「ガールズバンドの聖地ねぇ……」
香澄がドリンクのメニューと睨めっこしている中、有咲がそんなことを呟いていた。
聖地、と言うくらいなのだからとても有名な所なのかなぁ……と、香澄はメロンソーダを頼みながら考えてみる。
「ふーん。この、結構有名みたいだな。……知らないバンドばっかりだけど」
有咲は、スマホと睨めっこして、SPACEの評価を下していた。ちなみに、有咲の飲み物はほうじ茶だった。
2人でドリンクを受け取り、にぎやかな扉を開けて中へと躍りでる。
中は以外とこじんまりとした空間だった。天井には、大小複数のライトとスピーカーが所せましとぶら下がっており既にいくつかのライトが5色に光っていた。
正面は舞台になっていて、香澄達の身長よりも大きいスピーカーが両端に堂々と置かれている。ギター、ベース、ドラムとキーボードが、舞台には既に設置されていた。
舞台の前方には既に沢山の人がいた。前に入ることができないと察した香澄達は、後方ながらも全体を見渡すことのできる位置を陣取ることにした。
「なんか、すごいね!」
ワクワクする! 香澄はあたりを見回した。ペンライトを様々な色に点灯させている人、楽しそうに談笑している人……みんな笑顔だった。
そんな様子を見ている時。
バンッ!
照明が一気に落とされた。真っ暗な空間だったのも束の間、紫色の照明が天井からステージのみを照らす。黄色い歓声が上がり、会場のテンションは一気に最高潮に達していた。
ステージ脇から、衣装を身にまとった四人組が登場する。黄緑色を基調にした、レースのドレス。一人一人、細かい部分の装飾が異なっており、それぞれの個性を感じられるもの。
四人が、お客さんたちに手を振る。なんだがうれしくなってしまい、香澄も一緒になって歓声を浴びながらぶんぶんと振り返した。
「……Glitter*Green、っていうんだって、このバンド」
「そういう名前なんだ!」
緑を基調にした、このバンドらしい名前だと思った。
四人が自分たちの位置についたようだ。中央の人が、他の三人に目配せをして、マイクを持つ。
「……スペース! 盛り上がる準備はできてるー⁉」
中央のスタンドマイクの前。黒髪で、毛先にウェーブがかかった女性が、お客さん達をあおる。
それに呼応して、「イエーイ!!」と皆叫び返した。黄緑色に光るペンライトを高く上げ、左右に振る。
キラキラと輝くペンライト、ドキドキと響くマイク。
その光景に、香澄は魅了されていた。
「――OK、それじゃあさっそくいくよ! ……"Don't be afraid!"」
きらりと、楽器たちが光ったような気がした。
――ギターがかき鳴らされる。リズミカルに弾かれたそれは、今まで聞いた音のどれよりもきれいだった。
曲の中に、キーボード、ドラムが合流する。最初一つだった「音」は、パズルのピースのように合わさり、「音楽」になっていた。
ボーカルの歌が始まる。楽器の熱量、音響にも劣らない、まっすぐした歌声。歌で、会場を魅了していた。
「すごい……すごいすごいすごい!!」
それしか、言葉が出なかった。
歌う声一つ一つ。ベースの指捌き。ドラムの親に響く音。キーボードの高らかな音色。そのすべてが楽しそうで、キラキラで、ドキドキで……。
香澄は、確かにに星の鼓動(ホシノコドウ)を聞いていた。
ーー脳裏に、一つの夢が浮かび上がる。
それはまだ遠いけど、いつか現実になる。何故か、そう確信できる夢。
まだ見ぬ仲間達と、キラキラなバンドをする夢。5人で、最高を。その手で、掴みとる夢。
その夢を、私は――――撃ち抜きたい!!
「有咲!」
有咲の方を向く。頬をわずかに紅潮させ、キラキラの目でライブを見ていた。
私に話しかけられたことで、はっと、あわてたように我に返る。
「何!? なんて言ってるか聞こえない!」
音楽が、周囲を包みむ。話してなんかいないで、私の思いを聞いてくれ……そういわんばかりに。
「バンド……バンドやろう! 二人で、一緒に夢を奏でよう!!」
ハジケタ色の夢が、今見つかった。