ONE PIECE ANOTHER STRONG WORLD! 作:はむらび
こんな感じで「スカウトしても原作に支障がなさそうな奴をスカウトして」「ルフィの代わりにシエルが解決しても原作に支障がなさそうな劇場版ストーリーを解決していく」話となります。
海賊処刑人シュライヤ・バスクード。
海賊全盛のこのご時世、「賞金稼ぎ」は海賊よりも短命だ。基本的に海賊は
にもかかわらず、「一匹狼で海賊(基本的に数十~数百人構成が主)を相手にして」「数年間偉大なる航路で生き抜いてきた」「名の知れた(=逆に海賊から襲われるリスクも高い)」賞金稼ぎである彼は、明らかに常軌を逸している。規格外の強さを持たない彼が生き抜いてきた理由はひとえに、「状況判断力」や「決断力」、あるいは「強運」のような「生き抜く力」の強さを意味する。
戦闘能力だけなら奴より優れた人間はいくらでもいるだろうが、「生き抜く力」において奴より優れた人間はいないだろう。父が死に、海で生き抜いた経験が少ないおれの仲間には、まず「そういう奴」こそが必要だ。
まあ、だから「戦闘力」にはそこまで期待していなかったんだが……実際に見てみると、奴の能力は期待を大きく上回っていた。覇気なし、武器無し、悪魔の実無し、技無しで、腕力すら弱いにもかかわらず、周りのものを利用して跳び回り、『地の利』を完全に掌握する戦いぶり。
軽い身のこなしで相手の武器を奪う、身の回りのものや敵を盾にする。
「海賊であれば大体5000万B相当の戦闘力を持つ」とは知っていたものの、コレは明らかに異常だ。だってこれは、「覇気も」「武器も」「悪魔の実も」「技も」「基礎身体能力も」すべて『伸びしろが残っていてコレだ』ということなのだから。
「おい、Dr.インディゴ。」「なんでしょうシエル様」「アレを用意しろ」「アレですね。わかりました。オイスカーレット、アレを持ってこい!」「ウホ!」「……わかるの!?」
スカーレット隊長が持ってきたのは、灰白色に染まった、唐草模様に覆われた縦長の果実。即ち、『悪魔の実』だった。
灰白色の悪魔の実。能力不明。故に、使い道もあまりなかったものだ。
悪魔の実は秘める能力によって有用性が大きく変わる。図鑑によると「ナギナギの実」や「ヒソヒソの実」のようなハズレ悪魔の実も存在するらしいし。しかも、この実は図鑑にも乗っておらず、能力は不明。故に、誰に食べさせるかが問題になり、結局使えていなかった。例えばルフィの「ゴムゴムの実」のような「能力者の基礎身体能力が高くないと扱えない実」をDr.インディゴに食べさせても意味がないし、「オペオペの実」「ある程度能力者の知性を必要とする能力の実」をゴリラのスカーレット隊長に食べさせても意味がない。まあこれは多少極端な例としても、「どんな能力を当ててもまともに使いこなせる人間」などほぼ存在しないのだ。末端価格1億Bの悪魔の実でそんな割に合わないギャンブルをしたくはない。
だが、『彼』は違う。「周囲の環境を利用することだけ」で戦ってきたシュライヤならば、おそらくほぼすべての能力を使いこなせる。一般的にハズレと言われる類の能力でも、おそらくは戦闘に組み込める。「そういう男」なのだ。
「まぁ、それも『仲間になってくれるなら』なんだけどな。」「実際ここまで来てはみましたが、まぁ難しいでしょうな。賞金稼ぎから海賊への転向は珍しい話ではありませんが、交渉材料が少なすぎます」「ウホ ウホホウホ」「まぁ確かにお前たちの言うことも一理ある。特にスカーレット隊長。いいことを言った。」「えっ」「ウホ?」
「つまりはこうだ。『何故やつが賞金稼ぎになったのか』。それを知る必要がある。海賊は夢を見るものだ。なら海賊が、仲間にしようって奴の夢を知らずに何をやろうって言うんだ。」
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まぁ、てなわけで人間観察もとい『シュライヤの夢を知ろう大作戦』を始めたわけだが。意外にもその観察はあっけなく済んだ。
どこからともなく「うるせェなァ」と野太い声が響いた瞬間、シュライヤの顔がいびつに歪んだわけだ。おれの見聞色の覇気はそこまで優れてねェけど、ここまでドス黒い憎悪を秘められちゃ嫌でも気づく。
そう。彼は因縁を持っている。『「将軍」ガスパーデ』との間に。
「おう、うちの弟がうるさくて済まんね。」
だから、飛んで行った。コイツとも一度話はしてみたかったんだ。海軍の汚点。元海軍本部海兵の海賊、「将軍」ガスパーデ。アメアメの実の能力と覇気を兼ね備える、懸賞金9500万とは思えない海賊だ。たぶん元海兵の「億越え海賊を出したくない」海軍の意図でもあるのだろう。最近「もう一人の海軍の汚点」X・ドレークが億越えの海賊になったからこの仮説は間違ってる可能性も高いんだが。
「あァ。どこの馬の骨かと思ったが。金獅子様の弟と来たか。」「ついこないだ上がったからお前より懸賞金高ェぞうちの弟。まあどっちみちおれには及ばねぇんだがな。」「フン、まぁいい。お前の顔に免じて騒ぎは水に流してやろう。」怖気づいた……ようには見えねェな。油断ではない。単純戦闘力ではおれに及ばずとも、やつには海軍として、海賊として積み上げてきた経験があるからだ。経験の少ない若造相手なら3億相手でも勝ち目はあると判断しているのだろう。そしてそれは、事実でもある。
「それよりも……だ。おめぇら、俺の元で働く気はねェか?」「嫌だ」
腹の底まで響くような低い声の大男は、シュライヤと、ルフィ(断った)を勧誘した。
シュライヤはガスパーデの勧誘を受けるだろう。それは、おそらく何らかの因縁で奴はガスパーデを殺そうとしているからだ。内部に入り込んだ方が、殺す機会は増える。それは、より強い戦闘力を持つおれの仲間になるのと比べても、大きなメリットだ。
だからこそおれは、それ以上のメリットを提示しなければならない。そして、それは既に。
「おいよせよ将軍。そいつ、お前を裏切って殺す気だぞ?」「おれを誰だと思っているんだ。そんなことは見ればわかる。それに、『そんな些細なことで』海賊が腕も度胸もあるやつを仲間に引き入れるのを渋るのか?」
「ああ。だろうな。だから聞いた。だが、おれは生憎お前よりもそこの男を高く買っていてね。シュライヤ・バスクード。ガスパーデは事前にわかっているようだから、隠す必要はない。おまえに単刀直入に聞くが。おまえ、あいつを恨んでるな?」「……」
沈黙は肯定だ。
「そして、まあこれもわかってると思うが、『あいつがそれをわかってる以上』おまえがあいつに復讐を果たせる可能性は低い。」「……だから?」「おれの元に来るなら、『チカラをやる』。やつを、「お前の手で殺せるかもしれないチカラ」だ。」それは悪魔の実。悪魔のチカラ。
「お前がおれの元に来るなら。やつを殺したのち。夢をかなえたのちおれの下で働くなら、この実をやろう。俺の手を取るなら、この実を食え。」それは灰白色の果実。フワフワの能力で浮かんだそれは、ひとりでにシュライヤの手元にまで飛んでいく。
シュライヤは逡巡し、そして覚悟を決め、果実に食らいついた。
「マッズ!!!!!!」