ONE PIECE ANOTHER STRONG WORLD! 作:はむらび
捏造設定:悪魔の実の伝達方式を「一番近くにある果実が悪魔の実になる」と勝手に定義(開始数行)
デッドエンドの冒険 1
圧倒的な力を持つ大海賊、金獅子のシキ。その両脚の刀は強引に引き抜かれ、そしてその胸に突き立っていた。「おれはもう長くねェ。頭に舵輪がめりこみ、両脚を切断し、老い、持病もある。今じゃァ覇気すらまともに練れねェ始末だ。」シキは咳き込み、血を吐きながら言った。
「だからお前がおれを継げ。お前におれの全てをやる。だからお前はこの海の全てを手に入れろ。」
シキの手に握られた拳大の果実は、シキの命が失われるにつれ、徐々に唐草模様に包まれていった。
「これをお前に託すために、おれは死ななきゃならねェ。お前に託すのはおれのフワフワの実。おれの知る限り最強の……悪魔の実だ。」
それを、4歳のおれは理解していたのだろうか。その時おれは泣いていたのだろうか。記憶だけは鮮明に残っている鮮烈な、鮮血の記憶を、当時のおれはどう思っていたのか見当もつかない。
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「うひょーっ、なんだなんだいここは!」
「うっひゃー、天井から船が吊るしてあるぜー!」
「ていうか何?だいたい港に船なんかほとんど無かったのに」
ここは偉大なる航路の島、ハンナバル。その地下に築かれた海賊酒場。その中で、見知った声と見知らぬ声を聞いた。
「おい、あれルフィか?」「ウホウホ」「スカーレット隊長もそう思うか。まあそうだよな。」
確かに頃合いだ。偉大なる航路入りしたのは世界経済新聞にも小さくだが載ってたし、手配書も出てる。そろそろこの辺りに来てもおかしくはないとは思っていた。
「おーいルフィ!1年ぶりだな!」
「おおっ、シエル!久しぶり!」
やっぱりルフィだ。つまりコイツも冒険の匂いを嗅ぎつけてレースに出るのだろう。この命知らずのデスレース、『デッドエンド』に。
「お前もデッドエンドに出るのか!まあ、この前1億の首になったお前なら勝てるだろうよ。おれさえ居なければな。」
「うひょー!おれ、懸賞金上がってたのか?」
「……まあ、海の上だとニュース・クーが来るのも不定期だからな。そういうこともある。というかおれはあった。」
デッドエンドは命知らずのデスレース。だが、それは所詮偉大なる航路序盤での話。例年での参加者の最高懸賞金は5000万ベリー前後。そもそもおれやガスパーデやルフィ。つまり億レベルの懸賞金の「大物」海賊が参加することは基本的にハナっから想定外だ。
「ちょっと待って、デッドエンドって何?そしてあんた誰?見たところ、ルフィの知り合いみたいだけど……」
橙色の髪の女が話しかけてきた。ルフィの仲間だろう。
「シエルはおれの兄ちゃんだ。」
「ルフィが世話になってるな。おれは『金獅子の』シエル。ルフィの兄だ。」
「おいルフィ、お前の兄貴って2人も居たのかよ」
「……」
「……おれたちは4人兄弟だ。1人は死んでるけどな。」
海賊狩りのゾロが問うたそれは、おれ達にとっては禁句だった。まあ、怒るようなものではないが、気持ちは落ち込む。
気持ちは……気持ちは……「落ちこまねェ!」「いや落ち込んでる表情だろどう見ても!!」「ウホウホホホ」「え?『このボインのねーちゃん達とお近づきになりたい』?」「ウホ」「話外れすぎだよこのエロゴリラ!」「「「ハイ!」」」
「……なにこの人たち。」
「『金獅子のシエル』。懸賞金は2億9800万ベリー。金獅子のシキから金獅子海賊団を引き継いだ大海賊。船長さんのもう一人のお兄さんほどではないけれど、随分と大物の海賊ね。」
「って待って、肝心なことに答えてもらってないわ。『デッドエンド』って何?」
「あー、それに答えてなかったか。そもそもそれを知らずにここまで来たってのが想定外なんだが、まあ良い。『デッドエンド』はまあ……なんでもありの賭けレースだ。そこにいる胴元に参加表明して、目的地の
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「ねぇ、質問があるんだけど、いいかしら?」「おう、良いぜ。」「なんでこんな海に貴方が居るの?とっくに新世界に突入しててもおかしくない頃合いよ?」「まあ、確かに普通ならそうだろうけどな。戦力が必要なんだ。可能な限りな。『新世界は地獄』だ。地獄で生きて行くには、地獄の獄卒より強い仲間が必要だろう?」
