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あれから、5人は練習を重ねた。場所こそ違うものの、CiRCLINGでオーディションを想定した楽曲を作ったり、練習したり。細かい所を自分たちのペースで詰めていく。
緊張がなかなかほぐれない中、1週間みっちりと蔵とライブハウスで練習をした。
そして、ついに。オーディション当日を迎える……。
「「……よろしくお願いします!」」
高まる緊張感。自分の指先が震え出したのを、香澄は必死に抑えつけていた。
目の前には、険しい表情をしたオーナーが1人。その眼光が痛くなるほど、Poppin’Partyには突き刺さっている。
「うぅ……緊張する……」
「あんなに練習したんだもん、大丈夫だよ!」
「変なとこでミスしないようにしねーと……」
「有咲、リラックスリラックス」
「うっ……逆に緊張してきた……」
「ま、まぁ。練習思い出していこ。……準備はいい?」
沙綾がポピパに問いかける。ただならぬ緊張感の中、Poppin’Partyの面々は神妙な面持ちで頷いた。
「じゃあ、いくよ。……ワン、ツー、スリー、フォー!」
ーー失敗した。あんなに気をつけてたのに……。
ーー指、上手く動かなかった……。
ーー練習ではちゃんと弾けてたのにな。
ーー音、ズレてた。練習が足りなかったのかな。
失敗した。
直前まで気をつけていたこととか、ちょっと不安だったところとか。案の定と言ってしまっては、あんまりかもしれない。だが、有咲、りみ、たえ、沙綾の4人は自らの失敗をひしひしと感じていた。
「……やりきったと思うものは?」
その問いに答えられない香澄だった。
香澄自信がやりきったかと言うと、やりきったとは言えるかもしれない。音程を外してしまったところもあったが、今までで1番、この曲を楽しく歌えた。
だが……キラキラドキドキはしていない。
あの時、文化祭の時のようなドキドキ。星の鼓動は、この演奏では感じる事は出来なかった。
「ふん、ダメだね。うちのステージに立たせる訳にはいかない」
何も答えない5人を見て、オーナーは残酷にも告げた。
落ち込む4人の姿を見て、香澄は言い訳がましく声を上げる。
「……また挑戦します。受かるまで、何回でも!」
「……何回でも、ね。まぁ、頑張りな」
少しだけ、目じりを和ませたオーナーだった。
ーーしんみりとした空気に包まれている中。何かを読み取ったたえはオーナーに問う。
「あの、オーナー。何かあったんですか? いつもと様子が違うし、それに後半のスケジュールも……」
真っ白。その言葉は、香澄にひとつの予感をさせた。
ガールズバンドの聖地とも呼ばれる程の、「LIVE HOUSE SPACE」。そのスケジュールが、何も書かれていないということはーー。
「花園には言ってなかったね。……近いうちに、SPACEは閉めるよ」
的中した。5人の驚く顔と、息を呑む音が合わさった。
「どうして、ですか……?」
たえが戸惑いながらもオーナーに問う。オーナーは、目を瞑りながら何かを思い出すようにして言った。
「……私はもう、やりきったからだよ。残りの間、よろしく頼むよ。花園」
そう言い残し、オーナーはスタジオから出ていった。
放心したまま、取り残されるたえと4人。香澄は、SPACE閉店と、今のポピパに足りなかったもの。頭の中が、その2つに支配されていた。