遠い音楽   作:冴月

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とりあえず1章終わる迄はガリゴリ進めていきますね。

その後に校正とか微調整とかまとめてやろうと思います。


32

 大塚駅のとある通り。夕方の、仕事終わりと学校終わりが重なる時間に、香澄達は各自楽器を手にもって集合していた。

 ちょうど帰宅に重なるということもあり、人通りもそこそこある。そんな中で、香澄達は初めての路上ライブをするのだ。……ちなみに、有咲のみはキーボードを持ってくることは流石にできず、手ぶらである。

 

「さ、何の曲やる?」

 

 ノリノリでエレキギターを用意するたえ。すでにチューニングを終えており、待ちきれない様子でベンベンと小さく音を出していた。

 

「私、練習中のカバーがいい!」

 

 香澄が声を上げる。ちょうど練習中の曲が何曲かある。いきなりオリジナルをやる前に、カバーで慣らしてからの方がいいだろうという考えからの提案だった。

 

「それなら、『God knows…』、『空色デイズ』あたりだね。上手く弾けるかなぁ……」

 

 不安そうにベースを抱きしめるりみ。そんなりみの肩に、たえは手を置いた。

 

「心配しなくていいよりみ。その為の練習なんだから!」

 

 ジャーン! とギターを掻き鳴らす。雑踏の中にギターの音が走った事で、何人かの通行人はこちらを見て立ち止まってくれた。

 その音に、有咲はタンバリンをカシャリと小さく鳴らす。

 

「ほ、ほんとにやるのか……」

 

 いつかの教室のような、武者震いを奏でる有咲。そんなの肩に香澄は手を置いた。

 

「大丈夫だよ有咲! POPPING!」

「POPPING……」

 

 POPPING。POPPING……と、お呪いのように呟く有咲。

 呟いていく内にに、「よし」と、覚悟を決めたような顔になって行った。

 

「みんな、準備はいい?」

 

 たえが確認する。香澄が「うん!」と快く頷くと、りみと有咲も、緊張しつつも固く頷いた。

 

「それじゃあ行くよ……聞いてください! 『空色デイズ』」

 

 

 

☆☆☆

 

 その後のことは、ドキドキで夢中になりよく覚えていない。

 

 ライブハウスで感じた身体の底から感じる鼓動、それまでとは行かないものの、みんなで演奏することがとても楽しくキラキラドキドキした。

 りみがベースでリズムを作り、たえがそれを色付ける。香澄と有咲が、それをまとめあげる。まさに、音楽(キズナ)を感じるひと時だった。

 聞いてくれたの人達も、次第に多くなって行った。最終的には、15人以上いただろうか。とても壮観だった。

 一曲終わると、パチパチと拍手が飛んでくる。それが心地よくて、一曲終わるごとに皆とひたすらに笑いあった。

 最終的にお客さんが離れず、イエバンまで即興で演奏してしまった。迫力はSPACEよりも少なかったが、それでも拍手を起こすには十分だった。

 

 ミニライブが終わった後、満月の夜。近くの公園で、香澄達は少し休憩することにした。一列に並んでいるベンチに、みんなで腰かけた。

 

「はぁっ……つ、疲れた」

 

 有咲がグイッと椅子にもたれかかった。ふわり、と有咲の髪を心地よい夜風が揺らす。

 

「うちも疲れたー……でも、楽しかった」

 

 同じようにもたれ掛かるりみ。先程までの緊張はどこへ行ったのか、心の底から笑っているように見えた。

 

「やっぱり、一人でやる時よりもドキドキする。……バンドって楽しい」

 

 まん丸のお月様を見上げるおたえ。照らす月光と、その表情とが相まって、とても「絵」になっていた。

 

「私も! すっごいドキドキしたし! みんなキラキラ輝いてた!」

 

 皆が皆輝いていた。これならば、商店街のライブはなんとかなる。そんな予感がした。

 

「……ねぇ、みんな」

 

 私は立ち上がり、みんなの前に立った。私自身のドキドキの余韻が収まらないまま、私は言った。

 

「ライブ、絶対成功させようね!」

 

 ドキドキの余韻を静めるように、夜風が静かに私達の間を通り抜けた。

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