ガッツリ変えたところもあるので、よろしければどうぞ
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「沙綾ー、この看板どうすればいい?」
「んー? ……あ、ここは牛込さんが作ってくれたデザインあるからそれ参考にしよう」
学園祭の準備の時間。沙綾はクラスメイトの中に埋まりながらひたすらに指示を出していた。
その隙間時間に、クラスメイトのシフト表を作る。大方作り終えており、後は香澄の分を考えるだけだった。
「サアヤさん! 香澄さんのシフト決まりましたか?」
白い髪がふわっと視界に舞う。
若宮イヴが、沙綾の作っているシフト表を覗き込んできた。
「うーん、香澄の予定がよく分からないからなー……」
「かーくん、空いてる時間全部出るとか言ってたよね!」
グイと、イヴと沙綾の間に橙色の髪のショートヘアの元気っ子……北沢はぐみが割って入ってくる。
「あはは、働き過ぎだなー」
沙綾の頭に、忙しなくパンと飲み物を運ぶ香澄の姿が浮かぶ。……あ、転んだ。飲み物が宙を舞い、香澄に降かかる。これはまずい。
「……どっかで休憩入れなきゃねー。香澄、まだ帰ってきてない?」
「はい! ライブステージに行ったままです!」
「ライブ……か」
イヴは、いつの間にか折り紙で作った兜を頭に乗せていた。イヴの頭から兜がずるりと落ちたのをキャッチしながら、はぐみは言った。
「はぐみ、かーくん呼んでこようか?」
兜をイヴの頭に戻しながら言う。沙綾はその様子を笑顔で見守りながら言った。
「……ううん、自分で行ってくる。ありがと」
沙綾は、ライブステージとなっているホールへと向かった。
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「あ、いたいた。おーい、香澄……」
沙綾が香澄を呼びに来たホールでは、順調にライブステージのリハーサルが行われていた。上級生、下級生含めた希望者がステージに集い、演技のリハを行う。
リハは順番通りに行われた為、香澄達の出番は一番最後。Glitter*Greenの演奏に再び感動しつつ、CHiSPAの面々とも初めて会うものの同じガールズバンドという事もあり仲良くなった。
「うぅ……。お姉ちゃんたちの演奏聞いてたらもう緊張してきちゃった……」
「こういう時は、手のひらに人って書いて飲むといいらしいよ。飲む?」
「あ、ありがとう……はむっ」
「いや、人に飲ませるのかよ!」
何処かの漫才師の様な事をしている三人。そうこうしている内に、グリグリがリハを終え私達の名前が呼ばれた。
ステージに上がると、何故かキーボードの隣に黄色いドラムが置いてある。楽器の準備をながら、香澄は聞いた。
「あれ? ドラムがあるよ!」
「全バンド共通で使うんだって」
りみがベースを弾きながら答える。「おおー、私やってみようかな」と香澄が呟いていると、準備を終えた有咲からツッコミが入る。
「いや、ドラムできないだろ。つーか、ギターはどうすんだよ」
「一緒に弾く!……どうも、ドラムギターボーカルの戸山香澄です」
ドラムの席にギターを持ちながら座る。スネアとシンバルにランダムスターが当たり、ガシャリと音を立てた。
「流石に一緒には無理じゃないかな……」
「阿修羅観音様ならできるかも」
手をグルグルと旋回させるたえ。阿修羅観音の真似だろうか。
「香澄観音には無理だな。手が足りない」
有咲がそう言うと、学園祭委員から声がかかる。香澄はドラムから席を外し、打ち込みの音源を流して演奏を始めた。
……その様子を最後まで見ずに、香澄を呼ばないまま沙綾は踵を返した。