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香澄は一人、クラスメイト達の前に立っていた。
なんで立つことになったのか。香澄は、全くもって理不尽であると意を唱えたい衝動でいっぱいだった。
けど……ここまで推されたのだ、やらない訳には行かない。というか、途中で投げた出したくもない。
だから、全力で取り組む。多少空回り気味でも、テンションをMAXまで上げて。
というわけで。
「……この度! 1-Aの文化祭実行委員に推薦されました戸山香澄です!」
そう。香澄は、文化祭の実行委員になってしまったのだった。クラスでいざ決めるとなった際に、気づいたら推薦されて決定されていたのだ。集中して歌詞を書いていたことで周りの声が耳に入っていなく、
「香澄がいいんじゃない!」
という声でハッと周りを見た。が、時すでに遅し。香澄は、晴れて実行委員の任に着いたのである。
実際、実行委員なんかできるか不安でいっぱいな香澄だったが……それ以上にドキドキしていた。なんだか面白そうなことになるーーそんな予感がしていたのだ。
「皆! 文化祭いぇー!」
その為に、テンションがハイボルテージだ。いや、ハイボルテージにした。せっかくの文化祭実行委員なのだ。中途半端に終わらせるのではなく、全力でやってその上で楽しくありたかった。
「「「いえー! ……あれ?」」」
だがしかし。掛け声に乗ってくれたのは、はぐみとたえ、イヴの三人だけだった。他のクラスメイト達は、「い、いえ~?」と、遅れて返事をしする。
「なんでなんで? みんな文化祭だよ! ドキドキなんだよ!」
「確かに楽しみだけど……」
「花女は中高合同だから、もう経験済みっていうか……」
「ええーっ!?」
なんというか、ノリがあまり良くないクラスメイト達であった。せっかくの一大イベントなのに、何だか微妙なテンションだと思う香澄だった。
それはさておき。クラスの実行委員は二人選出しなければならない。香澄は、クラスメイト達を見渡して一緒に委員をやる人を探し始めた。
「はい! 沙綾がいいんじゃないかな?」
1人のクラスメイトが手を上げて、沙綾を選出した。選出された当の本人、沙綾は「へ?」と変な声を上げてキョトンとしている。
「……うん。山吹さんなら、香澄でもなんとかなりそうだな」
「私でもって何!?」
そんなに私振り回してるかな!? 有咲の言ったその一言に、香澄はショックを受けていた。
……けれど、沙綾が一緒にやってくれたらとても心強い。しっかりしてるしみんなのお姉さん的な存在な為、とても安心感がある。
「まー、沙綾しか居ないよね」
「香澄をどうにか出来るのは沙綾しか居ない!」
ちょっとまった、私は暴れ馬かなにかなのかな? クラスメイト達に揃って異議を申し立てたかった。
それは後でも出来るから置いておく。推薦された沙綾は「うーん……」と少し悩んだ様子。それはそうだ。いきなり推薦されたのだし、しかも沙綾には家のお店の手伝いもある。悩むのも無理ない。
「……いいよ、私で良ければ!」
「沙綾……」
ニコッ。ふわっとした優しい笑顔。それに香澄も笑顔を返した。
「……ありがとう!」
わぁーっ! と拍手が送られる。ワイワイとした明るい雰囲気のまま香澄と沙綾の2人は、続けてクラスの出し物を決めていった。
ちょっとした無理難題や、フワッとした具体性のない意見も、沙綾はスパスパとまとめあげ、黒板に書いていく。
「香澄はどんなのがいいの?」
不意に、クラスメイトに意見を聞かれた。特に具体的な案を持ち合わせていなかった香澄は、心のままを言葉にしてみる。
「こう……キラキラで、シュッって感じで、ターン! って感じ?」
「んー……オシャレ可愛い、スタイリッシュな感じってことかな?」
「「おおー」」
これは、流石の沙綾と言わざるを得なかった。