飛びっきりの笑顔で、2人に語り掛けた。

 

「こんなに最高な曲、完成させないなんて勿体ないよ! もっと調べて、勉強して! 最高の音楽にしよう!」

 

 キラキラを振りまきながら、香澄は話す。

 頭上に瞬く幾千もの星に、たえと有咲は魅了される。

 

 星の鼓動(ホシノコドウ)は、3人の胸の中で確かに動き始めていた。

 

 

 

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