船長さんのお兄さん、金獅子のシエル。金の長髪を一本に結び垂れ下げた、成金のような装いの、軽薄な笑みを浮かべた男。火拳のエースとは別方向に「あのルフィの兄弟」らしくない人だ。
「あなた、本当にルフィの兄弟?貴方は金獅子のシキの息子。ルフィと本当に兄弟なら、ルフィのお父さんも金獅子のシキなの?」「ご明察。おれ達は義兄弟。おれの父親はシキでエースの父親はロジャー、ルフィの父親は知らねェけど爺さんはガープだ。」「それは……随分と豪勢な家族ね。」「そうだな。サボの父親はクズだったが。」「おーいシエル!飯いくぞ飯!」「飯か!今行く!」
彼は下層階の食堂に向かい、吹き抜けを飛び降りた。彼の落下速度は急速に減速し、ゆっくりと食堂に着地するのが見えた。フワフワの実。かつて金獅子のシキが用いたとされる超人系の悪魔の実。自身と自身の触れた物体を浮かべて操作する、強力な悪魔の実だ。
「ところでサボ……どこかで聞いた覚えがあるのだけれど。」
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ここは食堂。タダで食べ放題。下手な財宝よりロマンのあるいい響きだが、デッドエンドの期間限定なのが玉に瑕だ。
「お前さっき目一杯食ってなかったか?」
「うん。六分目くらいだ。」
「なるほど、だからか。ルフィにしては食いっぷりが少ねェし、体でも壊したのかと思ってた。おいルフィ、メシを食うときは素手じゃなくておれみたいにこうやってナイフとフォークを使え。行儀が悪いぞ!」
数十のナイフとフォークが重力を無視して宙に浮かび、カチャカチャと音を立てながらウェイターの運んでくる食材に突立ち、それをおれの口元にまで運んでくる。
「イヤそれは真似できねェし行儀も悪ィよ」
「人に行儀を説くやつっておれは嫌いだ」
「イヤさっきやってただろうが」
「面白ェ男だな おれの仲間にならねェか?」
ノリの良い奴は良い奴だ。善人も悪人もいるが、楽しい奴なのは確実だからだ。
「おいシエル!ウソップはおれの仲間だぞ!」
「こいつウソップって言うのか……おい口汚ェぞルフィ、ナプキンの使い方も教えた方がよかったか?」
「お!また美味そうなの運ばれてきたぞ!」
本当だ。あのポテトサラダは美味そうだ。というか実際この酒場のメシは美味い。さらにタダで、しかも待っているだけでウェイターが持ってきてくれる。神か?
ちょっと遠いがルフィは手を伸ばしてるし、おれもナイフとかフォークを『飛ばせば』持ってこれる。
「やー、ここは良いなー!メシがどんどん運ばれてくる」「運ばれてくるペースが遅いのだけは困りどころだな」
やはりルフィはよく食べる。腹六分目まで食べていて尚空腹のおれと大差ない速度でメシを食うなど。やはり口が伸びるのが差なのだろうか?
「本当に底無しの胃袋だよなお前の家族は……ッ」
ん?
直後、おれとルフィの頭は後ろから掴まれ、ちゃぶ台に叩きつけられた。ちゃぶ台は衝撃で破砕。痛ェ。
「何の真似だ」
刀に手を掛けたゾロが言う。
「何の真似……?何の真似……? そらコッチのセリフだ!」
騒動の下手人、黄色の服を着たイケメンが言う。
「違ェよ!そういうのはやられたおれのセリフだよ!マジで何の真似だよ!」
「うるせーやい!人の食いもん横から手ー伸ばしたりフォーク飛ばしたりして分捕りやがって!いくら手が伸びるからってな!いくら食器を飛ばせるからってな!手が伸び……今コイツ手ェ伸びてなかったか!?」「「いや遅ェよ」」
「おうおうおうなんだテメェら!」「さっきから黙って見てればよォ!人の料理勝手に盗みやがって!」「俺たちが何者かわかってやってんのか?」「知ってる。ガスパーデんとこのチンピラ」「「「チンピラじゃねーよ!」」」
逆にコイツらはおれやルフィの懸賞金額がわかってやってるのか怪しい。 盗むも何も、ここは料理が無料、つまりバイキングなんだから勝手に盗ってって良いに決まってるでしょ。良くないけど。
「オイ!人のことぶん殴っといてなにやってんだ!覚悟できてんだろうな!」そしてチンピラよりチンピラな発言をする我が弟。
だが、おれが見ているのはそっちじゃない。黄色の服に身を包んだイケメン。一線級の賞金稼ぎ、『海賊処刑人』シュライヤ・バスクード。アレはこんなところで燻っているレベルの人材ではない。そもそもおれがここに来た目的はアイツをスカウトするためが5割だ。残りは3億ベリー。
さぁ、戦いぶりを見せてもらおうか。