遠い音楽   作:冴月

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 あと1週間。それが、商店街ライブまで残された日数だった。

 一週間と言っても、皆でできる限りの準備をしてきたつもりだった。セトリもセリフも完璧に覚え、さらに精度を高める為に香澄達は練習した。

 ライブで着る衣装も無事に決まった。ネットショップで見つけたとても可愛いデザインのTシャツで、ど真ん中に大きく星が描かれたものが4色。私たちのイメージカラーだった。

 曲合わせも順調である。りみの三拍子の曲は、一部歌詞が決まり切っていないところはあるが、リズムといい曲調といい祭りでやるにはピッタリの曲に出来上がった。チョココロネの歌も、可愛らしい出来に仕上がっている。

 

 そう、全てが順調なハズだった。順調だったハズなのだが……。

 

「「……」」

「さあ、飛び出そう~♪」

 

 たえ、りみ、有咲がガチガチに緊張してしまっていた。

 ……いや、たえは緊張していないか。何故か、イエバンをアコギで弾き出しているくらいだ、大丈夫だろう。

 

「……あと一週間ないのか」

「だ、大丈夫だよ有咲! 一週間だけど、準備は順調じゃん!」

「うち、本番でミスしたらどないしよう……」

「大丈夫だよりみりん! まだ一週間もあるんだよ!」

 

 しまった、言っていることが訳分からなくなってしまった。りみと有咲のあまりの気の落ちように香澄自身もテンパってしまったようだ。反省。

 

「それにしても……」

 

 あまりの気の落ちようである。気の落ちようというか、心配でたまらないようにも見える。

 なんというか、少し前の香澄みたいだった。沙綾が言葉をかけてくれる前までの、心配ばかりで走り出せない私。

 ……それならば。

 

「有咲、りみりん! POPPING! だよ!」

 

 POPPING! 弾けるような、この言葉をかける。

 

「POPPINGって……弾けてるってこと?」

「うん! POPPING!」

 

 POPPING! それは、楽しくなれる魔法のコトバ。唱えれば唱えるほど、無敵になれる最強のコトバ!

 その意味を、香澄はみんなに伝える。

 

「POPPING♪」

「……POPPING!」

 

 たえが繰り返す。りみもそれに続き同じように呟く。

 

「……POPPING、か」

 

 有咲も続く。有咲は、少しの間目を瞑ると、なんの前触れもなくに立ち上がった。

 

「……そうだよな。どうせやるなら、弾けるようなライブにしないとな」

「うん! まだやってもないのに、気を落としちゃダメだよね!」

 

 有咲とりみが頷き合う。魔法のコトバは、二人を持ち直させたのだった。

 そんな中、アコギを弾いていたたえはいつの間にかエレキに持ち替えていた。そして、

 

「有咲、りみ、香澄。……ライブの練習したくない?」

 

 本当に唐突に、たえがそんなことを言い出した。香澄達を見回しながら、たえは言った。

 

「私、毎週決まった時間に路上ライブしてるんだ。有咲と香澄は知ってるよね?」

 

 有咲と共に頷いた。分からないりみの為に、香澄は補足する。

 

「おたえはね、大塚駅の通りで路上ライブしてるんだよ!」

「そうなんだ。凄いなぁ」

 

 りみりが羨望の眼差しをたえに向ける。たえは少し恥ずかしそうに答えた。

 

「そんな、習慣なだけだよ」

 

 ポリポリと頬を掻く。長続きしない香澄からしたら、路上ライブなんてものを習慣にするなんて考えられもしなかった。

 にしても、それと商店街ライブの練習がどう繋がるのだろう。

 

「えっと……りみ達も一緒にやるんだよ?」

「「……えぇっ!?」」

 

 練習って、そういう意味だったのか。たえを除く香澄達は、揃って驚きの声を上げた。

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