文化祭の期間が本格的に始まった。
クラスメイト達と話し合い、具体的なデザインと喫茶店のメニューを一つづつ決めていく。やまぶきベーカリーへ何度も足を運びながら、提供してくれるパンのメニューを決めに行ったり、実行委員会議に参加してグッタリしたり。
そんな忙しい日々の中で、香澄達はライブステージの準備も一つずつ進んでいく。
たえ、有咲のオリジナルを、香澄が歌詞を書くことになったり、香澄とりみの合作であるオリジナル曲のメロディが完成し、香澄が歌詞に悩んでいたり等々こちらも忙しかった。
授業中に考えてみるも、何かスッキリ来ない。なんだろう、ワードはポンポン浮かんでくるのだが、それが上手く繋がらない感じ。うーむ……。
「……めぐるめく季節……果てしなく続く……うーん」
香澄の歌詞作りは、かなり難航していた。
☆☆☆☆
「……てか、山吹さんが付き合う必要なくね?」
準備期間の週末。文化祭は順調に事が進む一方で、歌詞作りがかなり難航していた香澄は、ついに沙綾に泣きつくこととなった。
バンドメンバーではない沙綾に泣きつくのはいかなものかと後から気づき、余計な事を言ってしまったと後悔したが、当の本人はあまり気にしてはいなかったようで。
「大丈夫だよ! おやつでも買ってく?」
むしろ乗り気だった。こればっかりは、沙綾の優しさに感謝するしかない。
有咲がじっとりとした目で香澄を見てくる。精一杯の反論を、香澄は主張した。
「だ、だって! ……1人だと寝ちゃうかもしれないし」
「寝ちゃうって……小学生かなにかかよ」
はぁ。と、呆れた声を出す有咲。有咲は、沙綾の方に向き直り言った。
「山吹さん、ごめんな。なんか巻き込んじゃって」
「そんな、大丈夫だよ。明日は学校も準備も休みだし、うちは構わないからさ」
「さ、さあやぁー」
ありがとー! と、勢いで抱きついてしまう。そんな香澄をあやす様に、沙綾は「よしよし」と頭を撫でた。
「……山吹さん、香澄が寝てたら叩いていいから。……強めで」
「ええっ!? 痛くしないでよ!」
な、何でそんなに厳しいの!?
衝撃を受ける香澄の一方で、沙綾は可笑しそうに笑った。
「あはは、そんなに心配ならな市ヶ谷さんも泊まればいいのに」
「んなっ!?」
何故か顔が真っ赤になる有咲。パクパクと鯉のように口を開閉して、なんとか言葉を捻り出していた。
「そ、そんな急に泊まれなんて……」
まだまだ顔が赤くなる。そんな有咲の顔を、たえが覗き込んで、
「有咲、顔真っ赤だよ?」
「ちょっ……!!」
まるでバレちゃいけない秘密をバラされたかのような。そんな表情。
わなわなと、ぷるぷる体を震わせた後に有咲は、
「……う、うるさいうるさーい! 私はそんな軽い女じゃないんだよーー!!」
走ってその場を去っていった。なんのこっちゃ、素直にそう思った。
「……有咲、風邪でも引いたのかな?」
「そ、そうじゃないと思うな……」
見当違いの会話を繰り広げるりみとたえ。ポカンとした香澄達を見て、何かを思いついたように手を叩いた。
「そうだ、りみ。私のウチおいでよ。私達も、お泊まり会しよ」
「え、ちょっ、おたえちゃん!? ……か、香澄ちゃん! 山吹さん! また学校でー!」
ズルズルと引きづられていくりみ。今日はすき焼きだよーという声を残し、たえとりみは去っていった。
そんな様子を笑顔で見つめていた沙綾は、ポツリ呟いた。
「なんというか。香澄のバンドはみんな面白いね」
「……うん! ポピパは皆、面白いんだよ!」
心の底からそう思う。そんな仲間達の期待を裏切らない為にも、最高の歌詞を仕上げなければ。
「あはは、それなら良かった。……さて、私達も中入ろうか」
「うん!」
沙綾の家へと、香澄はお邪魔した。