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昼休み。有咲を連れて、皆で中庭に向かった。
幸いな事に天気は快晴な上程よく温かく、サラサラと風が吹く気持ちのいい気候となっていた。
シートを芝の上に敷いて、皆でお弁当を開く。流石の有咲も緊張が解れてきたようで、気がついたらたえとおしゃべりをしていた。
「あ、そうだ有咲。私の卵焼きと、有咲のハンバーグ交換しない?」
チラチラと自分の卵焼きを見せるたえ。箸につままれた卵焼きを目で追いながら、有咲はハッとした表情で呟いた。
「これが噂の『おかずの交換』ってやつか……?」
全力でおかしな事を、真剣な表情で言う有咲。
香澄を含めた皆がぽかんと有咲を見つめる中、沙綾はついに吹き出してしまった。
「ぷっ、あはは! 市ヶ谷さん面白いね」
「い、いや、今のは……!」
自分の言ったことに気づいたのか、赤くなり慌てふためく有咲。ひたすらに違う違うと連呼するその姿は、すっかり蔵と同じテンションに戻っていた。
「あはは……ごめん、市ヶ谷さん……可愛い」
どうやら沙綾のツボにハマったらしい。沙綾はお腹を抱えて笑いだしていた。
沙綾に可愛いといわれた事と重なり、更に赤くなる有咲。その状況の有咲に、香澄達はここぞとばかりにおかず交換を持ちかけていった。
数十分後。お昼ご飯を終えた香澄達は、おしゃべりに花を咲かせていた。有咲と沙綾も徐々に仲良くなっているようで、少々戸惑いつつも笑顔を浮かべるまでに至っていた。
そんな中、香澄は不意にあることを思い出し、声を上げる。
「そうだ! 皆来月のこの日空いてる?」
手帳を取り出し、カレンダーの日曜日を指さした。
「この日がどうかしたの?」
りみが首を傾げる。香澄は、1枚のチラシをポケットからだし、皆に見えるように広げた。
「うん! 近くの商店街で、イベントステージの募集があったんだ! 」
「イベント……。あー、商店街のお祭りのことだね」
沙綾が補足してくれた。
来月の土曜日、日曜日に商店街でお祭りがあり、そのイベントステージの募集が学校にも来ていたのだった。
イベントステージは日曜日に行われる。香澄はそこで、初ライブを出来ればなーと思っていたのだ。
「……うん、皆空いてるんだったらやってもいいんじゃないか?」
以外と有咲が乗り気であった。いつもなら、面倒くさがってやらなそうなものだが乗り気なのは珍しい。
「私も、皆でライブしてみたいなぁ……」
りみが目を輝かせる。香澄とたえ、有咲は流れでライブを一度行なっていたものの、正式にはやっていない。りみというベースを加えた新生蔵パーティの初ライブを、そうそうにして見たかったのだった。
「それじゃあ決まりだね! ……沙綾!」
香澄達を、母親のように笑顔で見守っている沙綾に声をかける。
「沙綾も、私達。私達4人の、"蔵パーティ"のライブ見に来てくれる?」
「んー……時間によるなぁ。私の家も、当日お店出すからなんとも言えないんだよね」
曰く、お昼時などに重なってしまうと行けないとか。ただ、お店を出している場所自体は、ステージとかなり近いので隙を見て見に行くという。嬉しい限りだった。
「それじゃあ、今日から頑張っていこー!」
「「おー!」」
昼休みもあと数分と言ったところ。香澄達の声は、学校中に響いていった。