仄かに終わりが見えていたのが嫌だったんだと、香澄は思った。
何となく、そうなってしまう気がしていたのだ。卒業を皮切りに、自然解散していくような。物理的に距離が離れてしまうことで、各々は別の日常に取り込まれる。リズムが違うせいで、連絡の頻度が少なくなる。返信も来づらくなる。
そうしていくうちに、段々と心も離れていってしまう。あんなに大切だった愛おしい仲間達と、離れていく。それが普通になっていく。
そして全てが手遅れになってから、気づくのだろう。「あの時、ああすれば良かった」、「この時は、こうすれば良かったな」と。
そんな予期できてしまう未来と、最高だった過去の間で。不確定な現在は、揺らめいている。
「みんなお疲れ様! パン持ってきたよ!」
「はぁ……、めっちゃ涼しい……」
「有咲、香澄、ただいま!」
「おたえ、おかえり!」
上から順に、沙綾、りみりん、おたえだ。カバンを置き、持ってきてくれたパン入りの茶袋をテーブルに置き。各々が定位置に着く。
有咲が、無言で麦茶を皆の分用意する。「ありがとー」と受け取ったら、ここからはガールズトーク、彼女たちの時間だった。
胸リボンを少しだけ弛め、他愛のない雑談が繰り広げられる。今日はどうだったとか、同じクラスの知り合いの話とか、おかしかった話とか。
笑い合い、ツッコミが入ったり、楽しく、おかしく、最高な瞬間……。そんな話を繰り広げられてる横で、香澄は決意したように立ち上がった。
そして、胸の内を打ち明ける。
「みんな! ライブしよう!」
突然、香澄が言い放った事に、有咲以外の面々は目を丸くした。だが、いつも通りの、思った事はすぐ言う香澄の言う事だ。4人はすぐに、笑みを浮かべて口を開く。
「私、新曲作りたいなー」
「ちょうど夏っぽい曲とかでもいいよね!」
「そうなるとスケジュールが……。かなりやりがいありそうになるな」
「そういえば、"RiNG"でバンド足りないイベントあるんだって言ってたよ。凜々子さんに、ちょっと聞いてみるね」
いきなり言い出したにも関わらず、ポンポン話が進んでいく。頼もしささえ覚える進み具合に、香澄が寧ろびっくりしてしまった。
けれど、香澄が言いたいのは、目先のライブのことでは無かった。
「えっと、違うんだよ! なんていうか、これからもずっとライブをしたいって言うか……」
一息吸う。自分の思っている事を、素直に伝えよう。想いは、必ず伝わるはず。
「……私達。3月になっちゃったら、どうやっても今みたいにバンドができなくなっちゃうでしょ。だからって、皆と離れ離れになるつもりは無いけど……」
皆を見る。あの日に出会って、始まってから今に至るまで。一緒に歩いてきた最高の仲間達。
「でも、皆それぞれの道を歩いてく。皆には、皆の道があるから……。けど、けどね」
手を握る。決意する。皆が皆、それぞれの道を歩んで行っても、私達には今まで歩いてきた道、曲、思い出がある。皆で紡いできた絆があるから、星の鼓動があるから、皆を見ていてくれる。守ってくれる。一回りも二回りも成長した。今まで歩いてきた道が、皆の未来を繋いでくれる。
だけど……!
「私、もっともっとバンドしたい! 新しい曲を作って、ライブもしたい! 大学生になっても、大人になっても、おばあちゃんになってもずっとずっと!」
──
「私達、まだまだこんなもんじゃない! 今までのキラキラドキドキよりも、もっと、もーっとキラキラドキドキしたい!」
思い出は、繋がっている。今までのキラキラドキドキを胸に秘めて、また新しいキラキラドキドキを探しに行ける。
だから私ね。皆、みんな……。
「だから私と、これからも、バンドやってくれますか?」
それは、縛りのようなものではなかった。自然と、心のどこかでは思っていた事だった。友達とか、仲間として付き合っていくのではなく、このPoppin'Partyというバンドを、いつまでも続けていきたいという気持ち。自然と口に出た言葉だった。
祈るような気持ちは、皆に伝わっただろうか──。
「私は、やるよ。香澄と、皆と一緒にいつまでもやりたい!」
沙綾は決意する。
こうして、皆で居る事が奇跡だって言うこと。何かをかけ違ったら、こうはならなかった。
絶対手放したくないし、大切にしたい。Poppin'Partyの皆と、どこまでも、ずっと離さないで──!
「私、私も! 一生バンドやる!」
たえは感じている。
びりびりしたし、震えた。香澄が、有咲が、りみが、沙綾が。Poppin'Partyのおかげで、私はいつまでも、心震わせて。あの時の気持ちのまま居ることが出来る。楽しい気持ちは、ずっと続いてる。どこまでも、眩しい場所へ、ずっと、ずっと──!
「わ、私は! ……みんなと。ポピパ、バンドを続けたい」
有咲は決断する。
この大好きなPoppin'Partyが始まったのは、香澄がランダムスターを
この当たり前を、いつまでも続けていきたい。終わらない歌は、明日も明後日も続いてく──!
「うん! 香澄ちゃん、皆。これからも、よろしくね」
りみは覚悟する。
高校生になって、香澄ちゃんに憧れて。勇気をだして1歩踏み出したら、Poppin'Partyという仲間ができた。
確実に、一歩一歩、前に進んでく。憧れに近づけるように。もう迷わずに、自分を越えて──!
気づいたら、皆で手を繋いでいる。終わりのない形をなぞっている。Poppin'Partyは香澄から始まった。そんなPoppin'Partyは、いつまでも続いてく。
香澄は、思う。
5人が5人で選んだ未来に進む時。不安かもしれない、辛いかもしれない。楽しくないことだってあるだろう。けど、けれど、私達の傍らには、星の鼓動がいつだって聞こえている。
進んだ先で、満足することは無い。満足してしまうってことは、最高な瞬間が終わってしまったってことだから。ミラクルな1日を迎えてしまったってことだから。
そんな最高の瞬間を迎える為に、私達はライブをする。いつまでも、これからも、どこに行ったって……!
だから足りない。足りない、まだまだこんなもんじゃない! まだまだいける! まだ終わりじゃない!
もっと、もっと! 私の本気について来て!
始まりのサイレンを鳴らせ! 限界まで音を出せ! 喉を枯らし、声を出せ!
遠く眩しいあの場所へ行けるのは私達、自分自身だけだ!
さぁ、一緒に行こう! ライブをしよう! 最強の音楽を! 私たちのビートで刻め!
☆☆☆☆☆
卒業の当日。5人は誰もいない体育館で集まった。卒業式で使われていた装飾などは既に取り払われ、彼女達の足音が手が静かに響く。隠れて忍び込んだようで、なんだかちょっと悪い気がした面々だ。
5人は、あの日、始まったこの場所。Poppin'Partyが始まったステージに立つ。終わりの無い形、円陣を皆で組む。
いつだって何度だって、何回でも幾度でも。彼女たちは集まり、笑い合い、練習して、ライブする。5人の道は違っても、5人の未来は必ず絆が照らし続けてくれる。絆がある限り、また集まって、楽しんで、笑いあって、5人でゴキゲン音楽を奏で続ける!
「それじゃ行くよ? せーの!」
──ポピパ! ピポパ! ポピパパピポパ!
沈む夕日の中、5人には遠い音楽が聞こえていた。
多分、彼女達は次の日とか普通に蔵に行って、練習して、ライブするんでしょうね。
まだ、ガルパではポピパの行先が確定しきってないですが、大学行っても週1ではあってそうです。
ありがとうございました。