遠い音楽   作:冴月

71 / 71
まだまだ足りない、こんなものじゃない!

 仄かに終わりが見えていたのが嫌だったんだと、香澄は思った。

 

 何となく、そうなってしまう気がしていたのだ。卒業を皮切りに、自然解散していくような。物理的に距離が離れてしまうことで、各々は別の日常に取り込まれる。リズムが違うせいで、連絡の頻度が少なくなる。返信も来づらくなる。

 そうしていくうちに、段々と心も離れていってしまう。あんなに大切だった愛おしい仲間達と、離れていく。それが普通になっていく。

 そして全てが手遅れになってから、気づくのだろう。「あの時、ああすれば良かった」、「この時は、こうすれば良かったな」と。

 

 そんな予期できてしまう未来と、最高だった過去の間で。不確定な現在は、揺らめいている。

 

 

「みんなお疲れ様! パン持ってきたよ!」

「はぁ……、めっちゃ涼しい……」

「有咲、香澄、ただいま!」

「おたえ、おかえり!」

 

 上から順に、沙綾、りみりん、おたえだ。カバンを置き、持ってきてくれたパン入りの茶袋をテーブルに置き。各々が定位置に着く。

 有咲が、無言で麦茶を皆の分用意する。「ありがとー」と受け取ったら、ここからはガールズトーク、彼女たちの時間だった。

 胸リボンを少しだけ弛め、他愛のない雑談が繰り広げられる。今日はどうだったとか、同じクラスの知り合いの話とか、おかしかった話とか。

 

 笑い合い、ツッコミが入ったり、楽しく、おかしく、最高な瞬間……。そんな話を繰り広げられてる横で、香澄は決意したように立ち上がった。

 

 そして、胸の内を打ち明ける。

 

「みんな! ライブしよう!」

 

 突然、香澄が言い放った事に、有咲以外の面々は目を丸くした。だが、いつも通りの、思った事はすぐ言う香澄の言う事だ。4人はすぐに、笑みを浮かべて口を開く。

 

「私、新曲作りたいなー」

「ちょうど夏っぽい曲とかでもいいよね!」

「そうなるとスケジュールが……。かなりやりがいありそうになるな」

「そういえば、"RiNG"でバンド足りないイベントあるんだって言ってたよ。凜々子さんに、ちょっと聞いてみるね」

 

 いきなり言い出したにも関わらず、ポンポン話が進んでいく。頼もしささえ覚える進み具合に、香澄が寧ろびっくりしてしまった。

 けれど、香澄が言いたいのは、目先のライブのことでは無かった。

 

「えっと、違うんだよ! なんていうか、これからもずっとライブをしたいって言うか……」

 

 一息吸う。自分の思っている事を、素直に伝えよう。想いは、必ず伝わるはず。

 

「……私達。3月になっちゃったら、どうやっても今みたいにバンドができなくなっちゃうでしょ。だからって、皆と離れ離れになるつもりは無いけど……」

 

 皆を見る。あの日に出会って、始まってから今に至るまで。一緒に歩いてきた最高の仲間達。

 

「でも、皆それぞれの道を歩いてく。皆には、皆の道があるから……。けど、けどね」

 

 手を握る。決意する。皆が皆、それぞれの道を歩んで行っても、私達には今まで歩いてきた道、曲、思い出がある。皆で紡いできた絆があるから、星の鼓動があるから、皆を見ていてくれる。守ってくれる。一回りも二回りも成長した。今まで歩いてきた道が、皆の未来を繋いでくれる。

 だけど……!

 

「私、もっともっとバンドしたい! 新しい曲を作って、ライブもしたい! 大学生になっても、大人になっても、おばあちゃんになってもずっとずっと!」

 

 ──最高が欲しいんでしょ!(YOU WANTED THE BEST!)

