遠い音楽   作:冴月

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 次の日。クラスでは具体的な文化祭の準備が始まった。

 香澄達のクラスは、「パン喫茶」。沙綾の家であるやまぶきベーカリーのパンを使った喫茶店をしようということになっている。

 今は、学校と沙綾の家に確認中だが、沙綾の方はほぼ問題ないという。あとは学校側がどうなるかという所だったが、数日後。やはり問題なく許可が降りた。

 ずっとなにか言いたそうにしていたりみが、話が滞り始めたタイミングを見て声を上げたのだ。その後、あれよあれよという間に話は進んでいき、パン喫茶が生まれたのだった。

 さて、そんな中での昼休み。香澄達はいつもの5人でお弁当を囲んでいた。

 

「へぇ、また新曲やるんだ」

「うん! 有咲とおたえが作る新曲! 私とりみりんも一緒に考えてるんだ!」

 

 沙綾に新曲について話す。沙綾は、少し心配そうな表情を見せた。

 

「楽しそうなのはいいんだけど、3曲も間に合うの?」

「分かんない……でもでも! アイデアはいっぱいあるから大丈夫だと思う!」

 

 よく良く考えれば、1ヶ月という短期間で3曲もオリジナルを作るとはなかなかにハードスケジュールである。

 ……がハードであると言ってもみんなアイデアがポンポン出てきていた。おそらく問題はないだろう。そんな自信が香澄にはあった。

 

「まぁ、香澄が大丈夫って言うなら大丈夫か」

 

 ニコリ。沙綾は、有咲とたえがおかずの取り合いをして、りみがあわあわしている横で、姉のような笑みを浮かべた。

 

「新曲頑張ってね。また、時間出来たら見に行くから」

「うん!」

 

 初めての学園祭は、とてもキラキラドキドキしそうだった。

 

☆☆☆☆

 

「それでは、第一回目の文化祭実行委員会議を終了します。各自、配布したプリントを確認中しておいて下さい」

 

 放課後。香澄と沙綾は実行委員が参加しなければならない文化祭会議に参加していた。

 もともと、小難しい話があまり得意ではない香澄。そんな香澄が、会議というものにに参加したわけで……。

 

「うぅ……」

「か、香澄大丈夫?」

「……キ、キラキラしない書類がいっぱい……」

 

 失念だったのか、なんなのか。全然、キラキラじゃなかった。

 というか、記入する書類が多すぎる。教室の貸出の書類や、道具等の貸出の書類。申請書、というものがかなり厄介だった。

 

「あはは……まだまだ序の口だよ?」

 

 会議が終わり、みんなが出ていっても尚、机に突っ伏してぐったりとしてい香澄。声をかけてくれた沙綾の序の口、という言葉に、香澄は「ぐえぇ……」と、変な声を漏らしてしまった。

 

「戸山さん」

 

 突然、声を掛けられた。会議を仕切っていた生徒会長がこちらに向かってきた。どこかで見たことある風貌をした、黒髪メガネの上級生の先輩だった。

 少しの間見つめていると、香澄の中でその風貌が合致する。

 

「えっと、もしかしてグリグリの……」

 

 サイドで纏められた三つ編みと、真面目な印象を醸し出す眼鏡の先輩。メガネを外せば、あのGlitter*Greenのキーボードの人に似ている。

 

「ええ。鰐部七菜よ。よろしくね」

 

 七菜先輩はメガネを外して見せた。その姿を見ると、香澄は脳裏にキーボードを弾いてる姿が浮かんだ。

 

「戸山さん、ステージでライブするのよね? ……SPACEの時みたいになライブ。楽しみにしてるわね」

 

 じゃあね。それだけ言うと、七菜先輩は沢山の書類を抱えて部屋を出ていった。

 そんな生徒会長と、香澄が面識がある事を不思議に思ったのか、沙綾は香澄に聞いてくる。

 

「えっと、知り合い?」

「うん。りみりんのお姉さんの、バンドメンバーなんだー」

「え、そうなんだ。……じゃあ、頑張るしかないね」

「うん!」

 

 そう言って、書類に向きなる。ペンを持ち、少しはやる気を出すが……。

 

「ううっ。多すぎるよー……。何枚あるの!」

 

 出なかった。直ぐに手が止まった。ペンを置き、また机に突っ伏してしまう。

 そんな香澄を、沙綾はお姉さんぽく諭した。

 

「こーら。手をとめないの」

「はいっ」

 

 その言い方と、表情。雰囲気に、つい真面目に返事をしてしまった。急に真面目に書類を書き出した香澄を見て、沙綾はポツリと呟く。

 

「……なんか、純の宿題見てるみたい」

 

 クスクスと沙綾がわらった。夕暮れ、静寂な教室にて。赤く染まった陽だまりが、達を徐々に包んでいく。

 

「香澄。家の手伝いとかあるから、あまり遅くまでは出来ないけど……。私も、頑張るから」

「……さ、さーやぁ」

 

 射し込む夕日をバックに、沙綾が笑う。そんな寄り添ってくれる優しさが、香澄はとてつもなく嬉しかった。

 

「……文化祭、絶対最高にしようね」

「うん!」

 

 夕日が落ちて、夜の帳が降りてくる。

 静かになった会議室で、2人は約束した。

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