遠い音楽   作:冴月

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 沙綾は、ガムシャラに星を辿った。

 時には走って、時には歩いて。しゃがんだり、登ったり。沙綾はひたすら星を辿った。

 星は、右にあったり左にあったり。堀に貼って合あったり、室外機に貼ってあったり。小さい子供しか通れないようなところにもあったりした。沙綾の膝下くらいの所や、同じ背丈くらいの所とバラバラの高さにそれはあった。

 段々と、星の数が多くなってくる。初めは一つだったのが、二つ、三つ、四つと増えてゆく。沙綾は、この導をただひたすらに追った。

 多少上がった息を整えつつ文字から頭を上げると、「質屋、流星堂」という看板が目に入った。どうやら、気が付かないうちにお店の前まで来てしまっていたらしい。

 周りには、不確かで知らない世界が広がっているが、不安や心配は無い。星のお陰で、確かな導を受けられたから。純と紗南がやっているゲームの配管工のように。星を手に入れるば無敵になれると、相場が決まっている。

 そんな沙綾は「流星堂」というお店の敷地に惹かれるように入っていく。「すいませーん!」と声をかけるものの、返答はない。勝手に入ってはいけないは事わかっているが、それでも気持ちに嘘はつけない。沙綾は、恐る恐る中へと入っていった。

 古くさそうな扉が開きっぱなしの古屋があり、フラフラと引き寄せられるように中を覗いた。

 

 導の星。そして、書道半紙に書かれた「夢」という文字。なんだかドキドキしてきた。

 ……綺麗に整えられた倉庫の中。薄暗い部屋の中で、微かに輝く星のシール。その近くに、うっすらと光が漏れ出している床下扉があった。

 

 恐る恐る、ドアをノックする。コンコンコンと、丁寧に3回ノックする。

 

 ……返事がない。けど、なんだか楽しそうな音楽が聞こえてくる。

 

 手が震える。ドアノブを、手のひらで触れることが出来ない。

 ーーこんな私でも、夢見ていいのかな?

 ーードアノブを、握ることすら出来ない私が入っていいのかな。

 

 

 

 ーーそんな不安を、沙綾は頬を叩いて払いのけた。

 

 

 パァンと鳴る頬。ヒリヒリする頬。強く叩きすぎたせいで、じんわりと痛みが残っているが、それはしょうがない。

 さっき、ちゃんと見届けてくれたじゃないか。お母さんと、お父さん、純と紗南。皆で、私の背中を押してくれた。

 

 「……POPPING」

 

 POPPING。それは、楽しくなれる魔法のコトバ。

 POPPING。それは弾ける魔法のコトバ。

 POPPING。それは輝くキズナのコトバ。

 

 POPPING! POPPING! POPPING!

 沙綾は、唱える度に力が湧いてくる。勇気が湧いてくる。

 

 「……よし!」

 

 沙綾は、夢の蔵のドアを開けた。

 

 

 沙綾がドアを開けた瞬間だった。

 

「ライブハウス"夢の蔵"へようこそ!」

 

 ガラガラギューン! ガラガラギューン!

 香澄とたえがギターをかき鳴らす。それを追うようにして、有咲とりみがしっかりとしたサウンドで後を追う。

 若干乱れた髪を左手でかきあげながら、香澄は沙綾を見つめる。沙綾は、ドキドキしながらも状況を把握し、香澄に聞く。

 

「えっと、これは……ライブ?」

「うん、ライブ! 蔵でライブだから、蔵イブだよ!」

 

 ニコリ、満面の笑みで香澄はギターを構える。

 その姿を見るなり、沙綾の脳裏にあの祭りでの歌が思い出された。

 

 キラキラとドキドキを身にまとったような彼女たちの姿。止まらない胸の鼓動。それらが鮮明に蘇ってくる。

 そんな彼女たちの姿にドキマギする。ハートビートが収まらない。

 

 頬が紅潮し、体温が上がる。そんな様子を見た香澄が、意を決したように口を開いた。

 

「私達の想いを込めた歌……聴いてください。"STRA BEAT!~ホシノコドウ~"」

 

 

 

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