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ひたすらに泣きあった後は、商店街ライブのことについて4人で話し合った。
セットリストをどうするだとか、どうせならオリジナル曲を作ってをやりたいだとか、衣装可愛いのがいい! とか。色々と意見が出て、今から香澄はドキドキワクワクすることになった。
「色々考えるのはいいけど、まずは曲を考えないとね」
「だな。……現実的に考えて、オリジナルが出来るのは1曲だ。練習も考えると、かなり短い期間で作らなきゃ行けないな」
たえの言うことに同意し、器用にくるくるとペンを回す有咲。書いていたノートを覗くと、『蔵パーティ(仮)初ライブセトリ!』と書かれていて、既にイエバンがその中に入っていた。
「あ、あのっ。……ちょっと考えてたフレーズあるんだけど」
りみが声を上げる。……すると、あれよあれよという間に有咲がノートパソコンを広げ、りみと打ち込みを始めた。
物凄く足が早かった。前から考えていたのだろうか。
香澄は負けじとスマートフォンで衣装のサイトを開きながら、たえに相談する。
「おたえ! 私達は服装について決めよ!」
「私、うさぎの刺繍入れたいなー」
相変わらず、たえは平常運転だった。
「よーし! それじゃあ、商店街ライブまで頑張ろー!」
「「「一、二、三、わっしょーい!」」」
商店街ライブに向け、声を合わせる。皆の気持ちがひとつになった瞬間であった。
☆☆☆☆
週初め。りみが作ったという三三七拍子の曲を聞いて、セトリに入れようと言う話になった。
とてもリズミカルで、ノリやすい。コールも入っており、盛り上がること間違いなしだった。
歌詞は、みんなの負担を考えて香澄が考えることに。りみから曲と歌詞のイメージは聞いているので、早速取り掛かることになった。
……ちなみに、たえはライブの衣装とメロディの装飾、有咲とりみは作曲、香澄は作詞、という感じに今別れている。
そんな調子で、昼間は学校、夕方から夜は有咲の蔵で猛練習。そんな日常が、数週間続いた。
けど、良い調子はいつまでも続かない。香澄は、段々と準備が進んでいくうちにライブを意識するようになってしまった。
要するに、緊張してしまっているのだ。準備も練習も上手くいってはいるのだが、イマイチ満足に弾ききれていない感じがする。
……スランプにでもなってしまったのだろうか。まだまだたえに頼っている部分が多いギターだが、そんなんでもスランプに乗るものだろうか。
何だかギターの音も弾けてないし、ドキドキしない。何が悪いんだろう……。
家でも練習してるたえにも「早すぎ」とストレートに言われるくらいには習得が進んでいる(と思う)。
やっぱり、初めてのライブだから不安なだけ? まだまだ準備が足りない? もっと細かくセリフとか決めた方が……いや、みんなで合わせる時間を増やす? それだとみんなの負担が……。
ぐるぐるぐるぐる旋回する不安の声。香澄は、ついに口に出してしまった。
「へぇ、香澄でも悩むことあるんだね」
月初めの席替えで、近くになった沙綾がからかってくる。それに異を唱えるべく、香澄は口をとちゃんとがらせた。
「なにそれー! それだと、私がいつも何も考えてないみたいじゃん!」
「だって……ねぇ?」
「ねぇって……ちょっとちゃんと教えてよー!」
沙綾に縋り付く。沙綾は、そんな香澄を見て笑って誤魔化した。
「あはは、ごめんごめん。……それじゃあ、香澄に一つ。いい言葉を教えてあげる」
沙綾はシャープペンシルをペンケースから取りだす。机の上に、サラサラと何かを書き込んだ。
「えっと……『POPPING』?」
「うん。
POPPING、POPPINGか。何度も口に出して唱えてみる。
「POPPING! ……どう? ちょっとは元気が出た?」
沙綾がはにかむ。一緒にPOPPINGと唱える度に、香澄はスっと気分が明るくなっていった。
POPPING! それは弾ける魔法のコトバ。
POPPING! それは輝くキズナのコトバ。
POPPING! POPPING! POPPING!
香澄は、唱える度に力が湧いてくる。勇気が湧いてくる。
「POPPING! ……うん、これなら頑張れそう!」
もっと熱く、踊れそうな気がした。
POPPING! POPPING! POPPING!
唱える度に胸が熱くなる。楽しくなる。これなら、これからの練習も頑張れそうだった。
「POPPING! ……ライブ楽しみにしてるからね、香澄。時間開けて見に行くから」
「POPPING! ……うん! ありがとうさーや!」