 

「私達、まだまだこんなもんじゃない! 今までのキラキラドキドキよりも、もっと、もーっとキラキラドキドキしたい!」

 

 思い出は、繋がっている。今までのキラキラドキドキを胸に秘めて、また新しいキラキラドキドキを探しに行ける。

 だから私ね。皆、みんな……。

 

「だから私と、これからも、バンドやってくれますか?」

 

 それは、縛りのようなものではなかった。自然と、心のどこかでは思っていた事だった。友達とか、仲間として付き合っていくのではなく、このPoppin'Partyというバンドを、いつまでも続けていきたいという気持ち。自然と口に出た言葉だった。

 祈るような気持ちは、皆に伝わっただろうか──。

 

 

「私は、やるよ。香澄と、皆と一緒にいつまでもやりたい!」

 

 沙綾は決意する。

 こうして、皆で居る事が奇跡だって言うこと。何かをかけ違ったら、こうはならなかった。

 絶対手放したくないし、大切にしたい。Poppin'Partyの皆と、どこまでも、ずっと離さないで──!

 

 

「私、私も! 一生バンドやる!」

 

 たえは感じている。

 びりびりしたし、震えた。香澄が、有咲が、りみが、沙綾が。Poppin'Partyのおかげで、私はいつまでも、心震わせて。あの時の気持ちのまま居ることが出来る。楽しい気持ちは、ずっと続いてる。どこまでも、眩しい場所へ、ずっと、ずっと──!

 

 

「わ、私は! ……みんなと。ポピパ、バンドを続けたい」

 

 有咲は決断する。

 この大好きなPoppin'Partyが始まったのは、香澄がランダムスターをうち(流星堂)で買ったからだ。そこから始まって、当たり前ができて、積み重なって、大切な今がある。

 この当たり前を、いつまでも続けていきたい。終わらない歌は、明日も明後日も続いてく──!

 

 

「うん! 香澄ちゃん、皆。これからも、よろしくね」

 

 りみは覚悟する。

 高校生になって、香澄ちゃんに憧れて。勇気をだして1歩踏み出したら、Poppin'Partyという仲間ができた。

 確実に、一歩一歩、前に進んでく。憧れに近づけるように。もう迷わずに、自分を越えて──!

 

 

 気づいたら、皆で手を繋いでいる。終わりのない形をなぞっている。Poppin'Partyは香澄から始まった。そんなPoppin'Partyは、いつまでも続いてく。

 

 香澄は、思う。

 5人が5人で選んだ未来に進む時。不安かもしれない、辛いかもしれない。楽しくないことだってあるだろう。けど、けれど、私達の傍らには、星の鼓動がいつだって聞こえている。

 

 進んだ先で、満足することは無い。満足してしまうってことは、最高な瞬間が終わってしまったってことだから。ミラクルな1日を迎えてしまったってことだから。

 そんな最高の瞬間を迎える為に、私達はライブをする。いつまでも、これからも、どこに行ったって……!

 

 だから足りない。足りない、まだまだこんなもんじゃない! まだまだいける! まだ終わりじゃない!

 

 もっと、もっと! 私の本気について来て! 

 

 始まりのサイレンを鳴らせ! 限界まで音を出せ! 喉を枯らし、声を出せ!

 遠く眩しいあの場所へ行けるのは私達、自分自身だけだ!

 

 さぁ、一緒に行こう! ライブをしよう! 最強の音楽を! 私たちのビートで刻め!

 

 

 

 In the name of BanG_Dream!(夢を打ち抜け!)

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 卒業の当日。5人は誰もいない体育館で集まった。卒業式で使われていた装飾などは既に取り払われ、彼女達の足音が手が静かに響く。隠れて忍び込んだようで、なんだかちょっと悪い気がした面々だ。

 

 5人は、あの日、始まったこの場所。Poppin'Partyが始まったステージに立つ。終わりの無い形、円陣を皆で組む。

 

 

 いつだって何度だって、何回でも幾度でも。彼女たちは集まり、笑い合い、練習して、ライブする。5人の道は違っても、5人の未来は必ず絆が照らし続けてくれる。絆がある限り、また集まって、楽しんで、笑いあって、5人でゴキゲン音楽を奏で続ける!

 

「それじゃ行くよ? せーの!」

 

 ──ポピパ! ピポパ! ポピパパピポパ!

 

 沈む夕日の中、5人には遠い音楽が聞こえていた。

 

 

 

 

 

 




多分、彼女達は次の日とか普通に蔵に行って、練習して、ライブするんでしょうね。

まだ、ガルパではポピパの行先が確定しきってないですが、大学行っても週1ではあってそうです。

ありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。