新月の夜   作:おたふみ

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思いつきの短編です


八幡side

大学受験を控えて、奉仕部は勉強部屋と化している。

三人はそれぞれの道を歩んで行くことになる。

俺は受験の前に心の靄を晴らしたい…。

黒歴史が増えるかもしれない。そして、著しく自己満足な行為だ。

それでも、想いを伝えたかった。

本物の想いとは、こんなにも止められないものだったのかと思い知らせれ自嘲する。

アイツのことだ、フラれても何事もなかったように振る舞ってくれる。上手くいっても、何事もなかったように振る舞うまである。

 

由比ヶ浜は、受験勉強の息抜きで三浦達とカラオケだそうだ。息を抜きすぎなければよいが…。

 

「う~す」

平静を装い、挨拶をする

 

「こんにちは、比企谷君」

いつもの挨拶が返ってくる

 

「由比ヶ浜は三浦達と息抜きでカラオケだとよ」

「由比ヶ浜さんから、連絡が来ているわ。息を抜きすぎなければよいのだけど…」

雪ノ下がため息をつく

 

「ふふっ」

「何が可笑しいのかしら?気持ちが悪い」

「いや、俺も聞いた時にそう思ったからよ」

「気持ち悪い。貴方と同じ思考をしたなんて、気持ち悪い」

「なんで、2回言ったの?大事なことなの?」

いつもの会話が心地いい。

鞄から文庫本を取り出し、しばらく本を読む。頃合いをみて、伝えよう…。

 

雪ノ下が本を閉じて

「紅茶を淹れるわ」

今なら話せる…

「あのな、雪ノ下…」

 

と、思った瞬間、ドアが開けられる

 

「先輩!ヤバいです!」

何故このタイミングで一色が来てしまう!!

「ヤバくない、大丈夫、お前ならなんとか出来る、じゃあな」

「そんなこと言わないでください!」

一色に腕を掴まれ引っ張られる…。振りほどこうとすれば出来るんだが、どうもコイツに弱い…。

「すまん、雪ノ下!ちょっと行ってくる」

やれやれといった顔で見送られ生徒会室へ連れていかれる。

 

 

生徒会の仕事を手伝わされていたら、だいぶ遅くなってしまった。今日こそ伝えようと思っていたのに…。

そんなことを考えながら、鞄を取りに奉仕部へ戻る。

 

項垂れながらドアを開けると、氷の女王ならぬ眠り姫がそこに居た。

 

息を飲むほどの美しい寝顔に見惚れてしまう…。

しばらくすると、眠り姫が王子様のキスもないまま目を覚ます。

 

「そうやって、寝ている私をいやらし目で見ていたのね、変態谷君」

 

胸の前で腕クロスさせて、胸を隠すポーズをする。

そっちは見ていませんよ。

 

「わ、悪いな、待たせちまったみたいで…」

「べ、別に貴方のことを待っていたわけではなくて、鞄が置いてあったから、取りに戻ってくるはずだから、鍵を閉めたら悪いと思って…」

うつむきながら、雪ノ下は早口て言う…。

「そうか。それでも、ありがとうな」

「そう」

素直に礼を言うと、短く返ってくる。寝顔を見られた恥ずかしさか、素直な謝辞への照れ隠しかはわからないが、うつむいたままだった。

「なぁ、雪ノ下」

「な、なにかしら?」

「遅くなったお詫びに、駅まで送らせてくれないか?」

「そ、そんな…」

「外も暗くなりはじめてるし、俺じゃ頼りないかもしれんが…」

「そ、そこまて言うなら、送らせてあげるわ」

渋々なのか照れ隠しなのかはわからないが、一緒に帰る約束をすることが出来た。

「では、鍵を返してくるから…」

「俺も行くよ」

雪ノ下が言い終わる前に言う。

「…」

雪ノ下が何も言わずに職員室へと歩き出す。俺も置いていかれないように歩き出す。

 

職員室に着くと、白衣を羽織った美人教師が待ちかねていた。

「遅かったではないか」

「すいません、俺が生徒会に拉致されていたので」

「そうか。ご苦労だったな」

「では、失礼します」

二人で平塚先生に頭を下げる。

職員室を出る間際に呼び止められる。

「比企谷!」

「はい」

「外も暗くなり初めている。雪ノ下を送ってやってくれ」

「そのつもりです」

ドアが締まる直前に、「結婚したい」と聞こえた気がする…。

 

下駄箱に着くと、雪ノ下が声をかけてくる。

「比企谷君、貴方自転車ではないの?」

今日の為に愛車は自宅警備をしている。

「あ~、パンクしちまってな」

「そう…。では、行きましょうか」

雪ノ下の合図で歩き出す。

 

学校と駅との中間付近の公園にさしかかった時に声をかける。

「雪ノ下、ちょっと話したいことがあるんだが、付き合ってもらえるか?」

「少しなら…」

よし!心の中でガッツポーズをしながら

「ベンチで待っててくれないか。飲み物を買っていくから」

自動販売機でマッ缶と紅茶を買い雪ノ下が待ってるベンチへ行く

「悪いな。紅茶でよかったか?」

「えぇ。お金出すわ」

「話を聞いてもらうんだ。気にするな」

「そう」

お互いに缶を開け、一口飲む…。なんとも言えない時間が流れる。

夜空を見上げると、真っ黒な空にいくつかの星…。今日は新月だったか…。

「なあ、雪ノ下…」

「なにかしら?」

空を見上げたまま、意を決して言葉を絞り出す…。

「月が綺麗だな」

月なんて出ていない。そんなことは、わかっている。

「比企谷君、何を言ってるのかしら?今夜は新月で月なんか…」

雪ノ下が息を飲む…。

こちらを向いた雪ノ下の目を見つめる。普段なら腐った目とか言われるんだろうが、言ってこない…。

しばらくの無言の後…。

「そうね。私もそう思うわ」

無言で見つめあう…。すると

「ねぇ、比企谷君」

「なんだ?」

「月が綺麗ですね」

「あぁ、そうだな」

そう答えると、雪ノ下は俺の手に、手を重ねてくる。

 

やっと伝えられた想い…。やっと繋がった想い…。どちらからともなく縮まる距離…。その距離が一瞬だけ零になる…。

 

名残惜しが時間も時間だ…。

「行くか」

「えぇ」

二人でベンチから立ち上がり、歩き出す。

 

手を繋ぎ、駅まで歩く。

握られた雪ノ下の指は白く細い…。だが、しっかりと俺を二度と離さないかのように強く握られていた。

繋がったこの手は、結ばれた新たな絆の証なのか…。それとも、いずれ訪れる別れへのプロセスなのか…。

そんなことを考えるのはやめよう…。

 

今は愛しく思うこの手を優しく包んであげよう…。

 

 

愛する人と歩く、新月の夜…。

 

 

 




なんとなく、思い出した言葉でした。読書好きの二人なら、こんな感じの告白でも有りなのかなぁ。なんて思いました。
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