遠い音楽   作:冴月

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 次の日から、有咲の蔵で練習を再開した。無事に声が出るようになった香澄だったが、つい最近まで不調だったのを労わってか、休憩が多めの練習だった。

 けど、前みたいにガムシャラになってはいなかった。変に背負っていたことや、スランプから脱した事もあるのだろう。香澄は、たえやバンド経験者の沙綾の言うことをスポンジのように吸収してゆき、自分の音へと変換していった。

 

「そういえば、後ちょっとでテストだよね。みんな勉強した?」

 

 沙綾のその発言により、勉強をしていない二名がビクリと震え出す。ギリギリと首を、ロボットのように回し有咲にすがりついた。

 

「ありさぁ! 勉強教えてー!」

「だぁー! 2人とも抱きつくんじゃねぇ!」

 

 香澄は本当に縋り付くように、たえは楽しそうに笑いながら有咲に抱きつく。そんな様子を見ていたりみと沙綾が「私たちで良ければ教えるよ?」と、助け舟を差し出した。

 

 そんなこともあってか、なんとかテスト乗り越えたポピパ。出来がいいか悪いかは置いておいて、赤点ラインを脱していた為結果良ければ全てよしであった。

 ……そんな日常を送っていると、最後のオーディションが明日に迫ってきていた。緊張感を持ちながらも、香澄は皆と相談しながら練習を重ねていく。

 

 

 夜。オーディションが明日に迫ってきていることから、「緊張しすぎて爆発しちゃうかも! 眠れない!」という香澄の発言が発端になり、みんなで有咲の家に泊まる事になった。

 遅くまで練習をして、なぜか夕飯に鍋を食べる。「鍋は最強になる調理法なんだよ」という、たえの意見を尊重したものだったが、如何せんこの時期に食べるには暑すぎた。

 それでも、香澄達は「鶏肉!」と言いながらお肉を食べていく。なぜか魚肉ソーセージも入っていたが、それも良い出汁になっていた。

 その後、順番にお風呂に入る。火照った体を覚ますべく、星が見える縁側でポピパ達は静かに腰かけていた。

 

「……今日は、いつにも増して綺麗だなぁ」

 

 香澄が星を見上げる。月が静かに輝いている。いつの間にか、また見えなくなっていた星々は、再び見えるようになっていた。

 

「SPACEで、このくらいのペンライトが見えるといいよね」

 

 沙綾が思いついたように言った。

 

「うん! ぜーったい、綺麗だよ! みんなで見たいなぁ」

 

 りみが、星を目に写しながら言った。

 

「うん、絶対見よう!」

 

 ステージの上から、沢山の星を見る。その夢は、Poppin’Partyに広がっていった。

 

 

 ……そんな中で。ふと、ラジオの音声が聞こえてきた。なんとか放送局といったか。そのラジオは、香澄にしか聞こえないくらいに微細な音量だった。

 ささやかなラジオは、不意にこんな言葉をつぶやく。

 

 ーー暗くなるって事は、見えなくなるってことじゃない。見えなかったものが、見えるようになるってことなんだ。

 

 見えなかったもの……。香澄はそれとなく理解していた。

 私が一人で抱え込み、突っ走り、その結局何も見えなくなった。

そんな中でも、私の為に走り続けてくれた最高の仲間達。それこそが、オーナーの言っていた「見えちゃいない」ものだったんだろう。「暗くても、見えるようになるもの」だったのだろう。

 どんなにどんよりしている雲であっても、どんなに暗い闇の中であっても。いつだって空は晴れ渡っている。いつだって、こんなにも、雄大に……!

 

 ……そんな香澄の元に、一筋の星が流れ落ちる。

 

「流れ星だ!」

 

 香澄が声を上げ、立ち上がった。合わせて皆も立ち上がる。

 

「珍しいな。流星群のニュースなんてなかったはずなんだけど……」

 

 有咲が首を傾げる。どこからか聞こえていたラジオは、ザザッとノイズを発した。

 

「……ねぇ、みんなで願い事しよ!」

 

 香澄は皆の方へと振り向く。ラジオのノイズは少しずつ聞こえなくなってくる。

 

「いいかも。明日のオーディション祈願ってことで」

 

 たえが両手の平と平を合わせる。何かを包み込むようにして、各々は両手を握りしめた。

 

「……」

 

 ポピパは、星に願う。いつだって瞬き続けている、その明星に。

 けど、願うのは過去へじゃない。あの瞬いている星たちは、実は何千年も前の遠いものなのだ。

 だから、香澄達は流れ星にネガイゴトをする。宇宙の中で、夜空の中で一番近い星に。

 

 ……ラジオのノイズは、ほぼ聞こえなくなっていた。そもそも、ラジオ自体がなくなってしまっているよう。

 けれど、最後に。ラジオはこんな言葉を残していく。

 

ーー"どうかキミの夜空に、優しい星が流れますように"ーー

 

 そうして流れていく、弧を描く流星。星の瞬き。

 香澄達は、星に願いを、月に祈りを込めた。

 

 

 

 

 

 

 

「「オーディション、よろしくお願いします!」」

「……初めな」

 

 当日、緊張感溢れる中Poppin’Partyはオーディションへと立つ。

 りみがあわあわとしている。たえがしきりにコードを確認している。有咲の手が震え、沙綾もしきりに周りを見渡していた。

 そんな真剣な表情をしているメンバーを見て、香澄はみんなに呼びかける。

 

「……みんな! 円陣しよ!」

 

 みんなの手を取る。香澄を中心に、星を描くように円を書く。気づけば、皆の不安は抜けきっていたように見えた。

 

「いくよ……。ポピパーーーっ!!」

「「「おーーーっ!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 終わった。演奏を、今のPoppin’Partyの全力を出し切った。

 オーナーは、香澄を真っ直ぐに見つめる。

 

「……見えなかったのが、見えるようになったみたいだね」

「……はい!」

 

 香澄は、間髪入れずに答える。

 その答えを予想していたかのように、オーナーは目じりに涙を溜めたものの、それを隠すように上を向く。

 

「……いいライブだった」

「「「~~~っ!!」」」

 

 声にならない。嬉しさ爆発とは、まさにこの事だった。

 

 

 

 ーーオーディションの結果は、言うまでもない。

 どのような結果だったかは、Poppin’Partyの嬉しそうな表情を見れば一目瞭然だった。

 

 

 

 

 

 

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